テラーノベル
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「ねえ、愛知」
福岡が、にやにやしながら、ぼくの顔をのぞきこんできた。
『あのコ』たちが、
あんなに騒いでいたのに、
福岡だけは平気な顔をしてる。
「きみの右目、すっごく変な色。あのコたちには、内緒にしといてあげるよ。おれの特権ってことで」
ぼくは、なにも言わずに、福岡にコーヒーを出した。
最近のぼくは、じぶんの言葉がうまく喋れないから。
福岡は、コーヒーを一口のんで、つまらなそうに笑った。
「愛知のコーヒー、いつもより苦い。うその味がする」
「……ふく、おか」
やっと出たぼくの声は、なんだか変な響きだった。
福岡は立ち上がって、ぼくの耳元で、ちいさく囁いた。
「いいよ。おれも、あの子たちには、いっぱいうそをついてるから」
福岡の手が、ぼくの右目の横を、やさしく撫でる。その指先が、あつあつのスープみたいに、じっとり、熱かった。
「あの子たちを、全員、毒で眠らせちゃったら、ここが真ん中になるかな」福岡の目が、真っ赤に、濁ってた。
ぼくの右目と、おんなじ色。
ぼくたちは、ふたりで、くすくすって笑った。
コメント
3件
読み終えました。第4話、かなり不気味で美しい回でしたね。福岡と愛知の間だけに通う秘密の空気が、コーヒーの苦さや「うその味」という比喩でじわじわ伝わってきました。特に、二人の右目が同じ色という設定、そして「あの子たちを毒で眠らせたら、ここが真ん中になる」という台詞が強烈です。笑い合うラストの温度が、甘やかでいて怖い。意図的に配置された伏線だとしたら、この先の世界観がどう展開するか、とても気になります。巧い構成だと思います。