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「えっ?」
「僕は2度、あなたに会っています」
「に、2度?」
私は初めてとしか記憶していない。
いったいどこで……
「1度目はスイミングスクールで。あなたが常磐先生に個人レッスンを受けていた時です。僕は違う生徒さんとレッスンしていたんで、遠くからあなたを見ていました」
「そうだったんですか……。すみません、全然気づいてなくて」
「……ですよね。気づかないですよね……。じゃあ、リゾートホテルですれ違ったのも覚えてないですよね?」
「リゾートホテルで? 涼平先生、あの場所にいたんですか?」
「はい。たまたま父と食事をするためにあのホテルに行ってたんで……」
「お父様と?」
「実は、あなたをホテルまで乗せた運転手が僕の父なんです。長年、常磐グループの運転手をしてて、あの日は父の誕生日だったんで、一緒に食事をと僕が誘いました」
「まさか、そんな繋がりが。お父様には大変お世話になりました。とても紳士的で楽しくお話していただきました。お誕生日だったなんて知らなかったのでお祝いも言わずにごめんなさい」
あの時の素敵な人が涼平先生のお父様だったなんて。そう言われてみれば、何となく似てるかも知れない。
「いえいえ。家で、明日はTOKIWAスイミングスクールの大切な生徒さんをリゾートホテルまで送るんだって言ってたんで、せっかく行くなら食事しようと誘ったんです。それで、あなたを見かけて、すぐに双葉さんのことだって気づいたんです」
大切な生徒だなんて……
理仁さんは、私をどんな風に運転手さんに伝えたんだろう。
「そうだったんですね。それにしても涼平先生は親孝行ですね」
「とんでもないです。父には早く彼女を紹介しろって言われてるんですけど、なかなかで……何かと心配かけてます」
「涼平先生は24歳ですよね。私の一個下。確かに今彼女や彼氏がいたら楽しいかなって思いますよね」
「双葉さんも彼氏いないんですか?」
涼平先生はとても驚いた顔をした。
「い、いませんよ」
「ホテルでお見かけした時、彼氏と待ち合わせなのかと思いました」
「……あ、いえ。残念ながら彼氏を待っていたわけじゃありません」
まさか、その相手が理仁さんで、その後……なんて絶対言えない。
「あの時のあなたがとても綺麗だったので、彼氏と会うのかも……なんて、勝手に色々想像して。気持ち悪いですよね。すみません」
「あっ、いえ、そんな……。別に気持ち悪いなんて思いません。だけど、私が綺麗だなんて目の錯覚です」
「あなたをお見かけしたすぐ後に父が来たので、声はかけられなかったんですが、あまりに素敵な双葉さんに、本当はすごく話しかけたかったんです」