テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
まなこ〜友
117
#ますしき
T
5,800
どうやら、私が着く数分前に、最悪なことに雅が客として来てしまったらしい。玲くんは連絡しようとしてくれたけれど間に合わず、結果的に被ってしまったようだ。
帰ろうとも思ったが、玲くんに「飲みに行く」と言ってしまった手前、結局一杯だけ飲んで帰ることにした。
カウンターの真ん中に座っている雅から距離を取り、いつもの定位置であるカウンター端の席に腰を下ろす。それなのに、グラスと灰皿を手にした雅が、何食わぬ顔で、肩が触れそうな距離に座ってきた。
どういう神経をしていれば私の隣に座れるのかと思ったけれど、どう見ても、普段から図太い男だった。
「てか、何で今日来たのよ……」
「誘われて飲みにも行ってみたんだけど、つまんねぇからこっち来た。そしたら、たまたま夏帆に会えた」
「その面見せんなって言ったわよね?」
「覚えてねーや。二日酔いで」
そんなことすら覚えていないのなら、今すぐぼこぼこにして記憶ごと消し去ってやろうかと、本気で犯罪に手を染めそうになるけれど、ぐっと堪える。というか、一発くらい殴る権利はあると思うので、殴らせてほしい。それくらいしないと、この怒りは収まりそうにない。
怒りに任せて奴の顔を睨んでいると、玲くんに「何飲む?」と声をかけられ、はっとしてメニュー表に視線を落とした。
楽しみにして来たはずなのに、一杯目を何も決めていなかった。
「ピニャコラーダにしようかな」
「二人でテキーラは?」
「酔い潰す気なの、見え見えなの。次に同じことしたら、角瓶で頭かち割るから」
「脅しに聞こえねぇんだけど」
雅に溜息を零すのと同時に、玲くんもまた、静かに溜息をついていた。きっと、私が「雅に会いたくない」と言った時点で、何があったのかは大体察しているのだと思う。それでも、何も聞かずにいてくれるところが、今の私にはありがたかった。
「ていうか、今日の飲みの相手女の子でしょ。そのままそっちで飲んでよろしくやってくれば良かったじゃない」
「俺にだって気分じゃない時もあるっつーの」
「そんな日あるの? 下半身脳みそ男が?」
「死ぬほど失礼だな」
「あんたの普段の行いのせいよ」
「まだ再会して数ヶ月でわかった様な口利いてくんな、黙らせんぞ」
あんなことがあっても会ってみれば普通に会話は出来た。
会いたくなかったのも本当なのに、冷静になれば26歳にもなってワンナイトごときでずっと怒っているのも時間の無駄に思えてきたし、このバーが好きだから来る回数も減らしたくない。
こういう時、元カレとワンナイトだなんて…って、意識したりする方が可愛いのだろうけど、残念ながら私にはそんな可愛らしさは残っていなかった。
そんな自分に、思わず少し笑って呟いた。
「……私に可愛げがあればなあ」
「え? 可愛いよ、夏帆ちゃんは」
玲くんがそんなことを躊躇いもなく言うから、頬杖をついていた頬が、思わず落ちる。
この歳になって可愛いとか言われると思ってなかった。
それにこんなに気が強くて口の悪い女が可愛いだなんて、何かの冗談だ。
「ええ、いや。可愛くないでしょ私」
「可愛いよ、だから雅もちょっかいかけたくなるんでしょ」
その隣の誰かさんは面白くなさそうに、頬杖を着きながら玲くんの方を見ていた。もちろん奴から可愛いなんて言葉は出てこないし、期待なんてものもしていない。
「てか、二人は大学で何で付き合ったの? タイプ真逆なのに。どっちが告白したとか凄い気になるんだけど」
玲くんにそう問われ私と雅は顔を見合わせる。
何で……、だっけ?顔がタイプだった事は間違いないのだけど…。
そう言えば雅と私が付き合ったきっかけなんだった?
しばらく忘れていた過去を掘り起こすかの様に記憶を蘇らせる。
コメント
1件
玲くんの「可愛いよ、夏帆ちゃんは」が効きすぎてヤバい…!😭💕 気が強くて口悪いのに照れる主人公ちゃん可愛すぎだし、隣で不機嫌になってる雅くんにもニヤニヤしちゃう。二人が昔なんで付き合ったのか、私も気になりすぎて続き待ってます!!🍸