わたしは目を覚ました。暗く狭いところから出て、見た景色はすごく眩しかった。何か繋がっていたものが切れてしまい、少し不安になったが空気に触れて、産声を上げた。様々なヒトたちがいたが母だとわかるこの暖かさ。この日初めて自分以外の肌に触れた。目を覚ますとここは知らない場所で、母ではないヒトも見えた。おそらく父だろうか、わたしをずっとみてくる。
「どうしたんでちゅかー??」
どうもしていない。わたしは母とは別のベッドで寝転んでいた。母も目覚めたのかこっちをみている。
「お父さん初めて授乳してもいいかしら」
「看護師を呼んでみよう」
白い服を着た人がやってきて、わたしは母の胸元に抱き抱えられた。口に当たる感覚があり、何か吸っている。わたし自身はこれが何かわかっていないが、なぜかこれがいいものだとわかる。
わたしはもう一度眠りについた。
何か気持ち悪い。お尻から何か出ている。気持ち悪い気持ち悪い。わたしは声を出した。
父が来て
「どうしたんでちゅか??」
「どうもしてへんか」
どうもしてるわ!気持ち悪いので一思いに大きな声を出した。
「お父さんオムツじゃない?」
母はよくわかっている
「あぁオムツか..オムツね」
父は慣れない手つきでわたしを持ち上げる。
「よしできた」
ようやく気持ち悪さから逃れられた。しかしその後もわたしは吸っては寝て、そして気持ち悪さで泣いてという日々が五日も続いた。
何気ない日を過ごしていた六日目の朝今日は慌ただしい。わたしを抱き抱えて車に乗せた。
父に似たヒトだが、彼は髪が白かった。彼は運転している。
母と父と髪が白いヒトに連れられて連れられてきたのは少し他の家よりも大きい家だった。
わたしは今まで寝転んだことのないベットで寝転んだ。
髪の白い人は車から降りた後庭にしゃがみ込んだ庭には広い土地が広がっており、植物や畑には果実が実っている。空は夕焼けで赤かった。
そして庭には小さな柿の木が植えられていた。
夕暮れと供に飛んできたとても小さな一匹の鳥。
窓から覗いていたのは赤い虎だった。