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午前0時00分。
メモリア・パークの正門が、ひとりでに開いた。
錆びた鉄の音が夜空に響き、六人の高校生が吸い込まれるようにその中へ入っていった。
秋冬、七瀬大輝、宮瀬紗季、二ツ橋大輔、一ノ瀬美緒、四宮悠斗――
そして、神夜天音。
彼女たちはみな、**“呼ばれた”**のだ。
無意識のうちに、夢の中で、あるいは無言のメールによって。
「な、なんで俺たち、こんなとこに……?」
「夢かと思ったら、違った……」
「こ、これ、前にも……いや、そんなはず……」
次々に口をつぐむ彼らの中で、ただ一人、秋冬だけが確信していた。
――“また始まった”んだ。
呪いが。『カラダ探し』の次の、“何か”が。
彼の視線の先には、メリーゴーラウンドがあった。
かつて、赤い人に追い詰められたあの場所。
だが今、その中心には黒く染まった鏡の柱が立っていた。
そして鏡の表面には、七人分のシルエット。
……いや。
六人分しか、影がない。
「……一人、足りない……」
秋冬のつぶやきに、紗季が振り返る。
「なに?」
「いや……なんでもない」
誰の影が、映っていないのか。
自分たちが“影を探す”ことになっている以上――
すでに“誰かの影”は、奪われている。
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そのとき、メリーゴーラウンドがゆっくりと動き出した。
陽気なオルゴールのようなBGMが流れ、白い木馬がくるくると回る。
そして、中心の鏡に、ひとこと表示された。
“第一の影探し”開始。
見つけよ、本当の記憶を。
失敗すれば、“記憶を一つ消去”する。
「影を……探す?」
誰かがつぶやいた瞬間、景色が歪んだ。
メリーゴーラウンドの回転とともに、周囲の遊園地の建物がぼやけ、次第に過去の光景が現れる。
見覚えのある教室。
夕暮れの帰り道。
そして、天音が泣いていた放課後の音楽室。
その記憶の中で、天音は椅子に座って俯いていた。
「……私、いないほうがよかったんだよね」
その言葉に、秋冬が立ち尽くす。
(これは……俺の記憶だ)
「秋冬くん……? あの日、私に……何て言ったっけ?」
天音が顔を上げる。だがその目は、黒く染まっていた。
答えを間違えれば、“記憶”が一つ消える。
それは、天音の記憶か、自分の記憶か――もしくは、天音そのものか。
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「俺が……言ったのは……」
選択肢が、目の前に浮かぶ。
・A:「お前はいてくれなきゃ困る」
・B:「そんなこと言うな」
・C:「俺も、そう思ってた」
秋冬の手が、震える。
(もしCを選べば……天音の“希望”を否定することになる。
AかB……でも、“ほんとの俺”なら――)
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彼は、Aを選んだ。
瞬間、天音の目から涙があふれた。
「……覚えてて、くれたんだね……」
すると、メリーゴーラウンドが停止する。
鏡に一つ、“影”が浮かび上がった。
それは、天音の影――否、**もう一人の天音の“欠片”**だった。
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だが、安堵の間もなく、鏡に赤い文字が浮かぶ。
正解者:神来社秋冬。影回収:1/7
エラー:記憶の歪み検出。
四宮悠斗の“天音との記憶”を消去します。
「えっ――?」
悠斗が叫ぶ。
「誰だよ、“天音”って……?」
彼の目は、混乱と空虚で満ちていた。
秋冬たちは知った。
影探しは、“正解”しても、誰かが必ず“失う”。
次に記憶を奪われるのは、誰か。
いや――
“誰かの中にいる影”を間違って指せば、その人物ごと消えるかもしれない。
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そして、鏡の裏側。
黒い天音が、ゆっくりと嗤った。
「最初に“消える”のは、だあれ?」