テラーノベル
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───わからないから、応えられない。
───わからないのなら、教えてみせる。
そんな2人のお話。
※あらすじ必読・卑猥有
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季節は夏、カラフルピーチのメンバーが揃って浴衣を着て花火大会に来ていた時から始まった。
みんなで楽しく屋台を見て回っていた。射的に騒ぐ男子メンバー、いちご飴を食べて喜ぶ女子メンバー。ひと夏の思い出に、ぴったりだった。
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「っ、い゙っ、」
浴衣、つまりは下駄。長時間歩いているのだから、靴擦れしてしまうのも当然と言えば当然だった。
皆の後ろを着いて歩いていたうりが微かな悲鳴をあげたことに気付いたのは、うりの横を歩いていたゆあんだけだった。
「…うり?大丈夫?」
「あ、うん、…!大丈夫!」
少し苦しそうに笑ううりの顔を、ゆあんは見逃さなかった。
「嘘。靴擦れでしょ?」
歩き出そうとした矢先、ゆあんに腕を掴まれて、うりは目を丸くした。
「大したことないから、早く行こーぜ」
無理をしている時の顔だ。それがわかる理由としては、ゆあんはそれなりに他人のことをよく見ているからである。
そして、何よりゆあんはうりのことが好きだった。友人はもちろん、普段すれ違う人のことすらよく見るゆあんにとって、好きな人のことは表情だけで気持ちを汲み取ることがほぼ可能であった。
「ねえ、嘘つかなくていいから」
そう言われると、うりは降参するとでも言うように、目を伏せて苦笑した。
「…近くのコンビニ行こ」
「え、なんで?」
思いもよらないゆあんの発言に、うりは首を傾げた。
「痛いんでしょ。絆創膏買いに行こ」
「…でも、皆は、」
「後から合流すればいいんじゃない?」
本当に気が利く奴だな、とうりは1人心の中で呟いた。
「連絡しとけばいいでしょ」
「…うん、ありがと」
うりは正直に言うと、ゆあんの気が利くところが好きだった。年上としては少しの悔しさもあるものの、素直に尊敬できた。
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ひと通りそれなりの手当てをしてから、2人は時間を確認する。
「花火、何時からだったっけ?」
「…たしか20時とかじゃない?」
「今何時だ…?」
うりのその質問に答えようと、ゆあんはスマホを取り出した。
「19時40分」
「…間に合うかな、」
「じゃぱぱ達が居るのって××丘でしょ?多分歩いてここから30分は掛かるよ」
「間に合わないってことだよね」
「まあ、そう」
手当てはしたものの、歩くことはまだ少し難しかった。
「ごめん、」
申し訳無さそうに謝るうりを見たゆあんは、失礼ながらもうりが謝るなんて思ってもいなかったため、少し驚いた。
「別にいいよ、1人で見る訳じゃないし」
───俺にとってはこっちの方が好都合。
なんてキザな言葉は性格上合うわけもないので、口にはしなかった。
「…そっか」
「あ、でもさ、ここじゃあんまり花火見えなくない?」
今2人が居るのは少し在る場所の低いコンビニの駐車場の端だった。
「それはまあたしかに」
「だよなー、」
ゆあんはスマホを取り出して、人気の無い花火の見える場所はないか調べた。これも近場を調べたのは、うりになるべく負担をかけないようにするためだった。
「…ねえ、徒歩10分のとこに△△神社ってとこあるんだけど 」
「うん」
「うり、歩ける?」
少し不安げにゆあんは尋ねる。
「うん、歩けるよ」
無理をしていることくらい容易にわかるのだから、何故うりは強がるのだろうか、と、ゆあんはただただ疑問だった。
「はぁ…、」
嘘を重ねるうりに対して、うりに本当のことを言って貰えない自分自身に対して、ゆあんは溜息を吐いた。
「…はい、」
「…え?」
ゆあんはしゃがんで、うりを背中に乗るように促した。
それを見たうりは、何故、という表情を浮かべた。
「痛いってわかるから」
「いや、でも…」
「いいから、な?」
うりは、ゆあんの垣間見せる心配性な所が顔を出したのか、と結論を出した。
こうなったゆあんは意思をそう簡単には変えようとしない。うりはそれを知っていたため、此方が手を挙げよう、そう判断した。
「ありがとう、」
「うん」
うりがゆあんの背中に乗ると、ゆあんは嬉しそうに頬を緩ませた。その理由を、鈍感なうりに察することは出来なかった。
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時刻は19時52分。花火が始まるまでに、十分な余裕を持って2人は目的地に着いた。
そこで、ゆあんがじゃぱぱへ連絡をした。
『じゃぱぱ?』
送信してから約10秒。すぐに既読がついた。
『ん?』
『俺たちそっち行くの間に合わなさそうだから 別の場所で見るわ』
『おっけーい!みんなに言っとくねー』
『ありがと』
軽く感謝を伝えてから数秒後、
────『頑張れ!』
じゃぱぱから送られてきたそのひと言に、ゆあんはひとつ笑みを零した。
