テラーノベル
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「今日は満天の星空です。」そうテレビが言っていたことを思い出した。空を見上げる。
そこには何も映っていない。
「なーんだ。何にも見えない」
天野俊斗。23。なにもない。常に生きる意味を探しては諦めまた探してはもうないと確信して諦める。
「つまんないな。」
本当につまらない。この世界は。だってなにひとつない。この世界には何がある?と聞かれたら、俺は答える。「なにもない。」
俺はいつからか何も感じなくなっていた。全てにおいてどうでもいい。そうだ、いつからなのか思い出した。中3だ。あん時の俺は、全てのことに興味があった。あれもやりたいこれもやりたい。高校はどこ行こうか。将来何になろうか。迷いに迷った結果これ。全てをやり遂げるなんて到底不可能。でもあの頃の俺はなぜかできると思ったんだよな。
「明日の天気は」俊斗がテレビを消す。その時、携帯がなる。中学の同級生から。
「なぁ、お前元気してる?」
してない。
「宇宙に興味ない?」
ない。
「今からお前んち行っていい?」
くんな。
宇宙なんて知ってどうするんだ。知ったからなんだ。そんな広い世界。俺には到底理解できないだろうし。…広い世界……。俺たちが知らない、まだ見ぬ…世界。
いやいや。俺は地球に生きてるんだ。宇宙に行くことなんてないし。
「宇宙ってなんでできたかしってるか?」
しらない。
「宇宙ができる前って、何もない無だったんだぞ」
何もない無。…何もない、空気も…?色も、形も、人という存在も、地球という存在も、太陽も、銀河も、宇宙も。じゃあ、宇宙ができる前…俺らは…?
生まれ変わる前とか、いうけど…生まれ変わりが存在しないってことか…?だって何もない無だから。…虫に生まれ変わることもない。植物も。空気にだって。宇宙が存在しなかったら、俺たちは…?いや、宇宙は…なんでできたんだ…?
「宇宙がもし突然なくなったら。どうなると思う」
どうなる。そりゃ、俺たちも当然なくなる。地球も。太陽も銀河もすべて。全てが無になる。無ってなんだ…?無って…。なにもない、黒も白もない。生まれ変わりすら存在しない…天国も。地獄も。…どういうことだ。
俊斗がメッセージを送った。
「くわしく」
「やっほーひさしぶり」
「…久しぶり。颯斗。」
「うわぁ…まーたおまえんち汚くなったなぁ」
「うるせぇ。それより早く聞かせろ」
「おー興味津々だねぇ。」
「もしこの宇宙が明日突然消えたとしたら。」
「なにもなくなる。」
「なにもなくなるって、それ、どういうこと。」
「そのままの意味だよ。無になる。」
「無ってなんだよ。」
「無は無だ。何も存在しない。水も空気も存在も。」
「じゃあ、生まれ変わりは?」
「生まれ変わり、なんて言葉は人間が作り上げた言葉だろ?…天国も地獄も。」
「じゃあっ!俺たちは死んだらどうなるんだよ!」
「無。が1番正しいと思う。」
「……っ!」
「天国なんて、そんなの人間が妄想したものだろ?」
「そんな、じゃあ…俺が死んだら、何もない、何も感じない…暗くも明るくもない。ただの無に行くのか?」
「ねぇ。そんな真剣になんないほうがいい。」
「はぁっ?だって!」
「俺は君に不安になって欲しくて宇宙を進めたんじゃない。」
「この空を。綺麗って思って欲しかった。」
「はぁ?この空ってなにもな…」
空を見上げると、そこは満天の星空だった。
「…!」
「宇宙は不思議だ。でも、そんな深く考える必要は君にはない。」
「宇宙にある、この星は。地球は。遠くから見ると、こんなに小さくて。ちっぽけなことなんだ」
「…!」
「だから。いま、気を重くする必要はないよ。」
「そう言いたくて。来た。だって、こんなに広い広い宇宙で、僕たちは、ほんの一粒。」
「少し人生に疲れても、まだ諦める必要はないよ。」
「…おまえ、ほんと。」
「それだけ。じゃあね」
「え?もう?」
「うん。また、いつかね」
「…おう?」
次の日。颯斗が亡くなった。
遺書には「宇宙を旅してくる」と。
星空を眺めた。
「……お前が…言ったのに。」
「この広い広い宇宙で。」
涙が溢れる。
「俺らは、ほんの、…一粒…だから…って」
君が消えた世界で、星だけが笑っていた。
#SF
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Ravi
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コメント
1件
うわあ、これ…一話でぐっと心掴まれました。満天の星空のはずが何も映らない空虚から始まって、宇宙誕生前の「無」の話で主人公が初めて興味を示す瞬間がすごく生々しい。颯斗が「綺麗って思ってほしかった」って言った後に本当に星が見えた流れは美しいのに、翌日の報せで全部ひっくり返される。最後の「星だけが笑っていた」が刺さりすぎてしばらく動けませんでした。悲しいけど、どこか温かさも残る不思議な話ですね。続きが読みたいです。