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第3話 犬系女子は懐かない

昼休みになっても、ひよりは桐生に話しかけなかった。

いつもなら真っ先に駆け寄って「桐生くん、一緒にご飯食べよ!」と言うのに、今日は違う。

ひよりは女子グループの輪の中にいた。

無邪気に笑っているように見えたけれど、その笑顔の奥に少しの違和感を感じたのは、桐生だけだった。

――なんで、避けてる?

桐生は特に気にしないふりをして、ひとりでパンをかじる。

猫は自由気ままだから、べつに誰かと一緒じゃなくてもいい。

……なのに、喉の奥が少しだけ詰まるような気がした。


放課後。

桐生は靴箱の前で立ち止まった。

ちょうど、ひよりが靴を履き替えているのが見えたからだ。

――いつもなら、ここで待っててくれたのに。

ひよりは桐生に気づくと、一瞬だけ目を丸くした。

でも、すぐに目をそらして、「じゃあね」と短く言った。

「待てよ」

桐生の声がひよりを引き止めた。

彼がこんな風に呼び止めるなんて、珍しい。

ひよりは戸惑いながら振り返る。

「……何?」

「お前、なんか変」

ストレートな言葉に、ひよりの心臓が跳ねた。

「別に? いつも通りだよ」

「いや、違う」

桐生はじっとひよりを見つめた。

「昨日からおかしい」

図星だった。

でも、ひよりは笑ってごまかした。

「そんなことないってば! それより、桐生くんこそ何? 急に話しかけて」

「……」

桐生は言葉を探すように一瞬だけ黙ったあと、ふっと視線をそらした。

「別に。お前が変だから」

「……ふーん」

ひよりは少し寂しそうに笑った。

「ねえ、桐生くん。私が変なの、なんで気にするの?」

その問いに、桐生は答えられなかった。

だって、理由なんて考えたことがなかった。

ただ、いつも隣にいた犬系女子が、自分を避けるのが――妙に落ち着かなかった。

「……じゃあね、桐生くん」

ひよりはもう一度そう言って、振り返らなかった。

彼女のしっぽは、もう振られていなかった。

猫系だったら愛したそうです

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