そして、ゆあんは決意をしたのだ。
✄
───20:00
20時になったとほぼ同時に花火が打ち上がる。
「うわ、すげぇ」
目をキラキラと輝かせて花火を見ているうりを、ゆあんはチラリと横目で見た。
それと同時に、固く拳を握った。
「…、なあ、うり」
「ん?」
うりは、純粋無垢な瞳で、不思議そうに首を傾げた。
「俺さ」
「うりのこと、好きなんだ」
ゆあんの口から告げられたそのひと言は、花火に掻き消される、なんて少女漫画的な展開も無く、うりの耳にしっかりと届いた。
ただ、届いただけであって、ゆあんの目の前にいるうりは混乱していた。
「好きっ、て、は、?」
少し頬を赤らめて慌てるうりを、可愛いなぁ、なんて少し他人事のようにしてゆあんは見つめていた。
「まあ、そのまんまだけど」
「おれ、あ、…」
苦しそうに顔を歪めて俯いたうりを見て、ゆあんはうりの頭を撫でた。
「へ、」
「別に俺、返事貰おうなんて傲慢なこと言わない。うりの気持ち、ちゃんと分かってるからさ」
うりは、自分のことなんか好きじゃないと、ゆあんはそれを知っていた。
「ごめ、おれ、そういうのもう、分かんなくて….」
次第に必死に涙を堪えながらぽつぽつと言葉を漏らすうりに対して、怒りなんて感情は、ゆあんには生まれようもなかった。
「…じゃあさ、俺が教えてあげる」
「…んぇ、?」
「俺が、お前に、恋を教えてあげる!」
そうして、ゆあんとうりの恋物語は始まった。
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あれからゆあんは、うりに対して過度なアプローチを始めた。
はじめは軽めなスキンシップ。以前からあったような頭を撫でる行為も、常にうりの横をキープしていたり、色々なパターンがあった。
日が過ぎて行く内に、撮影や配信でも絡みを増やすようになった。
アプローチをされ始めた当初のうりは困惑していたものの、幾度と繰り返されることで慣れてしまっていた。
それでも、たまにストレートに言われる「好き」に慣れることはなかった。
そしてそのまま、秋を迎えた時に、事件は起きたのだ。
✄
その日はいつもと変わらず、シェアハウスで過ごしていた時の事だった。
長時間作業をしていたゆあんは、コップに入っていた飲み物が既に無くなっていることに気付き、リビングへと向かっていた。
そして、リビングで見た光景に、ゆあんは足を止めた。
「じゃぱさん…、?⸝⸝」
ゆあんの目にしたものは、衝撃的なものだった。
じゃぱぱにソファへと押し倒されて手首を掴まれているうりと、そんなうりを見て満足気にニヤリと笑うじゃぱぱの姿。
何故、どうして、ゆあんの頭に浮かぶのは疑問だけだった。
じゃぱぱはゆあんがうりのことを好きだと知っていて、しかもその恋を応援していたはずで。
今まで認識していたものとは到底似ても似つかない状況に、ゆあんは必死に追いつこうとしていた。
見れば見るほど込み上げて来る怒りと悲しみ。そして嫉妬心や独占欲。
どの気持ちも、今のゆあんにとっては心を踏み荒らしていく最悪とも言えるものだった。
刹那、じゃぱぱがうりの顎へ手を添えた。
それを見たゆあんは、とうとう我慢の限界が来てしまったのだ。
────がしっ
「「え?」」
ゆあんがじゃぱぱの腕を掴んだ瞬間、2人はほぼ同時に間抜けな声を漏らした。
そんな2人を他所に、ゆあんはじゃぱぱを睨みつけていた。
「何、してんの」
ゆあんから発せられた声は、いつもより低く感じられた。
やってしまった、と言わんばかりの顔をしたじゃぱぱ。
「ねぇ、聞いてんじゃん、何してんの?」
じわじわと込み上げてくる怒りに、ゆあんはじゃぱぱを掴む手に力を入れた。
「ちょ、まって、」
声を上げたのはうりだった。
「1回それ、離してあげて?」
うりはゆあんに掴まれているじゃぱぱの腕に目をやってそう言った。
仕方なくゆあんは手を離した。
「…こっち来て、」
直後、ゆあんは突然うりの事を自分の方へと引き寄せた。
「うおっ、」
バランスを崩したうりを、ゆあんはそっと優しく支えた。
「此奴、借りてくから」
ゆあんは、そうじゃぱぱへと告げて、ほぼ無理矢理自室へうりと向かった。
✄
「「…..」」
微妙に2人の間に流れる気まずい沈黙。その状況に、ゆあんはひとつため息をついた。
「はぁ….」
「…?」
不思議そうにゆあんを見つめるうり。そんなうりを見て、ゆあんにはどうしようもないほどの怒りと悲しみの入り交じった嫉妬心を抱いた。それが、運の尽きだった。
────どさ、
「…は、」
突然ゆあんに掴まれ、乱暴にベッドに投げ出されるうり。意味もわからず、うりはただ混乱する事しかできなかった。
「なんで、なんで、なんでなんでなんでっ!うりは、俺のじゃないの…?」
ゆあんはうりの上に跨ったまま、今にも泣き出しそうな声でそう言った。
「ゆあん、くん…?」
「俺の何処が駄目だった?じゃぱぱの方が良かった?」
「…」
「ねぇ、なんとか言ってよ、」
今うりの目の前にいるゆあんはもう、うりの知っている優しいゆあんでは無かった。
「ごめ、ッ、」
蛇に睨まれた蛙とはこのことか。
うりは抵抗する事もできず、必死に絞り出した声は、近くに居ないと聞こえないほど細かった。
