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鷹槻れん

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鷹槻れん

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#恋愛
水無月 京
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#オフィスラブ
草原草原

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「茶化すなよ」
「悪い。俺はお前が遊びで女と付き合わないのは知ってる。イケメンだからめちゃくちゃモテるくせに。でも顔が好みなだけで近寄ってこられても、神谷朝陽という人間を本気で好きになってくれなきゃ嫌なんだろ?」
「そうだ。遊びで付き合ってなにが楽しい? 俺はなにも満たされない」
眉をひそめて持論を展開する俺の意見を聞き、同感だとばかりに朔也がニヤニヤしたままうなずいた。
「香椎さんも朝陽のことはイケメンだと思ってはいるだろう。けど、お前を心から尊敬してるらしいからな。伊地知さんがそう言ってた」
尊敬してくれるのはうれしいが、彼女に限ってはそれだけで終わってほしくない。
俺は互いに心から愛し合う仲になりたい。そう思える相手はあとにも先にも香椎冴実……ただひとりだと思う。
「お前はさ、最初からビビッと来てたんだよ」
「……え?」
「最終面接で、香椎さんだけ即採用を決めただろ? 無自覚だったかもだけど、朝陽はあのとき香椎さんに惹かれたんだよ」
まるで俺が一目惚れをしたかのような言い方だ。だけど「それはない」とは言えなかった。
よく働いてくれそうだとか、真面目そうだという正当な理由のほかに、無意識に惹かれた部分があったのかもしれない。例えば、女性として魅力的だ、とか。
「で、おじいさん同士も友達だったわけだし……こういうのってさ、なんて言うか知ってる?」
俺が無言のまま表情だけで話の続きを促すと、朔也はこちらを見ながら茶目っ気たっぷりに右手の人差し指を立てた。
「運命の出会い」
朔也の性格は知り尽くしていると思い込んでいたけれど、こんなにもロマンチストな部分を持ち合わせているのだと改めてわかり、少々驚いた。
自慢げに言い切る朔也に、恥ずかしげもなくという意味を込めてクスクス笑ったものの、そのとおりだなと内心では腑に落ちていた。
「朔也、お前はどうなの?」
「なにが?」
「決着つけなくていいのか?」
今まで機嫌よく笑みをたたえていた朔也が、俺が問いかけた途端に顔を引きつらせて黙り込んだ。恋愛話になると朔也はいつもこうだ。
「このままでいいんだよ。俺は脈なしだからな。期待するのはとっくに辞めた」
「前から思ってたけど、さすがに消極的すぎないか?」
第三者の俺から見ると、ただ単に告白のきっかけを失っているだけのような気がする。出会ってから現在までの年月が長いせいだ。
今まではっきりと聞いてはこなかったけれど、俺はずいぶん昔から朔也の心の内側にある恋心に気付いていた。
朔也は一度別の女性と付き合ったこともあったが、長くは続かなかった。忘れらない女性が心の中にいるのだから当然の結末だ。
モテるくせに実は一途で、ずっとひとりの女性だけに愛情を注いでいる。両思いになれる相手と付き合えばいいのに、ほかの人ではダメなのだろう。
本気で好きなのだなと確信をしたのは五年前だった。失恋をしてボロボロになっていた伊地知さんを、朔也は必死に支えようとしていた。
それは後輩としてではなく、ひとりの男として伊地知さんを心から愛しているのだと主張しているように見て取れた。
だけど五年の月日が経った現在も、ふたりの関係は一向に進展していない。朔也は“脈なし”だと言ったが、そんなわけはないのに。
「伊地知さんはさ、俺なんか好きじゃない。だってお前のことは朝陽くんって呼ぶのに、俺はいつまで経っても“五十嵐くん”だぞ? 名字でしか呼んでもらえないんだ」
「……は?」
何年もずっとそのことを気にしていたのかと思うと、仰天して変な声が出た。
コミュニケーション能力が高い朔也なら、名前で呼んでほしいとすぐに本人に言いそうなものだけれど、相手が意中の伊地知さんだとそうもいかなかったのだろうか。
コメント
1件
朔也、めっちゃ可愛いですね…!「名字でしか呼んでもらえない」っていう理由で脈なしと思い込んでるところ、五年も片思いしてきた重みがじんわり伝わってきて胸がぎゅっとなりました。朝陽の「それはない」と言えなかった冴実さんへの気持ちも尊い。ふたりの恋、どちらも応援したくなります。伊地知さん視点もいつか読めたらいいなあ…!