ほんのちょっと離れたところに、神社があったので、そこの石段に座り、僕たちは花火を見ることにした。
人が少ないとはいえ、ど真ん中に座るのも非常識だと思い、端っこに座ったが、物理的に距離が近くなってしまった。変に緊張する。
隣で「おいしー、おいしー」と、一口食べるたびに幸せそうに感想を言う白川さんを見ると、思わずふっと笑ってしまう。
先程までの気まずさはどこに行ったのだろうか。まあ僕が原因を作ってしまったので、良かったと思う。
「たこ焼き好きなんですか。」
「はい!2,3,4番目くらいに好きです!」
「接戦してるのはなんなんですか?」
「ラーメンとオムライスです。一番はお寿司。」
「僕もお寿司大好きです。」
すると白川さんは、「知ってます。よく言ってましたもん。」笑いながら言った。
「まさか、僕に合わせたんですか?」
「違いますよ!推す前から大好物です!」
それを聞いて、僕は白川さんのことを全然知らないことに気づいた。
「そういえば、いつから僕を推してくれてたんですか?」
「中1です。あ、丁度十年前です……ね…………。」
一瞬はっとしたような顔をしたと思ったら、数年前までよく見ていた、ライブやお話会に来るリスナーみたいな、照れとかいろいろ含めた顔になった。
「どうしたんですか?」
「いや………ごめんなさい、推しが目の前に居るんだって自覚して………ちょっと……………」
そうか。彼女からしたら、「昔の推しがたまたま一時的な仕事相手」という感覚なんだ。
きっと、彼女なりに、推しとして見ないよう意識してると思うが、たまに思い出して、テンションが上がってしまうという感じだろう。
「るぅ💛さん…?」
気づくと、僕の胸はさっきと違う意味できゅうっとしていた。きっと顔もひどかった思う。
「すみません、大丈夫です。」
「本当ですか…?」
「はい。」
「あ、あの。なんでも、言ってください、ね。」
その言葉は、どこか頼ってほしい、という気持ちの中に、大きな不安が隠れているようなものだった。
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