「謝って欲しいんじゃない、なんで俺じゃ駄目だったのか聞いてんの…」
そんなの、うりには答えようも無かった。別に駄目だなんて言っていないのに。じゃぱぱとは何もないのに。…なんて、うりの喉からその言葉は出なかった。
「…、はぁ、もう良い、やっぱりうりには俺の気持ちなんて分かんないんだ」
「っ…、!」
呆れたようにしてからうりの上から退いて、部屋を出ていこうとしながら、そう告げるゆあんに、全くその通りだ、とうりは思った。でも、うりはこの機会に、また恋を知れるのではないか、と期待をしてしまっていた。ならば、引き止めない選択肢など、存在しない。
「っ、ゆあんくん、!」
うりは勇気を振り絞って、ゆあんの名を呼んだ。自身の胸の前で不安そうに繋がれている両手は、小刻みに震えている。
「…なに、」
いつもは名前を呼ぶと、嬉しそうに笑ってくれるのに、今のゆあんは、冷めた目でこちらを見てくる。
自分は彼をそういう意味で好きでは無いのに、拒絶される事が嫌だと思ってしまうのは本当に自分勝手だと、うりは1人心の中で呟いた。
「いかないで…、教えてくれるんじゃなかったの、?」
「は?」
「ゆあんくんが、俺に恋を教えてくれるんじゃなかったの…?」
「いった、けど…、」
「俺、覚悟出来てるから、お願い、教えて…」
「…っ、」
どうして、うりはいつも自分の置かれている状況を理解しないのだ、と。鈍感なうりにそんなこと、察せるはずないと分かっていたゆあんは、息を吐いた。
「俺、無理だ、今の俺じゃ優しく教えてあげられない…」
ごめん、と付け足して、部屋を出ていこうとするゆあんに、またうりは声をかけた。
「ゆあんくんっ、!俺、何されてもいいよ、?ゆあんくんのその気持ちが、俺に理解できるようになるなら…」
「…」
直後、ゆあんはうりを押し倒した。
「え、ゆあんく──ッ」
────ちゅっ
静かな部屋に響くリップ音。
うりは、自分の身に起きている事が理解できなかった。
「ゅあっ、」
うりがゆあんの名前を口にしかけた途端、見計らったようなタイミングで、ゆあんの舌が侵入してくる。そして、うりの口内を犯していった。
────くちゅ、
脳内に直接届く水音。
どうして、今目の前に居るのは、いつもみんなで馬鹿やっていたメンバーなはずで。
うりにはもうどうしようも無かった。今のゆあんは、うりに止められるなど、到底思える状態ではないのだ。
うりは抵抗しようとしたが、それは諦めた。こうなっているのは自分が原因だと、自覚していたからだ。
しばらくして、ゆあんはうりから離れた。
「ゆあん、くん…、?」
「…これに懲りたら、もう恋を教えろなんて言わないで」
「なんでっ、?!勝手に“教えてあげる”なんて言って、勝手に諦めんなよ、、!」
再度離れようとしたゆあんの手首を掴み、うりは寂しそうな瞳で訴えかけた。
「ゆあんくんになら何されても良いから、」
ああ、本当に。これだから恋を知らない鈍感な人は。ゆあんは僅かに残っていた理性の片隅で、そんな事を考えた。
ゆあんは理解している。この先はまだ踏み入ってはいけない、まだその時じゃない、という事を。でも、目の前で好きな人が襲ってくださいとでも言うような顔で此方を見詰めていたら、耐えられる人はきっと居ない。
──── もう、どうなってもいいや。
ゆあんがそう判断した時、ひとつの糸がぷつり、と切れた音がした。
「ごめん、うり」
「へ…?」
再び重なる唇。どうしようもなく抑えられない感情に理性を奪われたゆあんには、もう、目の前にいるうりのことしか見ることができなかった。
「ゆぁ、ッ、んくっ、__⸝⸝」
お互いの息を求め合うかのように、はたまた、奪い合うかのように幾度と繰り返されるそのキスは、もう恋を教える、なんて可愛い表現で済ませられるものではなかった。
うりは呼吸を求め、ゆあんの背中をとんとん、と優しく叩く。そして、2人の影が離れる。
「ねぇ、ゆあんくんっ、」
荒い呼吸を抑え付けながら、うりはゆあんの頬を撫で、その名を呼ぶ。
「おれ、ゆあんくんのところまでおちたい、」
「っ、!」
そのうりのひと言が、2人の間にあった、透明な壁を壊したような気がした。
「嫌だったら言えよ、」
「そんなの今更だろ、」
「なるべく、優しくするから、」
「あたりまえ、っ」
ゆあんはそっとうりのナカに指を挿れる。するとうりは、少し肩を跳ねさせ、甘い声を出した。
「かわいいからやめてくんない、?その反応」
「むちゃ、言うなよ、⸝⸝」
ゆあんが少しずつ奥へと指を進める。その度にうりは甘い声を漏らした。
「ぅあ、⸝⸝ちょ、っ⸝⸝⸝やめ゙、」
「っ、かわいすぎ」
はじめよりも少しナカが緩くなった時、ゆあんは持ち前の好奇心で指を曲げてみる。
「ぁ゙あ゙?!⸝⸝ん゙っ、ふっ⸝」
あまりにもうりが可愛い反応をするので、ゆあんはまた好奇心を燃やした。少しナカを掻き乱してみたのだ。
「あぅ、っ⸝⸝やらっ、いっちゃ゙__ 」
「いっていーよ、?」
ゆあんがうりの耳元でそう囁いた直後、うりは限界を迎え、少し喘ぎながら、絶頂に達した。その様子はとても妖艶だった。
可愛い、たったその4文字が、ゆあんの脳内を占めた。
本来ならば、まだこの景色を見るのはもっと先だろう、と思っていた。のにも関わらず、もう自身の手で好きな人を犯してしまったと、ゆあんはどこか夢のような感覚で居た。
