その日、はるとは一言も話さなかった。ずっと委員会の仕事に没頭しているはるの姿を、かなは教室の隅から静かに見つめていた。
はるは、いつもと同じように冷静で落ち着いている。普段から頼りになるその姿が、今日は少しだけ遠く感じてしまった。何度も言おうと思ったことがあった。昨日のことを謝りたかった。でも、何も言えなかった。どうしてだろう、どうしても言葉が出てこなかった。
時間が経つごとに、かなの胸の中にぽっかりと空いた穴が広がっていく。はるの存在が、今まで以上に大きく感じられるようになってきたからこそ、その距離感がひどく寂しく感じた。
気づけば放課後になり、教室にはもう誰もいない。委員会の仕事を終えたはるが、やっとその場から立ち上がる。その姿を、かなはただ黙って見つめていた。
はるは静かに教室を出る準備をする。かなはその背中を見つめながら、無意識に少し手を伸ばすような感覚に包まれていた。
でも、結局声をかけることができない。心の中で何度も「ごめん」と言いたかったけれど、その一言が口から出てこなかった。
結局、そのままお互い何も言わずに一日が終わってしまった。
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