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高校生パロ
※🤍❤️と💛❤️あり
書く時名前の部分ABCで当てはめてたので修正できてないところあるかもしれません
6話まであります、長いです。
君の幸せの作り方
柔太朗side
放課後の教室はやけに静かだった。
窓の外で運動部の声が響いているのに、この場所だけ少し切り離されているみたいで。
「なあじゅう、ちょっと聞いてもええ?」
その声に、顔を上げる
舜太が机に頬杖をついてこっちを見ていた。
変わらない距離
変わらない顔
幼馴染みで兄弟のようにずっと隣にいる人。
「なに」
「じんちゃんのことなんやけどさ」
やっぱりそれか、と思いながらペンを置いた
「また?」
「相談乗ってくれるんじゅうくらいやん」
少し拗ねたみたいに笑う舜太に、俺もつられて笑う
——こういうところだよ。
無防備に踏み込んできて、当たり前みたいに頼ってくる
「で、どうしたの」
「なんか最近、避けられとる気ぃするんやけど」
「……気のせいじゃない?」
少しだけ間を置いて、そう返す
本当は知っている
仁人が距離を取っている理由も
その視線の意味も
全部。
でも、それをそのまま伝える理由はなかった
「やっぱそうなんかなあ…」
舜太は視線を落としてため息をつく。
「俺、なんかしたかな」
「してないでしょ」
即答だった
それも半分本音で、半分は——
「じゃあなんでやろ」
「吉田さんの問題じゃない?」
軽く言ったその言葉に、舜太は少しだけ安心した顔をする。
「そっか…そうやんな」
ほら
そうやって簡単に納得する。
俺の言葉ならなんでも受け入れる
それがどれだけ都合がいいことかきっと舜太は気づいていない
「なあじゅう」
「ん?」
「やっぱお前おると安心するわ」
その言葉に一瞬だけ呼吸が止まる。
「なんかさ、家族みたいやん」
——また、それ。
胸の奥が、じわりと軋む
「……そうだね」
笑って返す声はいつも通りだった
完璧に。
「一番気ぃ使わんでええし」
「それ褒めてる?」
「褒めとる褒めとる」
けらけら笑う舜太を見ながら目を細める。
——家族
——一番楽な存在
それ以上にはならない場所
(……それでいいわけないでしょ)
心の中でだけ呟く。
こんなに長い時間をかけて
こんなに近くにいて
それで、ただの“家族”で終わるなんて。
「また相談乗ってな」
「いいよ」
即答だった
優しさでもなんでもない
「いくらでも聞く」
だってそれが、
——一番近くにいられる方法だから。
舜太は満足そうに笑って「助かるわ」と言った
その顔を見ながら思う
(大丈夫)
(ちゃんと考えてるから)
(どうしたら——)
ふと、視線の先に仁人の姿が見えた
一瞬だけ、目が合う。
その目は何かに気づいているようで。
でも、すぐに逸らされた
(……気づいてる?)
ほんの少しだけ口元が歪む
(まあいいよ)
(どっちにしろ)
ゆっくりとペンを持ち直す
(君の幸せの作り方は)
(もう、決まってるから)
仁人side
廊下の窓から教室の中が見えた。
——ああ、また
舜太が笑っている
その向かいで、柔太朗も笑っている
いつも通りの光景。
「……ほんと、分かりやすいな」
小さく呟いて視線を逸らした。
見なくてもわかる
舜太がどんな顔で、どんなふうに柔太朗を見ているのか
そして柔太朗がどんな顔でそれを受け止めているのかも
——全部
知ってしまったのは、いつからだっただろう
最初はただ違和感だった。
舜太の話を聞いていると妙に引っかかる瞬間が増えた
「じんちゃんさ、最近ちょっと冷たい気ぃせん?」
そう言われたとき思わず笑いそうになった
(そりゃ、そうだろ)
冷たくしてるんだから
わざと。
「気のせいじゃない?」
柔太朗はそう言っていたらしい
……らしい、というのは直接は聞いていないからだ
でも、分かる
舜太がそのまま信じている顔をしていたから。
「そっかあ…」
って、安心したみたいに笑っていたから
(ほんと、あいつ……)
疑うことを知らない。
まっすぐで優しくてだから、残酷だ
