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サーガラと共に魔界の街を探し歩いていた。
「先生ー!おーい!」
岩の下から市場まで探したが何処にも居ない。
「うーん。もしかしたらBIRDは魔王城に行ったのかも。」
サーガラの言葉に
サーフィーも『うーん』と黙ってしまった。
「ねぇ。もしそうなら魔王城行ったほうが良いですよね?」
俺が言うとサーガラが悲しそうに言う。
「前、色々あって魔王城に入れないんだよ。」
「多分サーフィーも入れないし、クルルも入れない。」
俺はこのとき『もう駄目だな』と思った。
天を仰いで諦めてくれることを願うしかない。
「あ、一つ方法がある。」
そんなときサーガラが思い出したように言った。
「魔王の妻だよ。前、BIRDが手術したでしょ?」
「それを理由に魔王城に入れてもらう。」
サーガラの言葉にサーフィーが反応する。
「やり方汚くない?前も脅した気がするんだけど。」
「仕方ないだろ〜?俺はそういう奴だし。」
そう言うとため息をついて立ち上がった。
「魔王城まで数kmあるけど飛んでいこう。」
「はぁ、マジかぁ…歩き疲れたのにぃ〜」
ぐったりとしながらも
体を伸ばし魔王城まで駆ける。
やはり先生だって考えがあるし母親が殺められたんだ。
よく考えたら医者としてもそれは許せないんじゃないか?
もしかしたら、自分が手を出せなかったって
後悔してるんじゃないか?…そんな考えが頭をよぎる。
市場から駆け出して8分ほどすれば魔王城の旗が見えた。
王冠を被ったコウモリの旗だ。
「サーフィー!クルル!隠れて!」
急にサーガラに強く言われ
答える暇もなく地上に投げ出された。
何事だと思い辺りを見回すと
小さな戦闘機が空を飛んでいた。
「サーガラ!大丈夫なの?」
「大丈夫さ。今、機械の中に海水を入れた。」
「もう機能するはずないし、魔王城まで走るよ!」
上から落ちていく機会を横目に
急いで魔王城の門まで走った。
「すみませーん!入れてください!」
「あぁ?誰だテメェ。」
「サーガラだよ!覚えてる?」
「…チッ。入れ。」
「やったー!お邪魔します!」
六本の手を持った獣に道を通され魔王城の中に入った。
「ごめんくださーい!海神と破壊神の息子です!」
サーガラが魔王の部屋の扉をノックしながら叫ぶ。
「…なんだ。」
扉が開くと
王冠を被ったコウモリの姿をした魔王が出てきた。
「BIRD…じゃなくて、グル知らない?」
「あぁ。アイツか。散々暴れてどっか行った。」
「え?暴れたんですか?」
俺が思わず声に出すと魔王は
一瞬驚いた顔をして言った。
「…!部下は一人残らず生き残ってないさ。
アイツは死体を持ち帰ってそのまま城から左に行った。」
親切に地図を持ってきて教えてくれた。
あの契約を押し付けてきた魔王だとは思えない。
「魔王さん。質問なんですけど。」
「どうした?」
「先生に”生贄となる契約”を押し付けて
先生を生贄にしましたよね?」
俺の言葉に魔王が呆然とした。
「知らない…俺がいつそんなことをした?」
「は?契約書送ったでしょ?」
「送られてない。それに医者は重要視されているから
俺が代償を取るようなことはあり得ない。
もし契約に身代わりなどがあるなら幹部だ。」
魔王が真剣な眼差しで言う。
嘘とは到底思えなかった。
「…けど部下は一人も生き残ってないんなら
一緒に死んだんじゃないの?」
サーフィーが言うと魔王が答えた。
「一人だけ幹部が失踪している。
だからそいつが犯人だと思うのだが…。」
「そう!その幹部の名前はなんなの?」
「その幹部の名前は…ギリアグリフ。」
後ろにある写真を指差し言った。
鳥の頭に色黒い男の体をしている。
「幹部なのだが元魔王でな。
会議などのときは魔王代理として行っている。」
「ほう…成る程。」
つまりギリアが魔王を名乗り
契約の代償を先生に向けたというわけだ。
「じゃあギリアを探したらいいんだよね。
居場所の手がかりとかない?」
サーガラが身を乗り出すと魔王が顎に掌を当て少し考えた。
「ギリアは、よく海に行っていたから海に行けばいい。」
「確か…西海だ。」
「西海?なら俺の弟に連絡してみる。」
サーガラはそう言い服の裾から紙を出した。
どうやら手紙を書いて術で送るらしい。
【敖潤(ごうじゅん)へ。
息子の兄を契約の代償にした魔物が
お前の海に居る。だから捕まえて連絡しろ。】
そう手紙に書き、折り曲げて
サーガラが息を吹きかける。
「ふー…」
すると紙が宙に舞い、やがて消えた。
「アイツのことだし5分もしないで返ってくるよ。」
腕を組んで待っていると返事はすぐに返ってきた。
【お兄様へ。
届いた瞬間、部下に探しに行かせました。
見つけ次第連絡をさせて頂きます。】
丁重な言葉で書かれていて驚いたが
サーガラは満更でもない顔をしている。
「うんうん。多分幹部はなんとかなるでしょ。」
「魔王、色々ごめんね!お邪魔しました〜!」
サーガラは礼をした後
俺とサーフィーを連れ、魔王城の廊下まで連れて行かれた。
「?」
「君たち…忘れてない?
BIRD探さないといけないじゃん。」
「…あ!」
忘れていた。急いで先生を探さなければ。