──────いえもん視点──────
あの彼女──────ぐさおの姿は見たことがある。と、言っても見ていただけだが。
部屋全体を闇に変えることが出来るほどの魔力量。撤退のときを冷静に対応できる判断力。彼女はぐさおよりも頭が良く強いと予想できる。
久しぶりに動くため、全力を尽くせるとは到底思えない。しかし、強敵との戦いは楽しいもので、胸が踊る。そんな感情を表に出さず、俺の顔には微笑を貼り付ける。無表情よりはいいだろう。
「ぐさおのそっくりさん。あなたはだぁれ?」
そういえば彼女は目を見開いて俺を見つめる。そんなに俺の姿は珍しいのだろうか?死神の加護を受けられるなんて相当だ。
彼女は斬られた腹を手で撫で、血を見つめる。彼女の血は赤色ではなく、灰色のような黒色のような、そんな曖昧な色だった。
そんなところを眺めていたら、突然背後から黒い剣のようなものが俺の背中めがけて飛んでくる。…全く舐められたものだ。その程度を避けられないと思われるなんて、少しショックだ。
そんなことを言いつつその黒い剣を光属性で撃ち落とす。しかし、攻撃をするということは敵対する意思があるということ。これによって遠慮はいらなくなり、暴れ放題となる。
「無言で攻撃するのはセンスないですね〜。攻撃ってい言うのはこうやるんですよ…♪」
やれやれ、なんて思いつつ、件を構え直す。そして一瞬で距離を縮め、確実に殺すために心臓と脳を狙う。あれが二つ同時に潰せれば人外は回復できなくなる。俺は小さくつぶやく
──────チェックメイトだ。
「だめですッ!!!いえもんさんッッ!!!」
突然大声が部屋内に響く。その声によって俺の行動はとめられ、その間にあいつに逃げられる。俺は無言で剣をしまい、彼女を見つめる。彼女──────めめの制止がなければ、確実に仕留められたところを止められたのだ。それに久しぶりの戦闘は楽しかったのに止められて非常に残念だ。そう思ってはいるものの俺の顔から微笑は崩れない。
「…なぜ、止めたんですか?」
俺の純粋な疑問。あれさえなければ菓子さんが傷つくことは無かった。腹を斬られる痛覚なんて普通ではまず体験しないし、体験したとしてもそれは死刑宣告くらいではないだろうか?腹を斬られるのは死ぬに死にきれなくて、ずっと苦痛を味わうのだ。それを、あいつは、堂々とやりやがった。俺は仲間を傷つけられるのが1番腹立つことなのだ。今、体の主導権を握っているうちに敵を始末しておきたかったのだが。
「彼女はぐさおさんの姿に酷似しています。あの人を倒すことによって間接的にぐさおさんを傷つけないようにしたいんです。」
「…なるほど」
…そんなので納得できるわけが無い。酷似しているから?だからなんだ、こちら側に敵対した時点で敵は敵だ。どんなやつだろうが潰す。それが我々であったはずだ。いつからこんなにも人懐こく、損切りのできない性格になってしまったのか。俺は少しの不信感を全員に感じた。
「ん…ッにゃぁ…ッ」
そう呟きながら菓子さんが起き始める。もう再生したのか、なんて少し思ったが、それよりも無事で何よりだ。
茶子が真っ先に菓子さんに向かっていく。
「お”き”て”よ”か”っ”た”ぁ〜」
茶子はそのまま菓子さんの近くで泣き崩れ、菓子さんに抱きついている。それを見た菓子さんは、ちょっと、血がついてるから、なんて言いながら満更でも無い表情をうかべる。
めめさんと俺は見つめ合い、クスッと笑う。
仕留められなかったことは残念だったが、被害者ゼロということで…あれ?そういえばなにか忘れているような?なんて思いつつ後ろを見れば、気絶したメテヲさんがそこにはいる。
気絶した理由がよく分からなくて、首を傾げるが、とりあえずヒールを施しておく。
魔法はイメージだ。精神はどこら辺が悪いのか、原因はなにかを特定し、それが治るイメージを行う。そうすれば、外見に傷がない場合も治すことが出来る、初歩的な方法だ。
メテヲさんの表情が先程まで苦しそうだったのが笑顔へと変わる。しかし、起きることはなく、小さな寝息をかきながら眠りにつく。なんもやってないのに疲れたのか、なんて辛口の評価をしつつ、全員の無事を確認する。
「皆さん異常なしですね!」
「いや…」
「いえもんさん…ですよね?」
「お前が異常だわッ!!!」
全員の顔色や、傷がないことを確認し、そう宣言すれば、ブーイングが起こる。主に俺に対してだった。そこまでして気になることだろうか。知り合いが突然銃ではなく剣と光属性を使い始めただけだろうに。そこまで言うことではないような気がする。
なんて思いつつも、さらさら説明するつもりは無い。非常にややこしいし、彼らが知る必要は無いのだ。
俺は海に身を投げるような感覚に陥る。また、戻るのだ。俺は彼のおまけ程度の存在で、全てを知られる必要は無いし、教える義理もない。
そのまま俺としての意志を手放し、また、あの空間へともどり込む。さて、次出られるのはいつになるのやら。
──────君の存在を認知した。
君は、この世界において…我々にとって非常にめんどくさい。イレギュラーな存在なのだ。
だから、全員から君が存在した記憶を消去する。バイバイ、二度とかえって来ないでね?まあ、帰ってこさせないけど。じゃーねー
──────『勇者』さん?
ここで切ります!!今までの物語で伏線張りすぎて回収だりぃなって思い始めました!物語内で私の見落としによって回収されないものもあるかもしれません。先に謝ります。すみませぇぇぇえええん!!!そしてほぼ確実に100話までいくんだろうな、なんて考えてます。
いやー伏線を明かしちゃいました…。この伏線は最後に回収する予定でしたが、そろそろ回収し始めないと間に合わなさそう、ということなので伏線回収出来そうな場所では積極的明かしていきます。あ、この伏線回収は見ている人のみでしか分かっていなく、物語で気づいているのは記憶を全員から消した人のみです!!少しややこしいのはご了承ください!
あ、今回は小ネタ?を使いました!(今回かは怪しい)菓子さんがまるで死んだ、みたいな描写を前回書いたと思うのですが、あれは猫の防衛本能ですね。死んだフリです。そのため、実際はより早く再生してましたが死んだフリ…まあ、ほぼ仮死状態でした!うん!こんな感じです!
それでは!おつはる〜
コメント
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急にすごいややこしくなってきたな
ヒールがビールに見えてビールをmtwさんに垂れ流してるのかと思ってしまった…
さいッッこ~でしたぁぁ、、 前の話何故か昨日読めなかった、、悲しい、、