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まなこ〜友
117
#ますしき
T
5,800
いろいろあった休み明け。
いつも通り仕事をしていると、ふと昨日のことを思い出した。
『夏帆ちゃんのことが気になる』
そんなことを玲くんに言われた昨夜。どう考えても嘘だとわかっているのに、なぜ嘘をついたのか、その理由が気になって仕方ない。
最近、身の回りでいろいろありすぎて、何も集中できない。
タイピングしていた手を止め、一息つく。少し休憩がてらスマートフォンを手に取ると、雅から連絡が来ていた。
«昨日様子変だったろ、玲と何の話してた?»
雅が私の様子を気にするなんて、今まであった?
数える程度もなかったんじゃないかと思うのに、なぜかそんな男が気にしていると思うと、少し笑えた。
今は正直、雅との関係だけでも手一杯で、玲くんのことまで考える余裕はない。
玲くんは誠実な人だと思うけれど、私との恋愛の相性は最悪だろうし、そもそもお互いに好きになることもなく、恋にすら発展しない気がする。
軽く溜息を吐き、雅にどう返信するか迷った。
玲くんのことを話せば、余計に面倒なことになりそうだし、職場の関係もこじれてしまうかもしれない。
同じ職場で、私が昨日ああいう態度を取った理由を知らないのは、玲くんから雅に何も伝わっていないからだろう。
でも、雅もそこまで鈍い男ではないから、時間の問題なような気がした。
«大丈夫よ、何もない»
そう返事を送ったあと、しばらくバーには行かず、二人に会うのも控えようと決めた。
そんな私は、何かに呪われているのだろうか。
会いたくないと思っている時に限って、どうしても出会ってしまう。
仕事終わり、少し買い物をして帰ろうと街中を通り抜けたら、今から出勤するであろう男と出くわした。
もちろんあろう男とは、雅だ。ここまで引き合わされるともはや何の反応もしたくない。
穏やかな生活って、どこへ消えたのだろう。
私の生活って、こんなに誰かに踏み込まれるものだった?
最近、私の生活に常にこいつがいる気がするのは、気のせい?
頭の中でグルグルと考えを巡らせていると、目の前の雅は驚くでもなく、当たり前のようにそこに立ち、当たり前のように話しかけてくる。
「夏帆、今からバー来んの?」
「行かない、明日も仕事なんだけど」
そう答えても、手首を掴んでくる雅。
逃がす気もなさそうで、抵抗するのも面倒だった。
何もかもが面倒で、ただ好きにしてとされるがままだった。
「てか最近お前以外の女切ったんだけど」
「へー、何で?」
興味はないけれど、一応聞いてみる。雅が私以外の女性との関係を切ったからといって、私には何の関係もない。
その時の私は、両親へ挨拶に行った時の自分の発言や、それに対して雅が言ったことすら覚えていなかった。
『もう諦めた、あんたも寂しいんでしょ。時々だったら慰めてあげる』
『お前が遊んでくれるなら他いらないかも、お前に勝てる女なんか居ないよ』
こんな会話も、覚えていられないくらい、正直いろいろありすぎて疲れていた。
「だって夏帆が遊んでくれるって言ったじゃん?」
「言って……!」
いや、言った。確かに言った。
雅も「お前だけでいい」とか何とか言っていたけれど、あれは完全に勢いだったし、その場のノリだと思っていた。
まさか、こんなふうに真に受けられているなんて思ってもいなかった。
何、この男。空気も読めるし、冗談も通じるくせに、どうしてこういうところだけ都合よく受け取るの。
絶望感か呆れか、何とも言えない感情が込み上げてきて、思わず両手で顔を覆う。
「とか言いながら今日、俺もバー休みなんだよね。どっか飲みに行くだけだったし、家行って良い?」
「だから明日仕事なんだってば!」
そう言っても、腕を引かれ、すでに私の家の方角へ向かって歩き出している。家を知られているせいで、この男には迷いがない。
「人の話を! 聞け! 警察に通報するわよ!」
「何て言うの? 人の話聞いてくれないんですけど〜って?」
「バカか! 本当に!」
言い合いになっても、掴まれた腕は一向に緩まない。
あの日以来、絶対に家には入れないと決めていた。それなのに、このまま押しかけられるかもしれないと思うと、背筋が凍る。
明日も仕事がある。この男の気まぐれな行動に振り回されている余裕なんて、もうない。
叫び出したい衝動を必死に抑えながら、奴に引っ張られていった。
なぜ自分の家に帰るはずなのに私が引っ張られてんだよ。
というツッコミはもちろん心の中でした。
コメント
1件
もう雅、相変わらずクズで最高だな……!「家行って良い?」ってスルーされてる夏帆の叫びに笑ったわ。人の話聞け警察呼ぶぞ。でも「お前だけでいい」とか言われてるところ見ると、勢いだけじゃない気もするし、この先どう転ぶか気になって仕方ない。続き読みたい🔥