テラーノベル
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カラン、と氷が溶けて崩れる音がする。
「ン…」
氷の溶けた水と混ざった液体を男は飲み下す。
テーブルの上にはモノクロームの林檎が一つ。
レコードの流れる空間でゆらゆらと揺れる揺り椅子に腰掛け、ゆったりと酒を飲みながら時間を過ごす男…水無月は徐に体勢を変え、机上の林檎をつつく。
指先が触れたところからじわじわと林檎は赤く染まる。
赤く、赤く、毒々しいほどの赤に。
「〜♪、♪、♪〜」
酒で潤った艷やかな唇からは途切れ途切れの歌が零れ落ちる。
「♪、♪〜…♪」
ひとしきりつついた彼は真っ赤な林檎を掴む。
「死の林檎、ねぇ…」
みし、めきと軋む音を鳴らしている林檎にその細い指が埋まっていく。
満足したのか彼は林檎を机上に戻し、部屋を去っていく。
残されたのは、空のグラスと指の形にへこんだ林檎だけだった。