コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
館の掃除を終えた翌日。セリオとリゼリアは修理に取り掛かるべく、館内を詳しく調査していた。
「……思った以上に酷いな」
セリオは腕を組み、崩れかけた天井を見上げる。梁は歪み、漆喰は剥がれ、隙間風が入り込んでいる。
「ええ。でも、魔法で補強すればしばらくは持つわね」
リゼリアは冷静に判断し、杖を軽く振った。すると、亀裂が走っていた天井の一部が黒い魔力に包まれ、補強されていく。
「魔族の館らしい修復方法だな」
「当然でしょう? ただし、これはあくまで応急処置よ。根本的に直すには資材が必要ね」
「資材ね……」
セリオはしばらく考え込む。館の外には廃材が山積みになっているが、それを再利用できるかどうかは微妙なところだ。
「それと、もう一つ問題があるわ」
リゼリアが指差した先には、床にぽっかりと開いた大きな穴があった。どうやら地下室へと繋がる穴らしいが、その奥は闇に包まれ、底が見えない。
「……何かいるな」
セリオは手元の剣に手を添えながら、穴の縁に近づいた。すると、ぼんやりとした気配が下から漂ってくる。
「ええ、この館には元々住人がいたのだから、そういうものがいても不思議じゃないわね」
リゼリアは飄々とした様子で呟き、杖を軽く振ると、闇の中に魔法の光を投げ込んだ。
──その瞬間。
「グォォォ……!」
低いうなり声と共に、穴の奥から何かが蠢き出した。
「……やっぱりか」
セリオはため息をつき、剣を抜いた。
「お前、この館を俺に勧める前に、そういうのをどうにかしておくべきだったんじゃないのか?」
「だって、お前なら簡単に片付けられるでしょう?」
リゼリアは微笑みながら、まるで当然のように言う。
「……はぁ。まあ、いい」
セリオは構えを取り、穴の奥から這い出てきた影に向かって一歩踏み出した。
「まずはこの問題から片付けるとしようか」
こうして、リフォーム作業の前に、館に巣食う存在との戦いが始まった。