バックオフィスを出て、夜の廊下を歩く。
足音だけが響く中で、律は胸の奥のざわめきを抱え込んでいた。
(美咲さんの告白……返事をしなきゃいけない)
(でも……俺の心は、どこを向いてる?)
頭に浮かぶのは、必死に食らいついてくる華の姿。
涙を浮かべても、また立ち上がって笑う横顔。
そして、あの夜――酔いに任せた告白と、背中に感じた温もり。
「……放っておけない」
気づけば、言葉が口から漏れていた。
その想いが答えに繋がるのかは、まだ分からない。
けれど、律の心は確かに揺れ動いていた。
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