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アダムとイヴの物語

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アダムとイヴの物語

11 - 第11話 いつかの夕焼け

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2025年03月08日

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俺はさんざん泣きはらした後、あさ美と一緒に帰った。


心配なので家まで送っていくと、あさ美に言われてしまった。

女々しい俺と男らしいあさ美。

俺は情けなかったが、今は一人になるのが怖くてあさ美に頼ってしまった。


「響、藤村先輩と何かあった?」

「なんで?」

「言いたくなさそうだったから聞けなかったけど、そうゆうことでしょ」

「んー」

「言っちゃうけど、藤村先輩のこと好きだった?」


好きだった?

いや、今も好き。


「うん、好き」


もう、いいや。

あさ美なら何言っても驚かなさそう。


それに本当はこの気持ちを誰かに話して、少し楽になりたかった。


「そっか…。あんなに響と先輩仲良かったのに響が避けてるみたいだったから。ちなみにその好きっていうのは…」


「恋愛の好き、ね」


「だよね…。そんで今は2人はどうなってるの?響の気持ちは…伝えたの?」


「その結果、こうなってる」

と、俺は自分の腫れた目を指さす。


「なるほどー、でも藤村先輩も響のこと好きだと思ってたんだけどなぁ」


「後輩として可愛がってくれてただけだろ。それを俺が勘違いしてただけ」


本当のことなんか言えなかったし、ましてや奏ちゃんの昔の話なんて墓場まで持っていくつもりだった。



夕焼け空の帰り道。

少し前までは奏ちゃんと二人で見ていた景色。

あの頃とは違うな。街も景色も。


あさ美は黙っている。

普段おしゃべりなのにな。

さすがに男同士の恋愛話には引いたか。


「響、汚いこと言っていい?」


「汚いこと?」


「今言うことじゃないのも分かってるんだけど…」


「うん」


「あたし、響のことが好き」


夕焼けがいつもと違った表情のあさ美を照らす。


「それって、男としての俺を好きって事?」


「そう、でも藤村先輩のこと好きなのわかってたから言えなかった」


全然気付かなかった。

あさ美を女として見たこともなかったし、俺の生活は奏ちゃん一色だったから。


「響が弱ってる今言うのも我ながら卑怯とは思うんだけど」


「あさ美、俺は…」


「わかってる。藤村先輩の事まだ好きなんでしょ」


「うん、多分当分引きずる予定」


「その引きずる予定の中に、響の生活の中に少しでもあたしを入れてくれない?」


「どうすればいいの?」


「欲を言えば、響の彼女になりたい。でも今すぐには答えはいらないから考えておいて欲しい…」


よく見ると、スクールバッグを持つあさ美の手が震えていた。


そうだよな、勇気を出して言ってくれたんだよな。


あさ美、女の子なんだよな。


この間までの俺だって必死だった。

奏ちゃんを引き止めるために命懸けだった。

好きな人を手に入れたかったら、どんなに無様で醜くても土下座だってする。

汚いことしたって当たり前だ。


「なぁ、あさ美。恋愛すると自分の醜い部分が見えて嫌になることもあるけど」


「うん…そうだね」


「どんな手を使ってもその人を手に入れたいって思うのは悪いことなのかな?」


あさ美が少し考えてから言う。


「普通だよ、あたしも今弱ってる響なら落とせるかもって最低なことしてる」


あさ美が少し笑いながら言う。


「あさ美は最低なんかじゃ…ないよ。今日だってあさ美に助けられた」

「マジで俺、今日このまま独りでいたら気が狂いそうだったもん」


やべ、また涙出てきそう。

やめろって。やめてくれ。


「やべぇ、失恋辛すぎる」


もう恥も外聞もない。

男も女も関係ない、今日だけはあさ美にすがりたい。

俺の方が最低だ。


「響…」


「あたしをもっと利用していいよ」


あさ美の女の部分を初めて見た気がして、俺は少し驚いた。


「寂しい時にはいつでも呼んでくれていいよ」


「そんなん俺…あさ美の気持ちを利用するみたいでそれこそ最低じゃんか」


「だから、あたしも卑怯なことしてんじゃん。それでも響のそばにいたいって思うのは、あたしのエゴだから」


正直、今は誰かがそばにいてくれないと死んじゃいそうだ。心が持たない。


そもそも、俺の恋愛対象はもともと女。

中学時代も何人かと付き合った。

長くは続かなかったけど。


奏ちゃんだけが特別だったんだ。

あんなに心を、理性を乱されるほど人を好きになったことは無い。

そんなこと言ったら、大人達は笑うかな。

思春期の恋なんて、ままごとだって。


奏ちゃんは言っていた。

男と女が付き合うのがこの世界では健全なのだと。

それが俺のためなのだと。


普通の恋ってやつを俺にして欲しかったんだろ?

それが本当にあんたが望んでいることなのか?


「あさ美、俺も超汚いこと言っていい?」

「なに?」


「しばらく俺のそばにいて欲しい…」


あさ美が笑った。


「響とあたし。エゴとエゴの交渉成立だね。響があたしを必要としなくなるまでずっとそばにいるよ」


すると、あさ美が俺の手を握った。

人の手の暖かさに少し安心した。


こうしていたら忘れていくのかな。

この喪失感を。


奏ちゃん。


奏ちゃんと見た夕日は、今日で少しは上書きできたのかな。


いつか全て良い思い出になってしまうのかな。


大人になった俺はどんな思いで今日の夕日を眺めるのだろう。

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