俺がオドオドしながら先生の顔を下から覗いた。
「…勘が鋭いな?」
「…」
「…」
先生の言葉が重く感じた。
俺とサーフィーは言い返せない。
…圧倒感に押し潰される。
「四十五人」
「…え?」
「四十五人、今さっき殺めた。」
「…」
先生の手元には赤く染まった剣があった。
「なんで…そんなこと…」
俺が言うと先生が
顔を近づけて答えた。
「恨みがある。魔王にも、魔族にもな。」
「え?」
「この国の魔王は笑いながら俺の母を殺めた。
この国の魔族は見世物にされてる母を見殺しにした。」
グッと剣を強く握ってそう言った。
俺の体が微かに震える。
「せんせ…」
「分かるだろ?お前の兄弟みたいに恨みがあるんだ。
復讐しなきゃ気が済まない。」
先生が俺とサーフィーの肩を掴む。
「ここは壊す。お前も執刀に慣れたんだ。
トラウマも克服できたろう。
俺もここ壊せばトラウマもパーだ。一石二鳥。」
「サーフィーもそう思うだろ?」
先生の言葉にサーフィーが冷たく言う。
「正直、母さんとかどうでもいい。」
「ドロップ(母)とは血が繋がってないし。
どっちかと言ったらサーガラの方が繋がってるもん。」
「…お前っ」
「兄ちゃんはグーロともドロップとも
血が繋がってるもんね?俺とは違うんだ。」
「サーフィー…」
俺が動けなくなっていると
サーフィーは続けた。
「あ、クルルは兄ちゃんについて行くんでしょ?
俺はついて行かないけど。クルルは
どうせ兄ちゃんの方に行くよね。」
冷たい声で俺にそう言った。
先生が怖い顔で俺を睨みつける。
(俺はどっちの味方をしたら…)
一生懸命考えたが、だんだんと呼吸が荒くなった。
俺の判断次第でどうなるか…分からない。
「せ、先生…。さすがに関係のない魔族を殺めるのは…
その…どうかと…」
「は?眼の前で見殺しにされたんだぞ?
その味方をするのか?」
「ひっ…すみません…」
圧をかけられて
俺は何も言えなくなってしまった。
「兄ちゃん、クルルごときに圧かけるの辞めなよ。
クルルが可哀想でしょ?それでも医者?」
サーフィーが先生に攻め寄る。
俺はどんどん喋れなくなり結局黙りこくってしまった。
「クルルに関係ないでしょ。
分かったんなら一人で復讐しろよ。」
「…確かにな。分かった。」
先生はそう言うとペストマスクを取って
飛び去って行った。
「クルル、大丈夫?」
「…大丈夫じゃねぇよ。
兄弟…先生までもに裏切られるとは。」
俺が近くの岩を壊した。
「いっそのこと俺ごと…この世界ごと壊してやる。」
「クルル!それは辞めたほうが…」
「黙れ!お前ごときに言われる筋合いはない!」
俺はそう叫び世界ごと破壊しようとしたそのとき。
「辞めなさい。」
空から声が聞こえた。
「誰だよ…」
俺が言うと大きな花びらのような鱗が
ちらりと一枚降ってきた。
「俺はサーガラ。海王であり八大龍王である。」
「リキの息子よ。破壊行為は辞めた方がいい。」
透き通るような綺麗な声で圧倒された。
「BIRDも考えがある。
君のことを嫌ってるんじゃないよ。」
雲の間からうっすら姿が見え始める。
「それってどういう…」
俺がいいかけたとき、太陽の光でサーガラの顔が
明らかになる。青い鱗にエメラルドグリーンの瞳。
そして目元には赤い模様がある。俺が見とれていると
ヒゲをゆるりと動かしながらサーガラが言った。
「サーフィー。元気にしてた?
米国でもBIRDと仲良く暮らせたかい?」
サーフィーがゆっくりと頷く。
「親父…兄ちゃんとは仲良くできたけど
喧嘩しちゃったよ。クルルも責めちゃったし。」
サーフィーが下を向く。
すると、サーガラは俺のところまで降りてきて
顔をマジマジと見てきた。
「君、名前は?」
「え…えっと…クルル・クルルです。」
「それってBIRDが付けた名前?」
「え、えぇ。確か。」
「へぇ。良い名前だねぇ。それでBIRDの助手か。」
「いいじゃん。BIRDに相応しいね。
マジでグーロみたい。」
そう言いサーガラがニヤリと笑う。
「サーフィー。BIRDにどうしてほしい?」
「1、魔界を壊す計画を辞めさせる。
2、魔界を一緒に壊す。 3、何もしない。」
「だから何もしないってば。関係ないんだから。」
そうサーフィーが言ったら
サーガラが腹を抱えて笑った。
「あーははは!俺も前同じことを言ったよ!
お前は所詮俺の子だ!」
「え?」
サーフィーが唖然とする。
「じゃあクルルはどうする?
後はお前の意見を聞いてやるよ。」
「えっと、俺は__」
「魔界を壊す計画を辞めさせたい…です。」
俺がサーガラの目を見て答えると
サーガラは微笑んだ。
「ふーん。理由は?」
「尊愛してる先生を悪者にはしたくないからです。」
「いいね。そういえば、それグーロも言ってたな。」
そう言うとサーガラがサーフィーの方を見て言う。
「分かったろ?俺の血を多く引いてるって。」
「うん。よーく分かったよ。」
サーフィーが頷く。
「じゃ、クルル。BIRD探しに行こっか。」
サーガラがヒゲを揺らしながら言う。
「そうですね…。でも俺、先生とまともに
顔合わせられない…圧かけられちゃったし。」
俺が答えるとサーガラが大きな口を開いた。
「安心してくれ!BIRDは今さっき後悔して
お前らの無事を一生懸命祈っていた。
それで俺が来たわけよ。」
尻尾をブンブン振りながらサーガラが言う。
「ほ、本当ですか?俺のこと恨んでたんじゃ…」
「んな訳あるかい。アイツからしてみたら助手だぞ?
助手…しかも名前をつけた奴を恨むかよ!」
サーガラは激しく言うと
俺とサーフィーに優しく言った。
「ほら、早く行くよ。」
「BIRDが待ってるはずだ。」
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BIRD=グル