壁に背中を預けてゆっくり息を吐く
本当はわかっているくせに
——柔太朗かどう思っているのか
その時間がどれだけ長く、重いか
知らないわけがない。
「……ずるいよな」
ぽつりと零れる
自分は気づいてしまったのに。
気づかないふりなんて、できなかったのに。
(舜太が柔太朗のことどう思ってるかなんて)
見てれば分かる
信頼してる
頼りにしてる
大事にしてる
でも、それはきっと——
(“そっち”じゃない)
だからだめなんだ。
一歩でも踏み込んだら、壊れる
柔太朗も、舜太も
全部。
「……俺が引けばいいだけだろ」
簡単な話だ。
自分がいなければ、舜太は迷わない
柔太朗の隣にいるのが当たり前になる
それが一番丸く収まる
——なのに
教室の中で、舜太が笑った
つられて、柔太朗も笑う
その光景に胸の奥がじくりと痛む
(なんで)
こんなにも目が離せないんだろう。
「……最悪だな」
自分で自分に呆れる
幸せを願ってるくせに
ちゃんと身を引こうとしてるくせに
(それでも)
ほんの少しだけ
ほんの少しでいいから
——自分を見てほしい、なんて思ってしまう。
「……だから、距離取ってんのに」
これ以上近づいたら終わる
自分が壊れる
それだけじゃない
柔太朗も、壊す
あいつはきっと優しい顔のまま壊れるタイプ
(……だから)
それだけは、だめだ
そのときガラ、と教室のドアが開いた
反射的に顔を上げる
出てきたのは柔太朗だった。
一瞬だけ、目が合う
「……」
「……」
数秒の沈黙
その目は、やけに静かで
全部見透かされている気がした。
「——吉田さん」
先に口を開いたのは柔太朗だった
「ちょっといい?」
逃げるという選択肢が頭をよぎる。
でも、足は動かなかった
「……なに」
柔太朗は一歩こちらに近づく
いつもと同じ距離
なのに、妙に圧がある。
「舜太のことなんだけど」
その一言で全部理解した。
ああ、来た
「……あいつ、なんか言ってた?」
「うん」
短く頷く
「避けられてる気がするって」
「そりゃそうだろ」
思わず即答する
少しだけ、柔太朗の目が細くなった
「理由さ、言わないの?」
「言う必要ある?」
静かに返す
「……あるでしょ」
「ない」
被せるように言った
これ以上踏み込ませないために
「俺が距離取ればそれで済む話だから」
その言葉に柔太朗は少しだけ黙る。
そして、
「……それで、舜太が納得すると思ってる?」
低く落とすような声
「するだろ、そのうち」
「しないよ」
即答だった
「舜太、ああいうの引きずるタイプだから」
「……」
言い返せない
分かってるから
「それでも」
絞り出すように言う
「それでも、これが一番いい」
柔太朗はしばらくこちらを見ていた
その目は、相変わらず穏やかで
でも奥の方に、何か別のものが見える
「……そっか」
ふっと、笑った
いつも通りの優しい顔で。
「“じんちゃん”って優しいね」
その一言に、なぜか背筋が冷えた。
「でもさ」
一歩距離が詰まる
「それ、ほんとに舜太のため?」
「——は?」
思わず顔を上げる
柔太朗は笑っている
なのにその目は笑っていなかった。
「自分が楽になるためじゃなくて?」
「……違う」
「ほんとに?」
「違うって言ってんだろ」
少しだけ声が荒くなる
柔太朗はそれでも穏やかに続ける。
「じゃあさ」
——逃げ場を塞ぐみたいに
「ちゃんと向き合えばいいのに」
「……」
「拒絶して、距離取って」
「それで“優しい”って、ちょっと違くない?」
言葉が詰まる
何も、返せない。
図星だから。
でも、それでも
「……じゃあ、お前はどうなんだよ」
気づけば、口に出ていた
「お前は全部正しいのかよ」
柔太朗の動きがぴたりと止まる
ほんの一瞬
ほんの一瞬だけ、表情が揺れた。
——気がした
でもすぐに、元に戻る。
「さあね」
曖昧に笑う
「少なくとも」
静かに言った
「逃げてはないかな」
その言葉に、何も言えなかった
ただ分かってしまった。
(ああ)
こいつは
「もう、止まれないやつかも」
小さく呟く
柔太朗は何も答えなかった
ただ、いつもの柔らかな顔で立っているだけだった。
あ