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塩レモンが2人でしゃぶしゃぶを食べた日のエピソード(妄想)
_________________________
💛 side
その日は、珍しく仕事が早く終わった
撮影が予定より巻いて、時計を見るとまだ夕方の六時過ぎ
帰って台本を読むか
適当にご飯を食べて、早めに寝るか
そんなことを考えながら駅に向かっていた
ふと、乗車駅を眺める
連絡先を開いて、少しだけ迷った
塩﨑太智
別に用事があるわけじゃない
仕事で何か確認したいことがあるわけでもない
ただ、なんとなく
今日は太智に会いに行こうと思い立った
乗るべき車両とは反対側の方面
「……電話してみるか」
自分でも、なんでそう思ったのかわからない
発信ボタンを押す
数回の呼び出し音のあと、聞き慣れた声がした
『はいはいー』
「太智、今何してる?」
『家おるけど…なんで?』
「今日、もう仕事終わったんだけど」
『おぉ、そうなん?』
「今からそっち行っていい?」
『え?』
電話の向こうが、一瞬静かになる
「いや、無理なら全然いいんだけど」
『なんで急に?』
「なんとなく」
『なんとなくで人ん家来る!?』
「だめ?」
『いや、だめちゃうけど』
太智が笑う声が聞こえる
「一緒にご飯でも食べようかと思って?」
『ええけど…何食べたいん?』
「何でもいいよ」
『それ一番困るやつやん!』
「太智の食べたいもので」
『んー、じゃあ適当に買い物しとくわ』
「え、わざわざ?」
『なんも食べさせれるものないからな。だって仁人来るんやろ?』
なんでもない言葉なのに、妙に嬉しかった
「じゃあ、俺も何か買っていくよ」
『ええよ、疲れとるやろ』
「あざすー」
電話を切る
気づけば、少し笑っていた
なんだろう
ただ寄ってみようと思い立っただけなのに
ちょっと楽しみになっている自分がいた
💙 side
「え、ほんまに仁人来るん?」
電話を切ってから、もう一回声に出した
いや、今さっき自分で返事したんやけど
なんか、急すぎて実感がない
仁人とは長い付き合いになる
同期やし、仕事でもいつも一緒
仲はいいし 信頼もしとる
でも、仕事終わりに突然『今から家行っていい?』なんて言われることはなかった
「なんやねん、急に」
そう言いながら、いそいそと買い物に向かう自分がいる
何より、仁人が自分から誘ってくれたことは嬉しかった
「料理は別にできんしな…しゃぶしゃぶにするか…」
スーパーに向かいながら何を買うか考える
豚肉
牛肉
白菜
きのこ
豆腐
あと、仁人の好きそうなもの
「仁人、何好きやったっけ」
長い付き合いなのに、意外とわからない
普段は仕事の話ばっかりやし
こうして二人きりでご飯を食べることもない
「まあ、いっぱい買えばええか!」
結局、買い物かごがいっぱいになった
💛 side
インターホンを押すと、すぐに扉が開いた
「おー」
「お邪魔します」
「いらっしゃい」
太智が照れくさそうに笑う
いつもの初期装備じゃなくて、ゆるい部屋着
髪が無造作なのも、すっぴんも見慣れてるはずなのに。なんというか
すごく、家の太智だった
「何?」
「いや」
「なんで見とるん?」
「別に」
「変なやつ!」
笑いながら中に入れてくれる
部屋には、鍋の準備がしてあった
「え、すご」
「やろ!」
「こんなに買ったの?」
「仁人来るから」
太智が得意げに笑う
その顔を見て、凄く嬉しくなった
俺が来るから
たったそれだけの理由で、こんなに準備してくれたんだ
「ありがとう」
「ええよ、ほら、座って!」
「俺も何か手伝うよ」
「もうほぼ終わっとる」
「じゃあ皿出す」
「それくらい座っとき!」
「いや、何かさせてよ」
「仁人、意外と落ち着きないな」
それはお前だろ
そう思いながら笑った
💙 side
「いただきまーす!」
「いただきます」
鍋から湯気が上がる
「仁人、肉入れてええ?」
「いいよ」
「いっぱい入れるで!」
「ちょっと待って、入れすぎ!」
「ええやん!」
「火通るまで待ちなよ」
「わかっとるって!」
仁人が呆れたように笑う
俺も笑う
なんか、不思議な感じ
普段は楽屋とか撮影現場で一緒におるのに
今は俺の家で、二人でしゃぶしゃぶを囲んでる
しかも、特別な話をするわけでもない
最近の仕事のこと
メンバーのこと
しょうもない話題
本当に、いつも通り
でも、なんとなく楽しい
「太智、これおいしい」
「ほんま!?」
「うん」
「よかった!」
仁人が笑う
それを見て、俺も嬉しくなる
なんやろ
人と一緒にご飯食べて、喜んでくれるのって、こんなに嬉しかったっけ
「仁人、もっと食べ!」
「食べてるよ」
「まだ肉あるで!」
「太智、買いすぎだって」
「余ったら明日食べる!」
「適当だなあ」
「仁人が急に来るからやろ!」
「それはごめん」
「謝らんでええけどな」
ただ理由もなく二人で笑いあった
こんな時間は初めてだった
💛 side
食べ終わって、片付けも済ませた頃
ふと、会話が途切れた
別に気まずいわけじゃない
ただ、二人でテレビを見ているだけ
でも、太智はどうも落ち着かないらしい
「仁人」
「何?」
「ちょっと待っとって」
「うん?」
太智が立ち上がる
そして、なぜか掃除道具を持ってきた
「何してるの?」
「網戸掃除しよかなって」
「は?」
思わず聞き返した
「今?」
「うん」
「なんで?」
「なんとなく?」
いや、なんとなくで網戸掃除する?
