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「…………」

青空が眩しい。


さっき、窓の下で国民に讃えられながら戻ってきた大先生たちを見た。

俺はひと足先にここ医療室に戻っていたから、まだ話せてない。



『ショッピ』


「っチー…!…………」


呼ばれたような気がして、振り向いた。

そこには何もない、真っ白な壁に囲まれた部屋の扉しかなかった。

また窓に目をやる。


もう嫌だ。





「やめろぉぉ!!!」

そう聞こえ、振り向いた先には…もう元気な彼の姿はなかった。

すぐに襲いかかってきた敵を薙ぎ倒し、チーノに駆け寄る。爆弾をもろに喰らったのか、顔半分が爆発のせいで爛れてしまっている。呼吸も浅い。

「大丈夫か、チーノ……!ちょっと待ってな、」

俺はすぐ回復スピード5倍のポーションをチーノに飲まし、包帯やら布やらで止血をした。

メガネのレンズが溶けて皮膚についてしまうと思い、メガネを外そうとした時、チーノが止めた。


「……やめて、取らんといて……」

「なんでや!これじゃあ眼球傷ついてまうやろ…!」

「……っだって、眼鏡外したらショッピの顔わからんくなってまう……!もうわかるんよ、もう俺は無理や……助からんって、…っだったら、最期くらいお前の顔だけでも見させてよ……、一人はやだよぉ……」


チーノの綺麗なオレンジの瞳が涙で濡れ、空の青をキラキラと反射させる。普段だったら綺麗だとでも思うのだろうか。その時の俺には、チーノを助けることで頭がいっぱいだった。


「死ぬなんて、そんな縁起でもないこと言わんといてや!……死なん、……死なせへん、……ワイが許さんわ!……また、一緒にバカやって笑うって決めとんのやこっちは!」


チーノの顔半分を細菌がつかんようあらかじめ用意しておいた水に浸してあるタオルを押さえつける。痛がっていたチーノだが、次第に抵抗がなくなっていった。


「……ありがとなぁ、……ショッピ…………もう俺んことはいいんよ、……はよ戦って、逃げていきや」

「っさっきも言ったやろ!俺はチーノを死なせへん!絶対に……っ!、死なんといて、死なんでや……チーノ……」


涙で視界がぼやけ、チーノの顔が見えなくなってしまった。



そして、チーノは眠るように生きることをやめた。俺は立ち直ることができなかった。

目の前で冷たくなったチーノを置いて行けず、まだ希望を持つことをやめずにその場で泣き崩れていたその時だった。


俺は、神様に恨みでも買ってしまったのだろうか。



「ショッピ君!……危ない!!」


目の前に散る鮮血。ドサっと物音を立て目の前に崩れ落ちたのは、シャオさんだった。

足元に広がる血は止まる気配がなく、流れ続けた。

「シャオさんっ!?」


「……ごめん、っショッピ君、……あんま気ぃ病むなよな!…、だから、……どうか…………生きて……」

最期の最期まで、最後の方は掠れたか細い声でそう言ったシャオさんは、すぐに冷たくなってしまった。

親愛なる友人の亡骸を両脇に、どうしていいかわからず途方に暮れていた時だった。

「……ショッピ、……頑張って生きて、その二人の成し遂げた成果を世界に言わんとなぁ、……二人も英雄やわ」


いつもと変わらぬ声色で、そういう大先生が、そこにはいた。

「……ほっといてください。……すいません」

「……守っとってやるよ。二人も寂しいやろうから、そばにいておいてやってくれや。……シャオちゃん、頼むわ」


そういうと、大先生はそばを離れた。俺が死ななかったことから、大先生は多分、きっと言葉通り守ってくれたのではないだろうか。




だが、僕はこう考えてしまうこともある。


「……英雄って……なんなんやろ……」






「……すまないな」

青空の真下。微風に揺られさらさらと靡く金髪は輝かしく、眩しかった。

俺は立ち上がり墓石を見つめながら言う。


「グルさん、お疲れ様です。……終わりましたよ。」

「……ああ、ありがとう。……無理を、させたな」


珍しくおとなしいグルさんの様子を見るあたり、責任を感じてしまっているのだろうか。そういうところも、昔と全く変わらない。

「……自分、騒がしくて、うるさくて、たまにやらかすけど、それを笑って「すまん」と言えるあの空間が、好きだったんすよ」


戻りたいとは、思わない。叶わない夢は追わない主義だ。

だけど、弱音ははかしてほしい。……少しだけ聞いてほしい。……俺は手に持った赤色のガーベラを、チーノの墓石の前に置く。

「もう他のメンバーの墓参りは終わりましたよ。……グルさんもやったら、その責任感が少しは晴れるかもしれへんよ」


「……俺が感じている責任は、当たり前なんだ。……他の国も、きっと感じているはずだ。……特に、今回の戦争で総統を亡くした「運営国」は、これから大変なことになるだろう。」

「……今回の四カ国との、同盟はどうすんのや」

「これからまた、協力関係を築くことになった。……おかしな話だろう。だが、元から決まっていたことだ。」


少し説明不足ではないだろうか。グルさんはそうだけいい、総統室へ戻った。


「……これから、また大変になりそーやなぁ。チーノ……、見守っててやれよ、ショッピ君のこと。……いっちばん気に病んでんだから、……”大丈夫”ぐらい言ってやれよな」


そうだけ言い、俺は城内へ戻った。

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