「ゆ゙あんくんッ__⸝⸝ぁ、゙ぅ⸝⸝」
びくびくと体を跳ね上げながら、うりは何かを求めるようにゆあんの名を呼ぶ。
「ごめん、っ、もう耐えらんない、ッ⸝」
「はやく、っ゙⸝⸝」
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「まじでやらかした、…」
ゆあんは1人、横で気持ち良さそうに寝るうりを見詰めながら呟いた。
「これからどうしよ…」
好きな人とはいえ、それ以前にグループのメンバーである。これから先の撮影、ましてや日常で話すことすら気まずいだろう。
「…ごめん、うり」
ゆあんはうりの頭を優しく撫でると、その場から立ち上がり、部屋を出た。
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「ぁれ、?」
もう空がすっかり黒く染まった頃、うりは目を覚ました。
先程、何をしていたかを鮮明に覚えていないうりは、どうして自身がゆあんの部屋にいるのだろう、と、ただ疑問でしかなかった。
「….っ、ぁ、」
数秒考えた後、うりは先程の出来事を思い出してしまった。自分がゆあんを煽るような発言をし、その結果、メンバー、友達としての一線を超えてしまったのだ。
うりは、どうしようもなく謝りたくなった。元はと言えば、じゃぱぱとあんな事をしていたのが原因で。ゆあんは何も悪くないのだと、そう思っていた。
数分考えた後、うりはゆあんに謝ろうと決意した。
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「なおきりさん、ゆあんくん見てない?」
数時間前、じゃぱぱとうりがじゃれ合っていたリビングのソファに腰掛けていたなおきりに、うりは声を掛けた。
「ゆあんくんですか?見てないですよ。何かあったんですか?」
「うん、ちょっと暇だからさ!」
不思議そうに首を傾げるなおきりに、うりは分かりやすい嘘をついた。
「…そうですか。また今度僕とも遊んでくださいね」
「うんっ!」
うりが嘘をついていることは分かっていたものの、なおきりは気付かないふりをした。
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次にうりはたっつんの部屋へ向かった。
「たっつんさーん!入ってもいいー?」
「ええよ〜」
たっつんからの返事を聞き、うりはたっつんの部屋のドアを開けた。
「どうしたん?わざわざ俺の部屋来るなんて」
少し物珍しそうにしながらたっつんはそう言った。
「いや、ゆあんくんどこいるか知らない?」
「ゆあんくんか?なんかコンビニ行くとか言ってたで?」
コンビニ….、こんな時間に?と、少し心配になりながらも、うりはたっつんに感謝を伝えて部屋を出た。
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夜の23時。うりはゆあんが帰ってくるのを、リビングで待っていた。
───がちゃ、
玄関のドアが開く音。うりは少しそわそわしながら、ゆあんがリビングに来るのを待った。
「….あ、」
「ゆあんくん、!」
「…..」
「…..ゆあんくん、?」
「ごめん、もう遅いから寝るわ、」
ゆあんはうりと目を合わせることなく、そう告げて自分の部屋へと向かった。
✄
「じゃぱさん、」
「あ、うりりん、」
翌日。あれ以降うりとゆあんは一切会っていなかった。うりはゆあんとのことが問題になるのでは無いか、と考え、じゃぱぱに相談することにした。
「昨日はごめん、俺が…」
「いや、じゃぱさんは悪くない、!元は俺が悪いし」
「…でも、話に来たってことは、何かあるんだろ?」
「….っ、」
「あの後、ゆあんくんと何があったの?」
「あのな、────」
「そっか、話してくれてありがとう」
「ううん、それは、全然…」
じゃぱぱは少し申し訳無さそうにしながらも、しっかりうりの話に耳を傾けてくれた。
しかし、うりとゆあんが一線を超えた事実は変わらず、じゃぱぱにもどうすれば良いかなんて、思いつくはずもなかった。
「2人は付き合ってないよね?」
「うん、付き合ってない、」
「…ゆあんくんに告白はされた?」
「….」
図星をつかれたうりは、バツが悪そうに、視線を逸らす。
「ビンゴかな笑」
じゃぱぱは少しでも空気を軽くしようと、明るい雰囲気を醸し出すような話し方をしてくれた。
「これ言ったら、俺ゆあんくんに怒られるかもしれないけどさ」
「….?」
「俺ゆあんくんがうりりんのこと好きなの結構前から知っててさ」
「えっ、」
「…ゆあんくん、本気でうりりんの事好きなんだよ」
じゃぱぱは、ゆあんがうりのことを好きだと、ずっと前から知っていた。どれだけゆあんがうりのことを考えて、想いを押し殺して生きてきたのかも。
「ゆあんくんのこと、ちゃんと考えてあげてほしい」
真っ直ぐな瞳で、そう告げられたうりは、再度自身がどれだけ重い罪を犯してしまったのかを自覚した。
「うりりんも、焦る必要ないから、じっくり考えてね、」
じゃぱぱは優しい声色でそういって、軽くうりの頭を撫でた。
「うん、ありがとう、じゃぱさん…」
「これでもリーダーだからね!」
「そうだな、笑」
