TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

教令院の司書は大変な仕事だ。莫大な本の管理をしなければならない。その中には機密事項があったり様々なので大人数ではできないし教令院で信頼している人は結構少ないしその人達も忙しい身なので自動的に私1人で管理をする事になっていた。



「司書さーん!」


「はいはい、何?って……旅人にパイモン!」



また名前を呼ばれた…と読もうと思って探し出した1ページも進んでない本を机に置いて声のする方へ行けば旅人とパイモンが居た。



「久しぶり!!フォンテーヌでの噂は聞いたよ!」


「へへっ、おいら達有名人だな」


「フォンテーヌでシェルの話を聞いたらシェルに会いたくなっちゃって来ちゃった」



照れたように笑う旅人は相変わらず可愛い。

私は旅人とパイモンをまとめて抱きしめて



「私も2人に会いたかった!!」



といえば優しく抱き返してくれるのだからつい、気が抜けてしまう。



「そうだ!せっかく会えたし今日の夜予定空いていたらおいら達とご飯食べないか?」


「シェルも来てくれると嬉しいな、シェルの分は私が奢るから」


「え、悪いよ。逆に私に奢らせて?」


「ってことは……」


「ふふ、あなたの誘いを断るなんてことしないよ」



くすくす、と笑っていれば私を呼ぶ声がした。



「あ、仕事に戻らなきゃ。じゃあ、後でランバド酒場でいい?」


「もっちろん!」


「おっけー!仕事終わったら直接向かうよ!」


「ああ!楽しみにしてるぜ!」



新しくできた今夜の予定に頬を緩ませながらも、今度は何があったのかと呼ばれた理由を想像しながら仕事に戻った。




定時。私は仕事を押し付けられる前に、教令院にある自分の仕事部屋の扉に『本日不在』の4文字を掲げてはスキップでもしそうな勢いでランバド酒場へ。



「旅人達と久しぶりにご飯だ〜!」



思わずにまにまとしてしまうのは仕方がないだろう。


私の表情がすんっ、となったのはそれから少ししてからのこと。



聞いてないよ!?まさか……まさか…



「旅人達と3人、じゃなくてカーヴェにアルハイゼンまで居るなんて……」


「ついさっき会ったんだ。シェルとご飯食べにきたのって言ったらアルハイゼンが合席してもいいかって聞いてきて、」



楽しみにしてたのに、ごめんね?と申し訳なさそうにする旅人に文句を言う気はさらさらない。あるとすればアルハイゼンにだけだ。



「アルハイゼンの分は奢らないからね」


「安心してくれ、今回は俺が全員分奢ってあげるつもりだ」


「え……き、君がか?」



信じられないと言いたげに目を見開くカーヴェにチラリと視線を向けるだけのアルハイゼン。


まあ気にしなければいいか、と旅人の隣に座れば空いている方の私の隣に当然のようにアルハイゼンが座ってきた。



「……」


「文句でもあるのか?」


「いーや?無いけど?」


「ならばいいだろう」



負けた気がした。だが文句を言うのは我慢した。私偉い。



酒が少し入れば案外アルハイゼンとカーヴェのことは気にならなくなった。



「シェル、これも美味しいね」


「本当だぞ!」



おすすめした料理を食べては美味しい、と目を輝かせてくれる2人を見て私は頬が緩むのを感じる。



「シェル、」


「ん、なぁに?……んぶ、?」



アルハイゼンの呼びかけに答えて顔を向ければ唇に料理が押し付けられる。


食えと??まあ、食べるか……


渋々口を開けて食べる。



「んまいね、酒に合いそー」


「うん、君の口にあったようで良かった」



多分、私もアルハイゼンも酔っていたんだと思う。旅人達が美味しそうに食べてカーヴェと雑談している姿を見ていればアルハイゼンが口を開いた。



「あの件から少しして俺たちスメール人はすっかり夢を見るようになったんだ」


「あの件……ああ、あの事?」



お酒が入っていたグラスを空にしてはアルハイゼンの話に耳を傾ける。


少し前にスメールシティを揺るがす事件を起こして、まあ、無事にクラクサナリデビ様を救出した件についてだろう。



「それで、一つ問いたい。君にとって夢とはどんなものだと思う?」


「……それについては色々な考察ができるね」


「君自身の考えを聞きたい」



酔っ払っていた私は調子に乗ってすぐにアルハイゼンの話題に乗ってしまった。



「私の考え……夢というものは一種の記憶の整理、そして無意識下にある願望を表したものじゃないの?夢についても色々な種類の夢があるけど私は大抵その二つだと思う」


「お、シェルグラスが空いているじゃないか!」


「カーヴェありがとー」

 

カーヴェが酒を注いでくれて、酔いすぎない程度に体にアルコールを入れていく。

 

「ふむ……」

 

何かを考え込むアルハイゼン。

 

「……何を悩んでいるのか知らないけど、今だけでも気楽に考えたら?あなたずっと難しそうな顔をしているし」

 

