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まろちゃんはどうして僕の気持ちには気づいてくれないんだろう。
同じグループで、ずっと一緒にいて、何度も伝えようとして、何度もやめて――
「また、傷つけられた顔してる」
気づけば、隣にはりうらがいた。
「……僕がまた期待しちゃっただけ。ばかだよね」
「ううん。ばかなんかじゃない。――でもね、初兎ちゃん」
りうらが僕の手を取って、自分の膝の上に引き寄せる。
座ったまま抱きしめられる体勢になって、顔が近すぎて、ドキドキしてしまう。
「もう、まろなんか忘れちゃおっか?」
「……無理だよ。そんな簡単に……」
「ううん。簡単にしてあげる。――俺が、全部、忘れさせてあげる」
ふわっと笑って、りうらはキスを落とした。
頬、額、まぶた、唇――次々に。まるで「ここも俺のもの」って刻印するみたいに、優しくて、でも逃げられない。
「ね、もっとしていい?」
「り、うら……」
「ねぇ、初兎ちゃん。俺のこと好きって言わなくてもいい。まろのこと、完全に忘れられなくてもいい。
でも、今だけ俺に甘えて?」
言葉が、もう届かない。
キスをされるたび、苦しかった気持ちがやわらかく、甘く溶けていく。
「ほら、こんな顔できるの、俺の前だけなんだよ?」
「……忘れられなくてもいいの?」
「うん、いいよ。それに俺、キス魔だから。初兎ちゃんにしか発動しないけど」
僕はりうらの腕の中で、抵抗する力もなくなっていった。
まろちゃんのことを思い出すたびに、切なくなるのに――
今、キスされると、それすら忘れてしまう。
「……ずるいよ、りうら」
「うん、知ってる。ずるくてもいい。初兎ちゃんが泣かなくなるなら、俺、なんでもするよ」
その言葉が、嘘じゃないって思ったから――
僕は目を閉じた。次のキスを、待つように。