やっぱり、11人のメンバーをまとめているだけある。本当に良い人だな、と、うりは改めてそう思った。
✄
あれから早数週間。未だゆあんとうりが動画内以外で関わることはほぼ無いに等しかった。
そして、迎えたうりの誕生日。少しだけ、2人に変化が起きたのだ。
「うりりん誕生日おめでとーー!!」
「おめでとうございます!」
「いい年にするんやで!」
「うり、おめでと」
「シヴァ男ちゃん張り切って沢山料理作っちゃった~」
「うり!お祝いのダジャレいっぱい考えたよ!」
「うり、誕生日プレゼントは私からのパンチね?嘘嘘、冗談笑」
「うり!誕生日おめでとう!ちゃんとプレゼントあるからね」
「うりりんおめでとうございます!お花ちゃん沢山プレゼントしちゃいますね!」
「うり誕生日おめでとう!俺からのプレゼントは数学の課題かな?笑」
「…!!みんなありがとうッ!笑」
カラフルピーチにとって、誰かの誕生日は本当に大事な物だった。
「あ、うりりん」
「じゃぱさん、?」
「これ、るなからの手紙」
「えぇ、!まじで?!」
「大事に読めよ〜」
「当たり前じゃん」
実質卒業という形を取ったるなも、会いに来れることは少なかったけれど、手紙を送ってくれるのはお決まりだった。
一頻り誕生日会を楽しんだ後、うりは1人、自室へ戻った。
「….ちゃんと、ゆあんくんも祝ってくれた、」
きっと、祝ってくれるのだろうとは思っていたけれど、それでも、しっかり祝ってくれたことが、うりにとってはどうしようもなく嬉しかった。
─── こんこん、
うりが少し寝転がろうとベッドに腰掛けた時、部屋のドアをノックされた。
「どうぞ、入って」
─── がちゃ、
「….え、ゆあんくん、」
そこに現れたのは、紛れもなく、あの日以降関わりが少なくなっていた、ゆあんだった。
「あのさ、うり、…」
「うん、」
「俺、どうしても、謝りたくて、っ」
「え…?」
思いもよらなかったゆあんの発言に、うりは一つ間抜けな声を漏らした。
「なんで、ゆあんくんが….、」
「なんでって、そりゃ、俺のせいだし…」
気まずそうに目を逸らすゆあんに、うりは首を傾げた。
「いや、あれは俺のせいじゃん?」
「は、?」
「怖い怖い笑」
本気でわからないと言うような顔をするゆあんが少し珍しくて、うりは思わず笑ってしまう。
「だって、元々俺がじゃぱさんと変な遊びしてたのが原因でしょ?」
「いや….」
「いやもなにも無い!あれは俺とじゃぱさんのせいなの!」
「じゃぱぱ巻き込んでんじゃん、笑」
「!…ばれた?笑」
きっと、もっと早く話していたら、すぐにまた今までのように笑っていたのだろう。
でも、もう大丈夫だ。一度2人とも笑ってしまえば、遠慮なんてする必要が無くなってしまう。だって、この2人はそういう関係なんだから。
✄
あれから数日。今日はクリスマスとなった。
「今日の主役はだぁれ?!」
「この俺!!シヴァ様だ!!」
「おい俺もだって!!」
「自分で言い出して自分を言ってもらうつもりやったんかお前は」
「えへへ」
クリスマス….並び、じゃぱぱとシヴァの誕生日である。
「今年のクリスマスは一味違いますよみなさん」
ここで突然、じゃぱぱが話を変える。みんなは不思議そうにじゃぱぱの方を見た。
「ちょっとそんな見ないでよ恥ずかしい笑」
「なんやお前」
じゃぱぱがボケればたっつんがツッコミを入れる。そのいつもと変わらない様子を、ゆあんとうりは、肩を並べて見て笑っていた。
「で、今年は何が違うんですか?」
仕切り直すように、のあがそう声を掛ける。
「そうそう。夜はいつも通りクリスマス会なんだけど、お昼ら辺はペアに別れてクリスマスデート!!どうよ?」
「「「「「え?」」」」」
「それ、ペアどうやって決めるんですか?」
「なお兄ないす質問!ルーレットだね」
「でも奇数ですよ?」
「1組だけ3人でお願いね」
「修羅場ってやつですね」
じゃぱぱとなおきりの会話を聞いていたみんなは、最後のなおきりの一言に笑ってしまった。
「まあそーゆーことだから!ルーレットするよー!!」
「待ってください!!!私たちはどうなるんですか?!」
「そーだよ!!何デートって殴られたいの?!」
じゃぱぱがルーレットを始めようとした時に、すかさず女子たちが質問した。
「あ、そうそう、女子は2人で決定だね」
「なんだよかった」
「ナイフ持っていこうとするところでした」
「え怖い」
物騒な話をする女子組に、男子は怒らせないようにしよう、と何度目になるかわからない決意をした。
✄
ルーレットの結果、じゃぱぱとどぬく、なおきりとたっつん、ゆあんとうり、シヴァともふとヒロになった。
「どぬちゃんじゃーん!よろしくねー!」
「んぇー、じゃぱちゃんかぁ…」
「なんで嫌そうなの?!?!」
どぬくが残念そうに肩を落とすと、じゃぱぱは悲しそうな声で叫ぶ。
「冗談だよ笑」
「なんだ、ツンデレか〜」
「それは違うよ」
どぬくの冗談に安心してぼけるじゃぱぱに、どぬくはまたひとつ鋭い指摘をした。それと同時に、みんなが笑う。
「俺なんかなおきりさんやで?!」
突然たっつんが声を上げたかと思うと、ただの愚痴である。
「ちょっとたっつんさん酷くないですか?!」
「まあなおきりさんは結構しんどいね」
「ゆあんくん?!」
「やんな?!?!」