はい、と酒の入った新しいグラスを渡す。何を考えたのかアルハイゼンはそれを一気に飲み干して、私をまっすぐと見つめていった。



「俺はどうやら君が好きらしい」



思考が停止した。



「……」



少し落ち着け、と自分の眉間を押さえてグラスに残っていた酒を飲み干す。そして周りを見れば、わあ、大惨事。


ど、どうするべき??この状況


何を血迷ったのか私が出した答えは……



「好き、と言うのはいくつか種類があって定義はし難いよね。なぜそう結論つけたのか聞いても?」



一番の悪手だと思う。何をやってるんだと思ったが時すでに遅し



「君は夢というものは無意識下の願望の表れと言ったな」


「言ったね」



それがダメだったのか、と過去の自分を脳内で殴りつつも話を続けさせる。落ち着け……と水を飲みながらもアルハイゼンの話に耳を傾ける。



「俺は、昨日君が子供を抱いている夢を見た」



水を吹かなかった私を褒めて欲しい。そしてカーヴェを見てみて欲しい、固まって口から酒こぼしてるからな???



「そう、それでなんであなたは私が好き という結論に至ったんですか??」

思わず敬語になってしまったのは許してほしい。それほど動揺していたのだ、私は。



「それから、夢の中で君は俺に笑いかけてくれた。その光景を思い出したら不思議と幸福感に包まれた気がするんだ」



もう何も聞きたくない。家に帰りたいまで思い始めた。



「俺の願望は……君と家族になることだと君との会話で結論が出たんだ。家族になりたいと思うほど君を思っている。これは紛れもない愛じゃないのか?」


「ふーーー、なるほどね。それで、その事を私に伝えてあなたは何がしたいの?」


「俺と結婚を前提に付き合って欲しい」



がしゃがしゃーん


ぱりーん


ごろごろ


ばこーん



そんな愉快な音が聞こえてきた。うんうん、落ち着け落ち着け。思考ができねぇよ。



「今思えば、君を教令院から追放しろと言う声を聞けばなんとも言い難い怒りを覚え、君が他の男と話している場面を見れば胸が痛んだ。俺は相当君に惚れ込んでいるらしい」


「そうだね、しかも勝手にイラついて嫉妬しているっぽいね」



全て他人事のように思えてきた。 

どうやって場を切り抜けようかと考えるが、アルハイゼンに右手をするり、と掴まれて手を繋がれてしまうと私の優秀な脳みそはオーバーヒートを起こしそうになる。



「っ……」


「ふ、やっと目が合った」



それはもう嬉しそうに笑うものだから、あ、こいつ本当に私が好きなんだなと嫌でも自覚してしまう。



そして、この状況に嫌悪感を感じていない私もいる。



「……付き合ってみる?」



やられっぱなしなのも癪に障るので私から手を絡めて、にんまりと笑ってやる。



アルハイゼンは驚いたように目を見開くだけ。



「もし、あなたの人生に私が必要だと言うのなら私の人生全部あげてもいいよ。なんだか楽しそうだし」


「お、おい!シェル!?本気か!?」



我に帰ったカーヴェが驚いたように声を上げて、私に問いかけてくる。



「君は少し飲み過ぎだ!!冷静になってくれ!!」


「あはは、そうだね、私今すごく酔ってるのかも」


「シェル、目を覚まして?アルハイゼンだよ?」


「そうだぞ!!水でも飲めよ!!」



旅人達にまで心配させてしまったらしい。おかしいな、そんなに酔ってないと思うんだけど。


3人を宥めていれば、離されなかった右手がきゅっ、と少し強めに繋がれる。



「アルハイゼン?」


「悪いが……俺は先ほどの発言を酔っ払いの戯言と言って無しにすることはできない」


「アルハイゼン!?彼女は酔っているんだぞ!?」


「ああ、俺にとっては好都合だ」


「君ってやつは…!!」


「だから……」



アルハイゼンはカーヴェを気にするでもなく話を続ける。



「自分の発言には責任をとってくれ」


「……ふふ、良いよ?その代わりずーっと私のことを必要としてね。あなたが私に飽きたら捨てられる前に捨ててあげるから」


「ああ、飽きるなんてことはないから安心してくれ。最も、逃す気もないがな」



幸せそうに私の手を握りしめるアルハイゼン。


教令院の書記官に恋人ができたと言う噂は瞬く間に広がった。



「アルハイゼン、やってくれたね……本当に」


「言っただろう?逃す気はないと」



とんでもない人と付き合ってしまったなと思いつつも愛されてる実感はあるのでまあ良いか、と紅茶とコーヒーの準備をする。


なぜ私がアルハイゼンの書記官室に顔を出してこれらの準備をしているかを話すとまた長くなるな。



「君が俺と同じ空間にいてくれるだけで不思議と嫌な仕事もやる気が出るな」


「そう、休憩時間が終わったら私は戻るからね」


「ああ、分かっているさ」



私の淹れたコーヒーを嬉しそうに頬を緩めて飲んでくれるアルハイゼン。私もすっかり彼に絆されたらしい。


「アルハイゼン、」


「なんだ?」


「好きだよ」


「そうか……俺は、愛しているよ」



これはなんてことない、とある日の話。

この作品はいかがでしたか?

33

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