しかも、人が来てるときに?
「太智、今じゃなくてよくない?」
「気になってもうたんやもん」
「いや、そうかもだけど」
太智は楽しそうに窓を開ける
そして、ベランダに出て網戸を拭き始めた
「網戸って意外とすぐ汚れるんよなあ」
「ほんとだね」
「これ掃除したら気持ちええで!」
「そうだね」
なんだ、この時間
俺、さっきまで楽しくしゃぶしゃぶ食ってたよな?
気づいたら彼の家で、網戸掃除を見学している
なんかもう…太智らしい
「仁人、何笑っとるん!」
「いや、太智らしいなって」
「何が!」
「全部」
太智が不満そうにこちらを見る
その顔が面白くて
つい、いたずらしたくなった
窓に手を伸ばす
カチャン
鍵を閉めた
💙 side
「……え?」
音がした
振り返る
仁人が窓の向こうで笑っとる
流石に大声だと近所に迷惑だと思い、口パクとジェスチャーで必死に訴えた
(じ・ん・と!)
(なに?)
(鍵!しめた!?)
(うん)
(はあ?!)
思わず窓を叩く
(あけろー!)
窓の向こうで、仁人がめっちゃ楽しそうに笑っている
こんな仁人、あんまり見たことない
普段はもっと落ち着いとるし
どっちかというと、俺のこと呆れた顔で見とることが多い
なのに
今は子どもみたいに笑ってる
なんか
ええな
(じんとぉ…寒い!)
寒がる動作を見た仁人が、すぐに鍵を開けた
「ごめんごめん」
「ほんまに!」
部屋に戻ると、仁人がまだ笑っていた
「そんなおもろかった?」
「めちゃくちゃ」
「ひど!」
「ごめんって」
そう言いながら、仁人が俺の腕に触れた
「冷えてない?」
「大丈夫やけど!」
「ほんと?」
「うん」
仁人が安心したように笑う
腹立つやつやけど、なんか心がぽかぽかする
…変な感じや
💛 side
「仁人、ほんま性格悪いな!」
太智が笑いながら言う
「太智が面白いことするからでしょ」
「網戸掃除しただけやん!」
「人が来てるときにね」
「気になったんやもん!」
また笑ってしまう
太智といると、こういうことばかり起きる
予想外で
くだらなくて
でも、妙に楽しい
「太智」
「何?」
「今日、来てよかった」
そう言うと、太智が少し驚いた顔をした
「ほんま?」
「うん」
「ふふ、よかったな」
その笑顔が、やけに眩しく見えた
なんだろう
今まで何度も見てきた顔なのに
今日は少し違って見える
「また来てもいい?」
口にしてから、自分でも少し驚いた
太智も目を丸くした
「ん…ええよ」
そして、嬉しそうに笑う
「今度はもっとちゃんと料理するわ」
「今日も十分だったよ」
「次は何食べたい?」
「何でも」
「またそれ!」
太智が笑う
俺も笑った
帰る時間になっても、なんとなく名残惜しかった
💙 side
「じゃあ、そろそろ帰るね」
玄関で仁人が靴を履く
「おー、気つけてな」
「今日はありがとう」
「まぁ…こちらこそ?」
仁人が振り返る
「太智」
「何?」
「網戸、綺麗になった?」
「まだ途中や!」
「ははっ!」
また笑われた
「仁人のせいやろ!」
「ごめんごめん」
仁人が笑いながら手を振る
「また明日」
「うん、また明日な」
扉が閉まる
部屋が静かになった
さっきまで仁人が座っていたソファ
二人で使った食器
まだ少し残っているしゃぶしゃぶの匂い
なんか
変な感じ
いつもなら、一人の時間が好きやのに
今日は、少し静かすぎる
「……楽しかったな」
思わず声に出した
仁人があんなに笑うなんて
知らんかった
いや、知っとるはずや
何年も一緒におるんやから
でも