じゃぱぱと同様悲しそうにするなおきりと、たっつんに同情するゆあん。その様子を見て、笑ったり、なおきりが可哀想だーと言うメンバーだっている。
「3人組はシヴァもふヒロかーー」
じゃぱぱがそう言うと、みんなは口を揃えて「ここだけ平和じゃん」と言った。
「ドライブデートいきますかー」
「そだね〜」
「緩いなぁ…笑」
ドライブが好きなシヴァとヒロを横目に、もうなんでも良さそうな顔をしながらもふが笑う。
「残りの赤いのと黒いの喧嘩して帰ってきそうじゃない?」
「ねぇ赤いのって何?!!!」
「もっとかっこいい呼び方しろよ!」
えとがゆあんとうりを順番に指差してそう言うと、2人は不服そうに声を上げた。
「喧嘩しないでねー」
まるで学校の先生かのようにもふは言った。
「流石にしねぇよ。な?」
「…..」
「おいうり?」
わざとらしく黙り込むうりとそこに圧をかけにいくゆあん。既に雲行きが怪しいと、みんなは声に出さずとも心の中でそう感じていた。
「まあとりあえず、みんな今日は19時に帰ってきてね〜!!その後全員でクリパするから!」
「「「「「はーい」」」」」
〜赫黑〜
「なんか俺でごめん」
「ほんとだよ」
「はぁ?!そこは別にいいよとか言えよ!」
突然謝り出すゆあんに、うりが同意すると、言い出しっぺのゆあんが怒る。いつもの風景だった。
「まあいいや…どこ行く?」
「ん?世界一周」
「頭おかしいよお前笑」
「うるせぇ、笑」
口は悪いのに、結局は笑ってしまっているのも、いつもの2人だった。まるで、以前までのいざこざが無かったかのように。
✄
結局2人は水族館に行くことにし、入館時間まで小洒落たカフェで過ごすことにした。
窓際のふたり用席。外には雪が降っていた。ゆあんは着ていたコートを脱ぎ、畳んで背もたれに掛けて座り、うりは着ていたジャンパーを背もたれに掛けてゆあんの向かいに座った。
2人の間にある机には、先程頼んだカフェラテが2つ置かれていた。
「なあ、うり」
「ん?」
突然声をかけられ、うりは首を傾げた。
「もうお前25なんでしょ?」
「そーだよ?笑」
「やっぱ見えないな」
「若々しいってこと?ありがとありがと 」
「言ってねぇよ笑」
ゆあんが呆れたように笑った。その笑顔を、うりは不覚にも愛らしいと思った。
「….あのさ」
ゆあんが突然神妙な面持ちで話を切り出す。うりは珍しく真剣にしているゆあんを不思議そうに、見つめた。
「俺、うりのこと好きじゃん」
「….」
まさかの話題にうりは動揺し、目を見開いた。ゆあんは気まずそうに、頬杖をつきながら窓の方へと視線を向け、言葉を続けた。
「正直さ、怖いんだよ」
「…何が、?」
「うりが、俺の目の前から突然居なくなりそうで、…」
不安そうにゆあんは自分の手を握った。
「ただの”友達”じゃ、簡単に切れちゃいそうで、」
「…」
「今以上を求めちゃうんだよ、」
震える声で俯きながら必死に言葉を探すゆあんの事を、うりはただ声をかけず、見守ることしかできなかった。
「前に言ってた事、撤回したい、」
「…え?」
「いつまでも待つから、いつか、返事が欲しい、です…」
震える声と手。合わない目線。珍しく出る敬語。緊張しているのは、一目瞭然だった。
「….うん。ちゃんと、考えてるよ」
「…!」
うりがゆあんの期待に沿う返事をすると、ゆあんは安心したように、息を吐いた。
✄
「ゆあんくーーん!!」
「うるさいはしゃぐな25歳」
「その呼び方やめろよ!」
楽しそうにはしゃぐうりを、ゆあんは一歩後ろから見守っていた。
「見てよ、くらげ!!かわいくない?!」
二人で並んで水の中をふわふわと漂う海月を見詰める。うりは、そっとゆあんの方を見た。
「….綺麗、だな」
「っ、」
そう言いながら切なそうな顔をするゆあんの横顔を見て、うりは思わず息を飲んだ。
「うん、めっちゃ綺麗、」
うりの告げた”綺麗”が、何に向けた言葉なのかは、ゆあんが知る由もなかった。
✄
18時50分。予定より少し早くメンバーみんなが、シェアハウスのリビングへと集合した。
「「ただいまー」」
最後に帰ってきたのは、ゆあんとうりだった。
「おかえり。喧嘩せんかったか?」
「してねぇよ笑」
やはり不仲な2人がデートは心配だったのか、たっつんが割と神妙な声で尋ねると、ゆあんは笑顔で答えた。
(….あれ、なんか、)
その様子を見て、うりは少し、顔を歪めた。
その後はみんなでどんなとこに行ったのか、何をしたのかを話したり、プレゼント交換や罰ゲーム付きのゲームをしたりして、誕生日会兼クリスマスパーティを楽しんだ。
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「うりりん、ちょっといい?」
「ん?どした?」
みんなで話していた所で、突然じゃぱぱがうりを呼んだ。
「ちょっと、二人で話したいことがあって」
「ん、いーよ! 」
その様子を見て、ゆあんが不安げな表情を浮かべたことに気付いた人はいなかった。
2人は2階のベランダに出て、星空を見上げた。
「どした?」
「うりりん、ゆあんくんとどーだった?」
「….え、?」
「楽しかった、?きっちり考えられた、?」
思いもよらない質問に、うりは口を噤んだ。
「…俺、おかしくなっちゃったかも、」
