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「おまたせ、着替えてきたよ」
僕が先程買った服を身にまとった彼女がそこにいた。細身で色白な彼女は、青と白という爽やかな服装がよく似合っている。
_まるで、少女漫画のヒロインのようだ。
「君、案外センスいいね」
「悩んだからね」
「その割には帰ってくるの早かったね」
崎野が僕の選んだ服を着てほしかったから急いだ、なんて、口が裂けても言えない。
「そういえば、いくらだった?」
「お金はいいよ、元はと言えば僕が悪いし」
「いいの?じゃあ、おとこばに甘えて」
「是非そうして」
そう言ってサイダーを一気に飲み干す。炭酸が喉につっかえて苦しい。
崎野は、カーテンが寂しそうに揺れた窓をみながら言った。
「日が暮れてきた、そろそろ家を出ようか」
久々の祖父の家だと聞いていたから、何かもっと目的があってここに来たのだと思っていたが、そういう訳ではないのか、と意外に思う。
「本当にもういいの?」
「今日は、久しぶりにおじいちゃんの家を見に来たかっただけだから」
崎野はそう言って、先程見ていた、ソファの上に放っておかれたアルバムを閉じた。
「そのアルバム、昔の写真?」
「そうだよ。…見たい?」
「いや…まあ、少し気にはなるかな」
やや躊躇うような間があったが、直ぐに笑顔に戻る。
「…君になら見せてもいいかな、いいよ、見て」
そう言われ、一瞬戸惑ったが、結局アルバムを開くことにした。
「幼少期の写真から、ここ数年まで載ってるんだよ」
「本当だ、幼稚園のお遊戯会も載ってる」
「プリンセスの親友役をやったの。主役を引き立てる存在としてね。」
いつも私はそういう役回りだから、と零す。確かに崎野は、主役として躍り出るなんてことしそうにないのだが、そういった控えめなところが良いと思う。
談笑しながらページを捲っていく。最初は無邪気で可愛らしい子供だったが、段々と成長するにつれ大人びていく。そして、成長する事に、どんどんと写真が減っていく。
そして、ある一時を過ぎてから、一気に空気が変わった。
「…これは」
今までは行事や旅行などの写真が貼られていたが、“中学2年生、春” とネームペンで書かれたページだ。
崎野が、病院のベットに横たわり、弱々しい笑顔でピースをしている写真が貼られている。
いまいち状況がうまくのみ込めず、困り果てている僕を見て、崎野が苦笑いを浮かべた。先程の笑顔とは違って、本心を覆い隠すような、貼り付けたような笑みだった。
「私、病気なの」