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MAKO
図書館の閉館時間まで居座って、気になっていたシリーズの続編を借りた茉白は急いで家に向かっていた。
近道になる人気のない公園を突っ切っろうとして、ボロボロのベンチに力なく座っているクラスメイトにそっくりな少年を見つけて立ち止まった。
彼は確か、サッカー部のエースで明るくてカッコよくてモテモテな・・・ブラウン君?だっただろうか。
もう夕飯時も過ぎた夜に近い時間、こんなところで1人で居るなんて、何かがあったのだろうか。
茉白はお節介かと思いつつ、声だけ掛けることにした。
『あ、あの・・・ブラウンくん?ですよね・・・?こんなところでどうしたんですか?』
少年は驚いて顔を上げ、茉白の制服をじっと見てから納得したように頷いた。
「ああ・・・兄貴と間違えてますよ・・・俺はテディ・ブラウンです」
『えっ・・・あ・・・すみません・・・』
茉白がテディと名乗った少年の制服をよく見ると、同じ学校の詰め襟ではなく、ブレザーを着ていた。
『あの、それで、どうしてこんな所に?』
「・・・別に・・・
そっちこそ、女の子1人でこんな所にいたら良くないんじゃないですか?」
『そうですね・・・でも、家がすぐ近くなのでここを通ると近道なんです』
茉白は冷たい対応をされながらも、どうしてもテディのことが気になってしまっていた。
そのため、珍しく饒舌に話をしていた。
「ふーん・・・」
『あの、私の質問にも答えていただけませんか?』
「家に帰れないからここに居るだけ、これでいいですか?」
『家に帰れない・・・?』
鍵でも無くしてしまったのだろうかと茉白が心配すると、テディは苛ついたように茉白を追い払った。
「もう良いでしょう?放っといて下さい!!」
その時、公園の横の大通りから仲良しな家族の声が聞こえてきた。
「お前は本当に優秀で父さんも鼻が高いな!」
「本当!サッカーで全国大会にも行ったし、今回もテスト満点なんだから!」
「そんなに褒めなくていいよ、父さん、母さん」
「それに比べて、テディはどうしてあんなに出来ないのかしら」
「母さん、アレの話はするな。折角のケーキが台無しになるだろう」
「それもそうね。きょうはテディはいないから、しっかりお祝いしなくっちゃね!」
テディはその会話を聞いて、悔しそうにズボンを握りしめて俯いていた。
『・・・酷い・・・』
茉白はテディが家に帰れないと言った理由が分かって、彼の家族に怒りが湧いてきた。
『テディ君、私のお家に来ませんか?』
「・・・はぁ?」
『私の家は両親共に仕事で基本留守にしているので、泊まっていっても大丈夫ですから』
そう言って茉白はテディの手を引いて家に連れ帰った。
家に着くと、茉白はお湯を沸かして温かいお茶を淹れてテディに出した。
リビングの机で居心地悪そうにしていたテディはクマの柄が入ったマグカップをまじまじと見つめて、そっと口をつけた。
『え〜っと、テディ君の学校はここから近いのですか?』
「あ、はい・・・すぐそこの〇〇中だから・・・」
茉白は中学受験をして中高一貫に入ったためあまり気にしていなかったが、確かに近くに公立中学校があった。
茉白は漸く兄弟で制服が違ったことに納得して頷いた。
『そ、それじゃ、お弁当は要りますか?』
「いや、給食あるから・・・」
『え、そうなんですね』
「私立は無いですもんね」
『はい・・・あとは・・・あ、着替えとかどうしましょう・・・コンビニに下着くらいなら売ってますかね?』
「・・・今日は帰れないって分かってたんで、着替え持ってます」
『そ、そうですか・・・』
早くも話題が尽きてしまい、茉白はとりあえず夕飯の支度をすることにした。
簡単な夕飯を用意している間、テディは大人しく勉強をしていた。しかし、あまり勉強は得意ではないらしく、何度も消しゴムを使っては頭を悩ませていた。
テディには父親の食器を使ってもらい、お互い久しぶりに誰かと食事をした。
『美味しいです・・・』
「おかわりもあるから、いっぱい食べてくださいね・・・」
茉白はガツガツと白米をかき込むテディを哀れに思い、せめてお腹いっぱい食べさせてあげようと心に決めた。
その後、テディがシャワーでいいと言ったので各々好きな時間に風呂を済ませることにした。
茉白は久しく使っていなかった父親の寝室のシーツを変えたり、明日の朝食と弁当の準備をしたりしてからシャワーを浴びた。
先にシャワーを浴びたテディは茉白の父親の寝間着を着てテレビを見ていたので寝室に案内し、その日はお互い会話も殆どなく終わった。
コメント
1件
ああ、これすごく良かった……! 茉白が一歩踏み出して「うち来ない?」って言えたの、めっちゃ勇気いるし、彼女のやさしさがじんわり伝わってきた。 それに比べて、道で聞こえてきた家族の会話……あれ、テディにとっては刺さるよね。 タカ派な兄貴と比べられて、「家に帰れない」って言わせちゃう環境、切なすぎる。 クマのマグカップとか、父親の部屋の準備とか、距離感がリアルで好き。 なんかこの2人、静かに心通わせていきそうな雰囲気で期待大🔥