甘い喧嘩

甘い喧嘩

思いっきり手を組んで上に伸ばす。

硬くてうるさいスーツテストは終わり。これから少し第1の方で待機。それから書類をまとめて帰宅。はやく帰りたい。体は完全に疲れ切っていて、冷たく、硬いベンチに静かにもたれる。

ほんまに、…あんな回りくどい事せんでもすぐ斬ればええのに、。わざと集めてからとか……アホやん、。ほんまにあいつのせいでむっちゃ疲れた、。。

意識せずとも口からため息がでる。

このまま家へ帰って寝たらもう明日。

誕生日??そんなガキちゃうから浮かれへんで。

カフカに言った言葉が蘇る。いちばん浮かれてるのは自分かもしれない。でも鳴海さんはいないと思う。今日も1度も会ってない。どうしよう、、このまま何も無くて今日が終わる?そして何も無くて明日を迎えて、何も無く明日も終わってしまう?

不安、焦り、寂しさ、動揺

脳内も心も全部パニック。

壁に頭を預ける。

メール、返してくれへんの?。僕、今第1居ますよ、、用事あってやけど、ここまで僕から来ましたよ。明日も来ますよ。鳴海さんからは来てくれへんの?ずーと待っとる。あの時、ほんまにごめんなさい。心配して言うてくれたんのに、僕、そんなん聞かんかったから、。。鳴海さんの心配、受け止められへんかった、。全部僕のためやったのに、……。すごく後悔してます、。鳴海さんと会えへんだけで、、話せへんだけで、むっちゃ辛いねん、…ほんまに、頼みます、……もう一度、もっかい会ってちゃんと話がしたい、。

後悔が込み上げてきて、今すぐにでも口と目から溢れ出そうになった。自分でしてしまったことなのに、…。

明日の会議、手を取ること、できるかな、。。

「宗四郎」

「ゎっ、……あ、長谷川さん」

「これ、資料だ。」

「まとめるのはこちらでやっておこう」

「目を通して、名前だけ頼む」

「えー、いいんですか、??」

「ほんならお言葉に甘えて」

資料など真剣に見れない。ざっと目を通して紙をめくっていく。それから渡されたペンで名前を書き、長谷川さんに返却。

「ありがとうございます」

「あぁ」

「もう帰宅か?」

「はい」

「気をつけてな」

「ありがとうございます」

〜

カチャ、……

寂しく鳴るドアノブの音。

「ただいま、」

全くもって、全てが昨日と同じ。何も無くて、何も無くて、。本当に変わらない。一日を無駄に過ごした気がする。明日、どうしよう。

プライベート用端末をポケットから取り出す。相変わらず寂しい画面。[既読]がつかないだけでこんなにも変わるのか。

端末の画面を暗くして、無造作にソファに放る。

はああ、どうなってまうんやろか、。。、

2人で過ごせるために、というものでやや広い家。1人だと思った以上に広すぎる、もったいないぐらいに。はやく帰ってきて、。

不意に目元には涙がたまる気がした。、どうせ今日も誰も居ないのだから、、、せめて今ぐらいは自由にしてもいいよね。

我慢せず、今日は全てを出した。明日、目ぇ腫れんかなあ、……。。

できるだけの対策をして寝よう。

ねくすと100

またじかい✧·˚⌖. ꙳