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永遠に届く声

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永遠に届く声

15 - fünfzehn .

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2025年05月11日

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執務室の扉がノックされた。「失礼します、陛下」

その声は、いつも通りに響いてくる。


「……ああ、王室教師殿。何か用かな?」


扉が開き、ハイネが入ってくる。

姿勢は正しく、目線もブレない。

表情も、声も、語調も――

何もかもが、いつもの彼だ。


けれど、ヴィクトールは知っている。

その穏やかな仮面の下に、

昨夜、自分の胸元で震えていたあの体温があることを。


「王子たちのレポートを、お持ちしました」

「……うむ。ご苦労だった」

「レオンハルト王子は、とてもお勉強を頑張っていて…」


事務的な会話が交わされるたび、心が冷えていく。

まるであの夜など存在しなかったような、完璧な距離感。


――君は、強いな。


「……何か?」


ふと、ハイネがこちらを見つめた。

一瞬だけ目が合って、その奥に、確かに何かが揺れた気がした。

でも、次の瞬間にはまた、何もなかったかのように背筋を正す。


「いや……何でもないよ」


言えなかった。

「もう少し、君の声が聞きたい」とも。

「夢の続きに戻ってほしい」とも。


その代わりに、心の中でだけ名前を呼ぶ。

昨日の夜のように。


――ハイネ。


どうして君は、

何もなかったような顔をして、そこに立てるんだ。


どうして私は、

こんなにも苦しくなってしまうんだ。


扉が閉じる。

ハイネが去ったあと、ヴィクトールは椅子に深く身を沈めた。


「……夢に、閉じ込めておけばよかった」

それは、王の言葉ではなかった。

ひとりの男の、取り返しのつかない、後悔の声だった。

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