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「えっ、今!?」


まさか渡した直後に使われるとは思わなかったアイリスが驚いて声をあげる。


「だめ?」

「いや、もちろんいいけど……」


こんなにすぐ、一体何をしてほしいのだろうかと考えていると、エヴァンがアイリスの目を真っ直ぐに見つめた。


「アイリスのことを教えてほしい。どうして魔法を使えるのか。どうして皇太子が大事なのか。アイリスのことを知りたいんだ」

「私のこと……?」

「うん、アイリスのことを理解したい」


自分のことを教えてほしいとお願いされ、アイリスが困惑する。エヴァンが知りたいことは、誰にも教えていないアイリスの秘密だ。それを明かすのは、さすがにためらわれる。


(でも、なんでもするって約束したし……)


いきなり約束を反故にするのはよろしくない。

それに、アイリスはエヴァンの顔に弱いのだ。


美しい銀髪を揺らし、神秘的な紅い瞳で懇願されると、クリフを思い出して拒否できなくなる。


(私って、なんて甘いのかしら……)


エヴァンからのお願いを断れない自分に呆れの溜め息をついて、アイリスは差し出した『なんでも券』を受け取った。


「……全部を話すとあまりにも長すぎるから、とりあえず、エヴァンが知りたそうなことだけ話すわね」



◇◇◇



それからアイリスは、淡々と語り始めた。


一番初めのアリアの人生でのこと、そのときからクリフが誰よりも大切な存在であること、何度も転生を繰り返してきたこと、今の人生はやっとクリフと結ばれるチャンスであること。


ひとつひとつの転生人生まで話すと膨大な時間が必要になってしまうので、かいつまんでの説明だったが、それでもやっぱり長い話になってしまった。


しかし、エヴァンは長い夢物語のようなアイリスの話を、最後まで黙って静かに聞いてくれた。


「……とまあ、こういうことよ。あなたが知りたかったことの答えになったかしら?」


アイリスが尋ねると、エヴァンは小さな声でぽつりと呟いた。


「……クリフはずるいよ。そんなにも深く、アイリスの心に入り込んでいるなんて」

「え……ずるい……?」


予想外の感想にアイリスがぱちぱちと瞬きをすると、エヴァンが今度はキッと眉根を寄せた。


「それに、酷いよ。花祭りの日に、アイリスを無視したうえにセシリア嬢と婚約するなんて。僕ならそんなこと絶対しない」


エヴァンは優しい子だから、アイリスに同情してくれているのだろう。イーサンの仕打ちに憤慨するエヴァンをアイリスが穏やかになだめる。


「向こうにも事情があるのよ。皇族っていろいろ面倒な立場だろうし、彼も困っているのかもしれない。それに、花祭りの日はちゃんと話せなかったから、改めて会って話をしようと思ってるの。孤児なら近づくことすら難しいけど、公爵令嬢だったら会いやすいでしょう?」


にこっと微笑むと、エヴァンはなぜか落ち込んだように表情を曇らせた。


「……そっか、そもそも彼と会いたくて僕たちに近づいたんだものね」

「あっ……それはたしかにそうだけど、今はそれとは別にエヴァンと家族になれてよかったと思ってるし……!」


もしかしなくても、エヴァンを傷つけてしまったようだ。

慌てて弁解するが、どう言い繕っても取ってつけたような言い訳に聞こえてしまう。


「ごめんね……やっぱり私の話なんてしないほうがよかったわ。せっかくのお誕生日なのに」


アイリスがしゅんと項垂れて反省する。

すると、エヴァンが優しい手つきでアイリスの頭を撫でた。


「ううん、アイリスのことが知れてよかったよ。……それに、自分の気持ちにも気づくことができた。だから、最高の誕生日プレゼントだったよ」

「そ、そう……?」

「うん。ありがとう、アイリス」


アイリスの髪を撫でていたエヴァンが、そのままぎゅっとアイリスを抱きしめる。


(そんなに嬉しかったのかしら……?)


初めての抱擁に戸惑いながらも、秘密を共有する家族ができたことで少し安心したアイリスは、大人しくエヴァンの腕の中に収まっていたのだった。


転生魔女が運命の恋人との前世の約束を叶えるまで

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