「どういうこと、?」
「なんか、わかんないけど、!」
うりは、今日の一日や今までの事を通して、思ったことをじゃぱぱに素直に伝えた。
「ゆあんくんが他の誰かに笑いかけてたら苦しいし、ゆあんくんが辛そうな顔してると俺まで辛くなるし、ゆあんくんが俺だけに笑いかけると、意味わかんないくらい胸が苦しいんだよ…、」
「うりりん…」
うりが今にも泣きそうな顔でそう口から零すと、じゃぱぱはそっとうりの頭を撫でた。
「それが、”恋”なんだよ」
「っ、は…?」
うりはじゃぱぱの言葉を聞き、あっけらかんとした表情をした。
「うりりんは、ゆあんくんのことが好きなんだよ」
「そんな、うそ、だ、」
気付いてしまった気持ち。うりは色々な気持ちに押しつぶされそうになりながら、大粒の涙を零した。
「好きに、なれたの、?」
泣いているけれど、嫌だと感じることは無くて、ただ嬉しくて、うりはじゃぱぱに思わず抱きついた。
「抱きつくべきなのは、俺じゃないよ笑」
少し笑いながらも、じゃぱぱはうりのことを泣き止むまで抱きしめ、頭を撫で続けた。
✄ ─── 一方その頃
「ゆあんくん大丈夫か?笑」
「うぅ、…」
みんなが各自部屋で遊んでいる中、たっつんとゆあんはリビングのソファに座って言葉を交わしていた。
「なんの話しに行ったんやろな」
「うるさい、黙って…」
ゆあんは両肘を膝につけ、顔を手で覆い隠しながら、悲しげにたっつんの口を噤ませた。
「もー、じゃぱぱは何がしたいんだよ…」
「せやなあ、多分大事な何かがあるんやと思うで?」
ゆあんのことを応援したり、うりを連れ出したり、じゃぱぱの行動に、ゆあんは悩まされていた。
「どーしよ、もう怖い…」
「何をそんなに心配しとんの?笑」
不安を零すゆあんに、じゃぱぱなら大丈夫だと確信しているたっつんが笑いながら話を聞いていた。
「あれっ、珍しーね、2人だけで話してるの」
「んね笑」
いつの間にか戻ってきていたじゃぱぱとうりが、ゆあんとたっつんに声をかけた。
「なんの話してたん?」
たっつんが2人にさりげなく聞くと、2人は顔を見合せた。
「「内緒!!」」
「はあ?」
楽しそうに笑うじゃぱぱとうり、不満気に首を傾げるたっつんの横で、ゆあんは1人、不安を募らせていた。
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それから時は過ぎ、1月中旬。もうすぐゆあんの誕生日である。うりはせっかくの好きな人の誕生日だから、何かしたいと考えていた。
「じゃぱさーん、入っていい?」
『どーぞー』
── がちゃ
「どしたの?まあ、検討ついてるけど笑」
「うう、、」
「ゆあんくんの誕生日だよね」
「そう、何したらいいかな…? 」
うり自身、友達としてゆあんの誕生日を祝うことはあったが、好きな人として祝うのは当然初めてだった為、何をするべきか1つも案が出てこなかったのだ。
「そもそも、うりりんはゆあんくんとどーなりたいの?」
「え…ぁ、考えてなかった、」
「一番大事でしょそこ笑」
じゃぱぱにごもっともなことを言われ、うりはさらに頭を抱えた。
「好きって伝えるつもり、無いの?」
「…」
「ゆあんくんがうりりんのこと好きなのわかってるのに伝えないの、もったいないじゃん」
「…はずい、じゃん、?⸝」
うりはずっと好きだと言われ続けてきて、案外好きな人に好きを伝えるのは簡単だと思っていた。でも、いざ自分が伝える側となると、どれだけ好きを伝えるのが難しくて、勇気のいることなのかがわかった。
「今の可愛い。採用」
「は?笑」
ゆあんが今まで自分に伝えてくれていた”好き”が、どれほど大切で、どれほど荷が重いものなのか、うりは理解し、有り難さを感じた。
「まあまあ、、うりりんは、ゆあんくんと付き合いたいの?」
「そりゃ…、」
“そうだ”、と続けようとした所で、うりの言葉が止まった。
もし付き合ったら、今までとは違う接し方をされてしまうのではないか、という不安が、うりの中で渦巻いた。なぜなら、 うりは今のゆあんが好きだったから。
「うりりんの好きにしたらいいと思うよ」
「….うん、」
「でも」
「ん、?」
じゃぱぱは真剣な眼差しでうりを見詰めた。
「気持ちは伝えてあげるべきだよ」
「っ、」
「片想いって、うりが思ってるより辛いから」
うりはゆあんが好きだ。でも、それは相手からの好意があることがわかった上で恋をしている。しかし、ゆあんはうりからの好意がないと思っている上で、ずっとうりに恋をしている。
それをずっと知っていたじゃぱぱは、両想いなのにゆあんに片想いという辛い感情をさせ続けたくなかった。
「…うん、がんばる、」
じゃぱぱの言葉をしっかり受け止め、うりは力強く頷いた。
「でも、いつ言えばいい、かな、」
「それはうりりんのタイミングで!」
「ええ、むずいって、」
✄
1月29日。23時00分。
うりは、ゆあんの部屋の前に居た。もしかしたら、編集しているかもしれない、寝ているかもしれない。
けど、今じゃないといけない、そう思った。
─── こんこん
『はーい!』
扉の向こうから聞こえるゆあんの声に、うりは起きていることに安堵した。
「うりだけど、入っていい?」
『どーぞ!』
─── がちゃ
「うわ、久しぶりに来たわ、笑」
