テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
六月。
梅雨の季節がやってきた。
窓の外では雨が静かに降り続いている。
昼休みの教室はいつもより少しだけ静かだった。
こさめ「雨、やだなぁ」
こさめが窓の外を眺めながら呟く。
捺「お前、名前に『雨』入っちょるのに?」
捺が突っ込む。
こさめ「それとこれとは別!」
捺「理不尽だな」
こさめ「だって湿気すごいもん!!!」
捺「それは分かる」
そんな話をしていると、担任が教室へ入ってきた。
「はい、席につけー」
生徒たちが慌てて自分の席へ戻る。
ざわついていた教室が静かになった。
「今日は転校生を紹介する」
一瞬で空気が変わる。
「転校生!?」
「この時期に?」
「男子かな女子かな」
あちこちから声が上がる。
こさめも少し驚いた。
六月に転校生なんて珍しい。
「入れ」
担任がそう言うと、教室の扉が開いた。
入ってきたのは、緑色の髪に黒のメッシュが入った生徒だった。
整った顔立ち。
どこか不思議な雰囲気。
教室が一瞬静まり返る。
「常盤須千です。」
落ち着いた声が響く。
「よろしくお願いします。」
それだけ言って軽く頭を下げた。
「かっこよ…」
「やばくない?」
「顔小さっ」
「9頭身やん」
女子たちが小声で騒ぐ。
男子たちも思わず見入っていた。
しかし当の本人はどこかぼんやりとしている。
まるで教室ではなく、もっと遠くを見ているようだった。
「じゃあ常盤は――」
担任が席を指さす。
「雨乃の隣な」
こさめ「えっ?こさ?!」
こさめが目を丸くした。
須千は静かに歩いてくる。
そしてこさめの隣の席に座った。
須千「よろしく」
須千が小さく微笑む。
こさめ「よろしく!!!」
すると須千は窓の外へ視線を向けた。
須千「雨、好き?」
こさめ「え?」
突然の質問だった。
須千「名前に入ってるから」
こさめ「あー」
こさめは少し考える。
こさめ「嫌いではないかな~」
須千「そっか」
須千はそれ以上何も言わなかった。
不思議な人だな。
それが第一印象だった。
◇◇◇
放課後。
こさめとなつはいつものように天文部へ向かっていた。
捺「転校生すごかったな」
こさめ「なつくん絶対そう言うと思った」
捺「いや実際すごいやん」
こさめ「まあね」
捺「友達になれそう?」
こさめ「どうだろ」
捺「こさめの隣だろ?」
こさめ「だからってすぐ友達になれるわけじゃないよ~」
そんな話をしながら屋上の扉を開く。
こさめ/捺『ただいまー!』
尊琴「おかえりー」
尊琴が手を振る。
尊琴「今日は遅かったね」
こさめ「今日、転校生が来たんです!」
すると蘭が反応した。
蘭「えっ!?転校生!?」
こさめ「らんくん食いついた」
蘭「どんな人!?」
こさめ「スイカ頭でした」
蘭「かっこいい?」
捺「たぶん」
蘭「会いたい」
いるま「なんで」
蘭「面白そうだから」
捺「らんちゃんらしい理由だな」
捺が笑う。
その時だった。
屋上の扉が再び開いた。
全員が振り返る。
そこに立っていたのは――
須千「こんにちは」
常盤須千だった。
一瞬、全員が固まる。
『え?』
こさめが目を瞬かせる。
こさめ「すっちー!?」
須千「こさめちゃん」
こさめ「なんでここに!?」
須千は少し首を傾げた。
須千「天文部だから」
こさめ「え?」
須千「入部希望」
数秒の沈黙。
そして――
蘭「新入部員きたーーーー!!」
蘭の叫び声が屋上中に響き渡った。
捺「声高っ!」
こさめ「うるさっ!」
蘭「部長だから!!」
いるま「関係ないだろ」
いるまのツッコミが飛ぶ。
また笑い声が広がった。
須千はそんな光景を静かに眺めていた。
そしてふと空を見上げる。
厚い雲に覆われた六月の空。
星は見えない。
けれど須千は知っているような顔をしていた。
雲の向こうにある星のことを。
もっと遠い場所にある星のことを。
六月の雨は、静かに降り続いていた。
192
463
87
コメント
1件
読んだよ〜第4話! 転校生の常盤須千くん、すごく印象的だった。緑の髪に黒メッシュとか整った顔立ちもだけど、「雨、好き?」って突然聞いてくるところが気になるし、天文部に入ってくるのも運命みたいでドキドキした。雲の向こうの星を知ってるような彼の雰囲気、重すぎず不思議でいいね。こさめたちとの関係がどう変わっていくか、すごく楽しみです🌙