テラーノベル
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夜が、ほんの少し明けかけていた。窓の外、白んだ空がわずかに揺れていた。
ベッドの上に座ったまま、
何度も同じ画面を見ていた。
るぅとくんからの返信は、それきりなかった。
恐らく、、安心したんだろう。
“大丈夫”って言ったから。
(……そんなわけ、ないのに。)
喉の奥がひどく渇いていた。
吐いたせいか、頭がずっとぼんやりしていてる。
手足は冷たくて、しびれていた。
莉犬「……バレなきゃいいんだよ」
そう呟いた声は、誰にも届かない。
届いてほしくないけど、ほんとは――
誰かに、見つけてほしかった。
気づいてほしかった。
カーテンの隙間から、朝の光が差し込む。
その光が、やけにまぶしくて、目を細めた。
――通知が鳴った。
画面には「さとみくん」からの名前。
珍しく、通話の着信だった。
莉犬「……え、なんで…」
一瞬、出るのか迷ったが、 指は勝手に画面を押していたようだ。
さとみ「――莉犬?」
開口一番、その声は驚くほど優しかった。
いつもみたいな冗談はなくて、
心をまっすぐ見てるような声だった。
俺が苦手な声だ。
さとみ「最近、声おかしかったからさ。」
さとみ「気になって連絡したんだけど…」
莉犬くん「……別に……なんでもないよ」
声が震えた。
そんな事言わないで。優しくしないで…
自分ではわかってる。
もう限界だってことぐらい。
もう変わってるんだ。
でも、でも、今だけは気付きたくないんだ…
さとみ「寝起きか?声、かすれてるな笑」
さとみ「もう昼だぜ笑」
莉犬「そりゃあ……寝てないからね」
軽く笑ってごまかすつもりだった。
でも、笑い方が上手くいかなかった。
声が、にじんで崩れた。
さとみ「莉犬、さ。」
さとみくんの声が低く、優しく、そして真っ直ぐだった。
さとみ「――莉犬、本当に大丈夫か?」
さとみの声は静かだった。
けれど、その静けさの奥には、深い“怒り”
と“心配”が入り混じっていた。
莉犬はスマホを耳に押し当てたまま、
押し殺すように小さく笑った。
莉犬「大丈夫だって、言ってるじゃん、笑」
さとみ「……嘘だろ」
莉犬「嘘じゃねぇってば…ッ!!笑」
声のトーンがぐっと低くなり、空気がピンと張り詰める。
莉犬「ちゃんと配信も」
莉犬「 スケジュールもこなしてる」
莉犬「るぅちゃんにもころんちゃんにも」
莉犬「迷惑かけてないッ…!」
莉犬「さとみくんにだってッ…!! 」
莉犬「大丈夫って言ってんだろ、俺は。」
莉犬「全部やってんじゃんッ!! 」
莉犬「頑張ってるじゃんッ…!!」
さとみ「お前、今、」
さとみ 「自分に言い聞かせてるんだろ?」
その一言で、俺の中で何かがプツリと切れた。
「だから何だよ!!」
怒鳴り声が部屋を震わせる。
莉犬「なんでだよ!!」
莉犬「なんでさとみくんにそんなこと」
莉犬「言われなきゃなんねぇのッ!?」
莉犬「俺のこと、俺が一番わかってんだッ!!」
さとみくんは黙って聞いていた。
泣きそうで、苦しくて、ぐちゃぐちゃなその声を遮らずに。
震える声に、泣き声が混じる。
莉犬「だから俺はッ…! だいじょ――」
さとみ「大丈夫じゃねぇよ」
さとみくんの声は鋭く、優しかった。
さとみ「お前、泣いて声震わせて、」
さとみ「それでも“平気”って嘘つくの、」
さとみ「もうやめろ。」
さとみ「誰かに甘えたっていいし、」
さとみ「崩れてもいいんだ。」
さとみ「お前が泣いたからって、」
さとみ「すとぷりは壊れたりなんかしない。」
莉犬「……うるさい!」
莉犬「うるさい!うるさいッ!!」
怒鳴り声が震えていた。
莉犬「さとみくんに俺の何がわかるんだ!!」
次の瞬間、ブツッという切れる音がして、スマホを見ると通話が終わっていた。
静まり返った部屋の中、
スマホの画面には「通話終了」の文字だけが残った。
膝を抱え、ベッドの隅で小さくなった。
荒い息遣いと、ヒリヒリと痛む喉。
泣きたくなかったのに、
涙は勝手に頬を伝って落ちていく。
「……ごめんね、さとみくッ……ポロポロ」
小さな声が、静かな部屋にぽつんと響いた。
コメント
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神様、仏様、ひよこ様
神✨ 次回も楽しみにしてます!