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コメント
4件
話の構成が素晴らしいです…。読む手が止まりません
EPISODE 3 .
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藤澤涼架。
東京都立一橋高等学校3年。吹奏楽部所属、担当楽器はフルートで、パートリーダー兼部長を務める。
とても穏やかな性格で、裏のない心優しい性格、そしてちょっぴりドジな天然。そんな性格からか、男女や生徒教師問わず誰からでも好かれている。
成績は良いとは言わないが悪くもない普通の成績。運動神経は決していいとは言えないものだった。
友達は多かったようだが、藤澤の”本当の心境”を知る者は居ないと言う。
「本日は御足労頂きありがとうございます。」
「いえ、こちらの急な訪問に応えて頂き感謝します。」
「…、藤澤さんと、大森くんの事でしょうか…。」
「…話が早いですね。」
「考えたら分かる事です。」
大羽地 宰、大森のクラスの担任をしており、藤澤の所属する吹奏楽部の顧問。
八木 直和、この学校の最高責任者、校長。
「…まず、大森のクラスでの様子をお答え頂きたい。」
「…大森くんは、普段は大人しくて、クラスで目立つような子じゃないんです。友達も、あまり居なくて、友達と言える友達は若井くんだけでした。」
若井…滉斗。同じクラスで幼なじみだったか…。
「知ってはいると思いますが、大森くんと若井くんは幼馴染なんです。大森くんも若井くんも、お互いを親友だと主張していました。」
「若井くんは大森くんに比べて友達も多く、人気者です。目立ちたがらない大森くんはクラスではあまり若井くんと関わっていませんでした。」
「本当に目立つことの無い静かで大人しい子なんです。大森くんは。人と関わることも無い分、トラブルも起きないはずなんです。」
「大森くんはとてもいい子です。」
「……」
いい子も何も、実際こうやって引き取られているわけなんだが…。
今の大森は、犯行は認めたものの、事実確認が出来ない為、まだ重要参考人としてしか書類上記すことが出来なかった。
「…藤澤くんと、大森くんの関係について何か知っていることはありますか?」
「……いえ…、接触している所を見たことはありません。大森くんは部活にも所属していないし、学年も1年生。委員会も図書です。」
「それに比べると、藤澤さんは学年は3年生で部活にも所属している。委員会も生活です。交わる場面が無い。」
「中学校や小学校、何かしら過去に関わりがあると言う事は…?」
「いえ、藤澤さんは高校入学と同時に東京に来ています。元々は長野で両親と暮らしていたそうです。」
そういえば、こいつにはまだ書類を渡していなかったな。
幼稚園、中高共に長野生まれで長野育ち。家族構成は父 母 そして藤澤。 一人っ子らしい。高校受験で東京に出たくて、別の私立高校を受けたが、合格出来ずだった。そして近くに民間学生寮のあるこの学校で受験をし、合格。
それからは長野を離れ、バイトでお金を稼ぎながら暮らしていると言う。
「、なら何故大森くんは、藤澤くんを殺害したんでしょう…。」
「…あ、捜査の役に立つかは分かりませんが、前に生徒が話しているのを聞いたことがあるんです」
「どんな話なんですか?」
「前に、藤澤さんと大森くんが一緒に居るのを見た事がある、と……。」
「…どこで?」
「確か、近くの民間学生寮から2人で出てくるのを目撃した…と、」
「学年男女問わず人気な藤澤さんと、若井くん以外と関わりを作ろうとしない大森くんが一緒にいるのを見ればそりゃあ、気になりますよね。」
民間学生寮から大森と藤澤が…。おかしいな、普通学生寮には寮通いの生徒以外の一般生徒は立ち入れないはずだ。
だが、大森は寮通いでは無いはず。両親が離婚し、父親が家を出ていった。それからは母親と二人暮しだったが、その母親は日に日に帰る時間が遅くなり帰って来ない日もあった。今では2週間に一回帰って来るか来ないかだと言う。そのため、ほぼ一人暮らし状態。
35坪の広さの二階建ての一軒家。ごく普通の家ではあるが、父親も出て行き、母親も返ってこなくなった家はローンを払う人も居ない。大森はバイトはしているみたいだが、それでも学費を合わせると1ヶ月のご飯も危ういと思われる。
「あの。」
「…はい?」
「大森は父親が離婚後家を離れ、親権を取った母親が日に日に家に帰ってこなくなってほぼ一人暮らし状態と捜査中にお聞きしました。」
「あぁ…そうです。」
「大森はバイトをしていると言っても、103万の壁を、超える事は出来ない、そうなると月収は約8万。学費と融資と生活費、主に食費を考えると経済は厳しい…。」
「この事について何か知っていることは知りませんか?」
「あぁ、大森くんは学費免除を受けています。」
「学費免除ですか……」
「はい、家庭状況が厳しいと本人から聞いていて、1度面談の場を設けて話をしたのですが、母親は何も言わずに大森くんを連れて帰ってしまったんです。」
「次の日学校に来た大森くんは首あたりと腕に痣を作っていて、私に『もう何も心配いらなくなりました。ぼくは大丈夫なので母さんには何も言わないで下さい』と言ってきたんです。」
この教師が見た時点で腕と首に痣が付いていたなら、衣服を脱げば全身に青黒い痣があるだろうな。
暴力者は殴る時は殴った際にできる痣が他人に見えない位置に付くように殴るものだ。
首や腕に痣が付いたのは、物を投げた際運悪く当たってしまったのだろう。
「他に知っている事や、聞いた事のある事はありませんか?」
「他……ですか。」
「……あ。」
大羽地 宰が何かを思い出したように目を開く。
「…神隠しって知ってますか?」
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EPISODE 3 . fin .