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鷹槻れん

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鷹槻れん

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やわらかな風が頬をなでた。
川のせせらぎが静かに流れる音と、木々の葉がこすれる微かなざわめき。そのすべてが、まるで夢の中の出来事みたいに遠く感じる。
だけど、唇に残る熱だけが、やけに鮮明だった。
「……っ」
神谷朝陽。
彼は住む世界が違う人で、遠くから見ることしかできなかった人。
仕事で関わるだけでも緊張してしまうような相手だったのに。
……どうしてこんなことに。
頭の中で何度も同じ問いが繰り返されるけれど、答えはひとつも見つからない。
「目を逸らすな」
低くて落ち着いた声。そのひとことだけで、心臓が大きく跳ねた。
距離を取らなきゃいけないのに、身体が言うことを聞かなかった。
顔を上げさせられて、視線がぶつかる。
吸い込まれそうなほど深い瞳に射貫かれた瞬間、もうなにも考えられなくなっていた。
「これ以上、どうやって我慢すればいいんだろうな」
耳元でこぼれた彼の言葉で、思考が止まる。
「君のこと、本気で好きになってる」
彼の告白を聞いて思わず息をのんだ。
視線が絡んだまま、ゆっくりと彼の顔が近づいてくる。
避けることも、目を逸らすこともできないまま――再び唇が重なった。
心臓がうるさい。
ドキドキと早鐘を打つ鼓動が、静かな川辺の空気を壊してしまいそうで怖くなる。
落ち着かなきゃ。これはきっと、なにかの間違いだ。
理解が追いつかないのに、顔だけがどんどん熱くなっていく。
(……彼はいったいどういうつもり?)
とまどいと、驚きと、混乱。そして、それだけじゃない感情がゆっくりと広がっていく。
彼の腕に囚われたまま、私はただ立ち尽くしていた。
このあと自分の人生が大きく変わってしまうなんて、このときはまだ知らなかった――。
コメント
1件
うわー、いきなり心臓にくる展開ですね…!川辺の静かな風景と、彼の低く落ち着いた声のギャップがもう。特に「目を逸らすな」の一言でドキッとさせられました。朝陽さんの「どうやって我慢すればいいんだろうな」ってセリフ、どれだけ抑えてきたのか伝わってきて切なくなる。お互いの立場や距離感が気になる、素敵なプロローグでした。続き読みたいです!