テラーノベル
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これを恋と名付けてしまったら
Please, just in my dreams 。
アメリカさんの雨と夢と恋の話
米→(←)英 想定で書いてますがかなり
味音痴寄り。 特別腐表現はありません。
ニューヨークにだって雨は降る。俺は水が滴る窓を眺め,大きな雨音を聴きながらいつ帰宅を出ようか考えていた。今日は紙の資料があるから濡れたら困るなぁと資料を整理しながら部屋の外を見る。地面を思いっきり穿つ雨粒はどこか銃弾の音に聞こえて脳裏に過ぎるのはあの日のこと。
「…イギリス」
…雨がこんな気分を連れてくるから,あの人はいつもあんな感じなのだろうか。あの人はずっと雨の中のような気がする。どこかきつくて,意地悪で,何かを抱えていて。でもどこか…優しくて。輝きというものはシミの様に張り付いてもう何百年も剥がれない。こんな事を考えてしまうほどにね。こっ恥ずかしくなって席を立つ。どうせもう少しで止むし,傘を借りて家へ帰ろう。このまま空を見ていたら,どうにかなってしまいそうだ。
家に帰ってソファに雪崩込む。天気予報を見るとここ一週間は雨が続くそうだ。俺は少し顰めてテレビのリモコンを消した。仕事がめんどくさいとか,憂鬱だなとか,言い訳のようにぽんぽんと言葉が出てくる。本当はわかってるだろ,考えたくないからだ。雨が似合うあの人のことを。別のことを考えようとしてもあの人の存在が色濃く滲む。…こんな事を考えても仕方がない。俺は誰だ?世界の英雄,アメリカだろう?このままの気持ちで生活など出来るわけが無い。ニューヨークが晴天になったらあの人へ会いに行こう。たったの8時間で会える,昔とは違うんだ。曇り空の下のあの人はいつも嫌そうな態度をしながら迎えるけど,次はどんな反応するかな。お土産は何を持っていこうか。あの人の焦げた茶菓子はなるべく食べたくないな。そう口に出すと思わず笑みがこぼれて心が少し軽くなる。高揚した気分のまま仕事を片付ける。仕事が終わらなかったら会いに行けないからね!そんなこんなで何時もより仕事が早く終わった俺は早めに布団に入った。
…降るしきる雨,ここは何処?雨音の中に銃声が混じる。足音や喧騒。少なくとも現代のものではない。少し経った後,俺は答えを見つけた。
『…撃てるわけねぇだろ、ばか…。』
嫌なほど理解してしまう。染み付いてしまった重くて痛い記憶。…きっと夕方の雨のせいだ。そうに違いない。こんな夢二度と見たくないのに。頭の中が澱んでいくうちに後ろから誰かが忍び寄って耳元で囁いてきた。
『…ねぇアメリカ,彼が雨の中にいるんじゃなくて,君が突き落としたんじゃない?あの日の雨に。』
『…っ!!違うっ!!』
反射的に大きい声を出して目が覚める。額に汗は滲み,目頭には涙が溢れていた。俺が,あの人を突き落とした…?いや、違うだろ。あの人はずっと、ずっと、!…何が違うんだい?俺はあの人を傷つけてあの日,あの人を彼処に置いていてった。全てが事実として自分に突き刺さる,嫌だ嫌だ嫌だっ!!気が動転して収まらない。
_俺はその日,仕事を休んだ。
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