「…たしかに、うりはあんま来ねぇよな笑」
「いつもお前がこっち来るからな?」
「いーじゃんいーじゃん!笑」
うりがゆあんの部屋に来たのは、あの事件があった日以来だ。うりにとっては、少し嫌な思い出がある場所だった。ゆあんも、なんとなくそれを感じ取っていた。
「んー、でも珍しいね。どーしたの?」
「19歳最後のゆあんくんを見納めに来た…みたいな?笑」
「は?笑意味わかんな笑」
本当は、違うけれど。うりは見抜かれないように、適当な嘘をついた。
「暇だからなんかしよーよ」
「人の部屋に来てその態度流石に尊敬するわ」
「それも俺のいーとこっしょ?」
「あーはいはい笑」
ゆあんは呆れつつも、うりを愛おしそうにしながら笑った。
それから数十分、ゆあんとうりはカードゲームや最近あった話などをして盛り上がっていた。
「ん、あと5分じゃん笑」
「俺酒飲めるようになるの?えぐい笑」
「ゆあんくん強いかなー?」
「親は強いけどわからん!笑」
「そっか〜笑」
あと5分。うりは気持ちを切り替え、話を切り出した。
「あのさ、ゆあんくん」
「ん?」
好きの2文字が、うりにとって重かった。ゆあんが一方的に伝えてきた好きが迷惑な程に重かった。
「ゆあんくん、俺のこと好きじゃん、?」
「その話今する?笑まあそうだけどさ笑」
うりは、自分の左手のすぐ隣にあったゆあんの右手をそっと握った。
「…うり、?」
ゆあんは不思議そうに、うりの方を見詰めた。
「俺さ、もう恋なんかめんどくさいし、意味ないと思ってたからしたくなかったんだよ」
「…うん」
「でも、ゆあんくんはずっと俺に好きを伝えてくれたじゃん?」
「そーだね、」
「それ、すっごい嬉しかったんだよ」
「….」
「でも、それがちょっとプレッシャーだったりもした」
「そっか、」
ゆあんは、うりの言葉を聞き漏らさないように、しっかりと耳を傾けた。
「ちょっと…というか、結構な事件もあったりしたけどさ」
「うっ、、」
「まあ…それでも今こーやって仲良くできてるのは、偶然とかじゃなくて、運命だと思うんだよ」
「うん」
「俺、真剣な話するの得意じゃないんだけどさ?笑」
「知ってる、笑」
うりの全ての言葉をゆあんは真正面から受け止めた。
「この話だけは、ちゃんと話したい」
「…うん」
うりは、ゆあんを今までにないくらい真剣な表情で見詰めた。
「ずっと俺に好きって言ってくれて、好きでいてくれてありがとう」
「….」
─── 1月30日 00:00
─ 俺も、ゆあんくんが好きです
「ぇ、は、?」
「誕生日おめでとう。ゆあんくん」
うりは、ゆあんを優しく抱き締めた。
「まっ、て、…っ」
「ん、?」
ゆあんもうりの背に腕を回し、うりを強く抱き締めた。
「しんじらんない、かも、」
「えぇー笑」
ゆあんは涙を流しながら、ぽつりぽつりと言葉を繋げた。
「まあ、俺からの誕プレは俺!的な?笑」
「さいこう、だいすき」
「うん、俺も」
そっと離れ、うりはゆあんの涙を拭った。
「ねえ、うり」
「なに?」
「きすしていい?」
ゆあんは、子犬のような目でうりを見る。うりは、ゆあんのその顔に弱かった。
「….いーよ、」
──── ちゅ
「ん、⸝⸝」
2人がキスをするのは、初めてでは無い。でも、お互いがお互いを好きでキスをするのは、初めてだった。
「ゆあんくん、」
「なあに?」
「おめでと、!」
「うん、ありがとう」
きっと、この日はゆあんにとっても、うりにとっても忘れられない思い出になる。
どんな喧嘩をしても、どんな事件があったとしても、一度心を通じあわせてしまえば大丈夫だ。だって2人は、恋人なのだから。
ゆあんのスマホからは、『おめでとう』のメッセージが鳴り止まなかった。
《あとがき》 ※見なくても大丈夫です
ここまで読んで下さり、ありがとうございました!約17000文字の大作です。私自身、誰よりもゆあうり、ゆあんくんを愛している自信がありました。なので、せっかくの大好きなゆあんくんの誕生日には大好きなゆあうりをどうしても上げたかったんです。
そして、今日でなんとゆあんくんも20歳です。こんなに素敵な機会があるのだから、今までやりたかたっけど手を出せていなかった本気の小説を書きました。
実はこのノベル、2024年の1月後半から書き始めてたんです。1年以上かけて、この物語を完成させました。
また、このお話のタイトル「Love Amidst Discord」は、「不和の中の愛」という意味を表しています。要は、不仲だけれど、その関係には愛がある、みたいな意味です。不仲組って呼ばれているけど、本当はめちゃくちゃ仲良しなゆあんくんとうりさんにぴったりだと思いました。
この小説には私の幻覚しか詰まってないので、もちろんご本人様には関係あるわけないです。私のゆあうりへの愛が伝わればな、と思います。
あと普通に頑張ったので沢山♡欲しいです!笑
余談なんですけど、Xにてご本人様からいいね頂きました🎶ほんとにうれしいです!
長々とお話してしまい申し訳ないです。ここまで読んで下さり、本当にありがとうございました!!!!
ゆあんくん、誕生日おめでとう꒰՞⸝⸝⊃ ·̫ <՞꒱♥
コメント
1件
ゆあんくんおめでとうございます~!! 題名からして神がかってる、✨ 本人様からもらえたのはうれしすぎる、、!!