いまから8年遡る。
ある夏の日、少年と少女は小学校からの下校中であった。
「じゃあね~湧くん」
「バイバイ沙織ちゃん!」
沙織ちゃんは交差点をまっすぐに歩いて行った。
僕はそれを見ていた。なぜかはわからないが、ただ、ぼーっと沙織ちゃんの背中を見ていた。突然、目の前が煙だらけになった。その煙を手で払おうとしたときには煙はなかった。だけど、さっきまでいなかったはずのトラックがいた。それも沙織ちゃんに向かって猛スピードで。僕は沙織ちゃんがひかれると思い、声をかけようとした。だがトラックはいなかった。見間違い?暑さでおかしくなってしまったのか。だが胸がざわざわする。そう考えた時には沙織ちゃんのほうへと走っていた。
「沙織ちゃん!やっぱり一緒に帰る!」
「え!いーの!一緒に帰ろ!」
喜んでくれたのが正直うれしかった。
一緒に歩き始めた時だった。さっきの煙の中でみたトラックが、僕たちの横を猛スピードで通り過ぎ電柱にぶつかった。
「あれは、暑さによっておかしくなったんじゃない。未来を見ていたんだ!」と考えた。だけど、内容が違う。なぜ?と考えていた。
ドカンッ!
車から火が出た。沙織ちゃんは動けずに立ったままだった。
「沙織ちゃん!逃げるよ!」
沙織ちゃんの手を引いて一目散に逃げる。
沙織ちゃんの家まで逃げた。騒ぎが収まるまで沙織ちゃんの家にいることになった。沙織ちゃんのお母さんとお父さんからはお礼を言われた。沙織ちゃんからもお礼を言われた。
僕はわからないのだ。なぜ未来が見えたのか、なぜ見た未来と違うのか。
現在
7月の大会の団体戦のメンバーを決めるための部内対抗試合を行っていた。
「湧、お前すごいよな、あんなプレーできるとはねぇ。どうやったらあんな、柔軟に対応できるんだよ」
「わからないけど、ゾーンに入ると未来が見えるみたいな感じでどこに球が来るのかわかるんだ。でも兼の球はわからなかった。」
俺はあの時以来、未来を断片的に見るようになった。あの事故以来。
「いいなぁ、俺もそうなりたーい。湧、未来の見方教えてくれ!」
「兼だって十分強いじゃん」
「あのなぁ、お前に負けて二位なの!!!!たとえるなら、将棋のうまい人と何手先を読むプロ棋士が戦って勝てないのと一緒なの。」
「そんなこともないやろ」
突然に頬に冷たさを感じる。また未来を見ているのだろうか。
「あれれぇ~反応なしかぁ。はさんじゃえ」
「フギャッ」
突然の両頬冷たさは未来ではない。今起きてる。変な声でたもん。
「おー!初めて聞く声だぁ」
声の主は振り返らなくともわかる。
「部長でも聞いたことないのは、驚きやな。小学校からの仲やのに」
女子卓球部部長であり、彼女である、沙織だ。
「はにゃくはにゃしてくれ、凍傷になりそうにゃ」
ほっぺ挟まれてるおかげで猫語みたいになってしまった。
「おー!!!猫みたいだっ!!」
「はにゃして!」
「しかたないなぁ」
やっと解放された。
冷たいのに挟まれたせいで尿意を催した。
「わりいトイレ行ってくる」
「俺も行く」
「行ってらっしゃい」
トイレの前で突然、兼が倒れた。だがすぐ起き上がった、と同時に俺の首につかみかかった。兼の背中あたりから青い煙が出ている。
「お前がいるから1番になれないッ!お前さえいなければ私がナンバーワンだッ!」
「兼、どうした!離してくれ!」
バリンッ
黒装束で虹色のサングラスをかけた男が窓を割って入ってきた。俺は、どうしたらいいかを考えていたのに、この男のわけのわからん格好と行動で頭の中ははてなだらけになった。
「やっぱり、いたか」
やっぱりって、どうゆうことだよ。
「ちょい待ってろ、その青い煙を祓うから動くな。」
青い煙見えているのか、まぁ見えてないと”いた”なんて言わんか。
「言の葉の光、言霊の闇、定めの道なり」
男はこの言葉を唱えた後、兼をつかんだ。おかげで兼からは離れられた。
「燃えろ」
兼が緑の炎に包まれた。
「何やってんだよ、兼ごと燃やす必要ないだろ!」
男は少し驚いた。
「まぁみてなよ」
「ああああああ!あつい!あつい!」
兼は口を開いていないのに苦しむ声が発せられている。
「よし、消えろ」
炎は消えた。兼には燃やされた跡はない。
男は俺を何かの彫刻作品かのように全身を見回した。
「ねぇ、君、未来が見えたりしない?」
俺は驚いた。今まで誰にも話したことのないことなのに。なぜ、そのことを。
「その顔はやっぱり見えるんだね。まぁ炎が見えたあたりそうか。この炎は”運命”という名のシャーレから離脱した人間にしか見えないんだよ。」
何を言っているんだ?
to be continued
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