今日の仁人は、ちょっと違った
仕事の顔じゃなくて
メンバーとしての顔でもなくて
ただの吉田仁人だった
そのことが、なんとなく嬉しかった
💛 side
帰り道
スマホが震えた
太智からだった
『今日はありがとな! また飯食お!』
文末に、にっこり笑った絵文字付きで。思わずあいつの顔が浮かんでくすっと笑う
『こちらこそ。しゃぶしゃぶおいしかった』
少し考えて、もう一通送る
『網戸掃除も楽しかった』
すぐに返事が来た
『それは仁人だけやろ!!!』
周りに変な人に見られないよう声を殺して笑う。くっくっと肩が揺れている
何やってるんだろう、俺
ただメンバーの家でご飯を食べただけ
それなのに
こんなに楽しかったのは、久しぶりだった
太智のことは、昔から好きだった
同期として
仲間として
一緒に頑張ってきた大切な存在として
でも、今日
少しだけ違う気持ちが芽生えた気がした
もっと二人で過ごしたい
仕事以外の太智を、もっと知りたい
あの笑顔を、また自分だけに向けてほしい
そんなことを考えてしまう自分がいた
「……やばいな」
小さく呟く
まだ、この気持ちに名前をつけるつもりはなかった
翌日・💙 side
「おはよー!」
楽屋に入ると、柔太朗と舜太がいた
「だいちゃん、おはよ!」
「おはよう!」
荷物を置いていると、奥に座っていた仁人とも目が合った
「おはよう」
「仁人…おはよ」
いつも通りの挨拶
なのに
なんか、ちょっと照れくさい
昨日、二人でご飯食べたから?
いや、そんなもんで照れたりはしない
自分でもよくわからへん
すると柔太朗が、にやっと笑った
「ねえ、だいちゃん」
「何?」
「昨日、仁ちゃんと一緒だったんでしょ?」
「え!?」
思わず声が裏返った
「なんで知っとるん!?」
「仁ちゃんが昨日、だいちゃんの家行ったって言ってたから」
「え、そうなん!?」
舜太が食いつく
「二人で何したの?」
「しゃぶしゃぶ食べただけや!」
「へえー!」
柔太朗が楽しそうに笑う
「二人きりで?」
「そうやけど!」
「仲いいねえ」
「同期やからな!」
慌てて答える
すると、仁人が横から口を挟んだ
「あと、太智が網戸掃除してた」
「ええやろ別に!」
「え!? 何それ!?」
舜太が爆笑する
「だいちゃん、なんで!?」
「気になったんやもん!」
「しかも俺、外に閉め出した」
「ほんま酷いんやで!!」
柔太朗が腹を抱えて笑い始めた
「何してんの二人とも!」
「仁ちゃん意地悪やなあ!」
「太智が面白かったから」
仁人が笑う
その顔を見て、俺も笑う
「ほんま、仁人って性格悪い!」
「太智が変なんだよ」
「変ちゃうわ!」
いつも通りの言い合い
いつも通りの楽屋
でも、柔太朗が俺たちを交互に見て、少しだけ意味ありげに笑った
「なんか、二人とも楽しそうだね」
「普通やって!」
俺が即答すると、仁人も頷いた
「普通だよ」
そう言いながら、仁人が俺を見る
目が合う
昨日の夜みたいに、少しだけ笑う
その瞬間
なぜか、胸が跳ねた
慌てて目を逸らす
なんやねん
ほんまに
ただ、しゃぶしゃぶ食べただけやのに
昨日までと同じはずの仁人が、今日は少しだけ違って見えた
コメント
6件
あき様、これって恋の予感ってやつですかね? なんだかとっても心温まります✨ 素敵なお話をありがとうございます😄
こういうただただ幸せな作品って心がとっても温まります🤭💖 互いに気持ちに違和感があるけど、何かと言われるとわからないもどかしさがすごくいいです! 今後の展開楽しみにしています🎶