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「すごいじゃない! 雫ちゃんが先生になるなんて!」
「あ、いや、先生ってわけじゃないですよ。ただ教えるだけです。でも、パン教室なんて自信なくて」
「ダメダメ。このチャンスを逃しちゃダメだよ。そんな弱気にならないで。私も協力するし、頑張って。うちのパンも出してもらえるなんて光栄なことだよ~本当に雫ちゃんのおかげ。ありがとうね」
あんこさんが満面の笑顔で言ってくれた。
誰に言われるより説得力があるし、恩人のあんこさんの役に立ててるなら、やっぱり嬉しい。
「はい、何とか頑張ってみます。1番簡単なノーマルパンにして、いろいろな形や味を作って楽しんでもらおうかなと思うんです。強力粉は慧君にも相談しようと思ってます」
「そうだよね。子ども達が作るなら、難しいパンよりそういう方が楽しいわよね。いいじゃない。私も何を出そうか悩んじゃう~」
あんこさん、すごくウキウキしてる。
夢を見る少女のように可愛い。
あんこさんは、どうしてこんなに魅力的なんだろう。
女として私に足りないものを全部持ってる。
うらやましいけど、何百回も生まれ変わる以外に、このレベルの女性に到達する方法はないんだろうな。
それくらい、佐久間 杏子さんは素敵な女性だ。
小顔に黒髪のショートカットが嘘みたいに似合って。
見た目はもちろん、性格もいいところが本当に好き。
そうこうしてるうちに『杏』のお客様はみんな帰って閉店になった。
今日は本当に忙しい1日だったな。
桜もほとんど散ってしまって、ちょっと寂しい。
その時、慧君が店の裏から入ってきた。
「あれ? こんな時間に配達?」
「いや……ちょっとね」
「あっ、ちょうど良かった。慧君に相談があるんだ」
「相談……?」
今日の慧君、何だかぎこちない感じがする。
いつもとちょっと違うような……
キッチンには私と慧君の2人きり。
あんこさんと果穂ちゃんは、別の仕事をしていた。
とにかく、私はパン教室のことを相談した。
慧君は真剣に話を聞いてくれて、いろいろ話し合い、1番扱いやすそうでパン作りに向いてる強力粉を選んでくれた。
もちろん、味も保証付きだって。
東堂製粉所の物はどれも良いものだってわかってるけどね。
私、本当にみんなに支えられてるよね。
思わず感謝の気持ちが溢れる。
慧君と話してて少し勇気も出てきたし、できることを精一杯頑張らなくちゃね。
「あのさ、雫ちゃん。今日……この後、時間ないかな?」
珍しいな、慧君からの誘いなんて。
「ごめん、今日は……」
なのに、私、断ってしまった。
今夜は、特に何も予定なんかないのに。