テラーノベル
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(なんなんだ、あの子……)
サイラスは下唇を噛み締めながら、ブラッド公爵家の庭園を足早に横切っていく。
力が強すぎたのか唇の薄皮がピリッと破れる感覚がして、口に血の味が広がった。
「はあ……くそっ」
指で血のついた唇を拭い、滅多にしない舌打ちをしながら落ち着けと自分に言い聞かせる。
今日はただ、アダムがローズのことで悩んでいる様子だったからローズとの間を取り持ってやり、借りでも作ってやろうくらいの気持ちで来たはずだった。
なのに、たまたま存在を知ったローズの侍女――ベロニカと揉めてしまうとは。
緩くクセのかかった赤茶色の髪を胸元まで下ろした、素朴そうな女の子。
侮蔑をまとった榛色の瞳を思い出すと、苛立ちが燻りだして深くため息をついた。******
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