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砂煙と燃え盛る炎の香りが辺りを支配する。
あのとき荒れ果てた戦場の中で、立っていられるのは千鉱と柴だけであった。予想外の敵襲により神奈備側の被害は甚大。全滅の可能性すらあった。ただ、幸いなことに酔揺以外の妖刀は毘灼側には落ちていないし、隔離している2名の契約者は無事だ。ある程度の時間があれば立て直せるだろうがーーそのある程度・・・・の時間をどう稼げばと算段を立てている千鉱に、相手側の首魁が声をかける。
『貴方が俺の手を取るならば、今は引きましょう』
『今の言葉に嘘はないーー今、選択肢はないはずだ』
『1人分の価値としては、破格と思うがどうでしょう?』
千鉱の背後で辛うじて立てていた柴が、その甘言に乗るなと叫ぶ。その声に千鉱は振り返り、自分に献身を捧げる彼の姿を視界に入れる。痛みで動くことすら苦痛だろうに、必死に千鉱を引き留めるように叫び、傷だらけの手を伸ばす。そのいたいけな姿に目を細めた千鉱は、愛刀である淵天を地に下ろす。そして視線とリップシンクで柴に祈りのように伝える。
『淵天を守って欲しい』
そして、千鉱は毘灼統領の方に向かい歩き始めた。大地を噛み締めるように歩みを進めながら、千鉱は相手に問う。
『俺だけがお前の元へ行く……淵天は渡さない。』
それでいいか? と静かではあるが深みを持って千鉱は尋ねた。美しい紅い双眸で真っ直ぐに前を見つめながら。その様子を正面で見つめていた青年は、至極満足そうに微笑みながら千鉱に向けて片手を差し出した。柴の痛々しい咆哮を聞きながら、あと少しで目の前の男に手が届く寸前で、千鉱は歩みを止めた。そして、腰に差したままの脇差を抜き自身の首に当てる。それに対して、何が起きようとしているのかわからない敵の青年は僅かな動揺を滲ませるが、千鉱はそれに構わず声を放った。
『約束に、俺の生死は関係なかったよな?』
言い切った瞬間に、脇差でもって自身の頸を千鉱は切りつけた。失われていく千鉱の意識は、柴の悲鳴と禍々しい炎に包まれていく光景を感じながら失われていった。
深い海の底に泳いでいくなんて、生身の身体では不可能なことは知っている。深くなればなるほど、水圧で身体の輪郭なんて無かったことになり、潰れて、ただの肉片に。やがて粉々になって海洋生物の餌になるだろう。それでも、光が差さない深海の底で横たわり目を瞑ることができたなら、こういう感覚なのだろうという深い眠りの世界に千鉱はいる。そして今、この目を開けて目を覚ませば、無作法な若者に無体を強いられることを知っている。
千鉱が囚われた直後にまず行われたのは、少年時代の自身を模した人形の前での性交渉。囚われの身に施されるそれは、意外にも暴力的に行われるものではなく、結婚初夜の生娘を扱うがごとく実に丁重なものであった。吸い込むたびに身体が甘く痺れる焚きしめられた香の匂いのせいか、快楽ばかりが千鉱を支配する。性器ではない孔に熱量を持った楔を打ち付けられ、揺さぶられていたその最中、感情なんてない作り物の瞳が、理不尽に犯されている見本モデルを蔑むように見下ろしていることに千鉱は気がつく。そして、哀れな彼は意識を無理矢理手放すことで、自分自身を何とか守ろうとするのであった。
眠りに落ちる前に『そのような』出来事があったからこそ、このディープブルーの世界で千鉱は籠城を決め込んでいる。ただ、それは思っていたより長くは続けられなかった。
「(……ああ、煩わしいあいつ・・・が呼んでいるーー抱くならば柔らかく瑞々しい人間おんなを抱けばいいのに)」
静寂な夢の世界を壊す、無礼な声が千鉱の頭に鳴り響く。その声は一緒に乱れた遊びをしようと、しつこく誘う。何を好き好んで、愛想も手練手管もない四十路前の傷だらけの男を抱きたいのかは、千鉱にはわからないし甚だ理解もできない。ただこの身一つが、壊滅寸前だった味方側を救う取引材料にはなった。それだけは事実として千鉱の中にある。
意識が無理矢理天井の方に引っ張られる感覚を、千鉱は覚える。一向に覚醒しない千鉱に痺れを切らした現世の男が、妖術でもって欲望を叶えようとしているのであろう。不愉快でどろりとした玄力が、千鉱の意識を足先まで包んでいく。ただの捕虜に対して随分な執着をしていることに、呆れにも似た感情を千鉱は抱いた。せめて、眠りの世界では自由にさせて欲しいものだと思うが、詮無きことだと諦め千鉱は濃青の空間に別れを告げる。
伏せられた瞼が微かに痙攣し、ゆるゆると開いていく瞬間を幽は見逃さない。長く繊細な睫毛の向こうにある美しい深紅が現れ、そこに背の高いスーツを纏った青年を映す。この空間の主人を視覚に捉えた千鉱は眉間に皺を寄せて、不快感を示した。何かを告げようと千鉱は口唇を開くが、それより先に、千鉱に覆い被さる青年ーー幽の口唇が重なることで生まれるはずの言葉が消える。絡み合う舌と呼吸、真新しいシーツと千鉱が纏う白襦袢の衣擦れ、唾液が混じり合う水音の全部が嫌らしくて、せめて耳を塞いでしまいたいと千鉱は願うが、両手ともに幽の両手で手首から押さえつけられているので叶わない。
最初に囚われていた部屋とは違い、広いベッドと閉じられたカーテンしか認識できない部屋の中で千鉱は思う。今の自分はピン留めされた標本の蟲だ、これでは。
そして、一体自分は何の蟲なのだろうと不要な思考を巡らせることで、この状況をやり過ごそうと千鉱は考えるーー
「……何を考えている? 俺がここにいるのに、貴方は明後日の方を見つめているなんてーーとても寂しい」
ふと離れた幽の口から静かな苦情。だが、言葉とは裏腹に実に恍惚とした表情を浮かべながら、寝台に捕らえた千鉱を見つめる。それとは真逆に、千鉱の表情は眉をひそめたまま、目覚めた時と変わらない翳りのある顔をしている。
「……今の状況は、まるであの日お前に3時間軟禁されたときに見かけた、蟲の標本のようだと思ってな……蟲ならば、俺は一体何れが似合いかと考えていた」
『だから、お前のことなんて一匙も考えていない』
そんな言葉が読み取れそうな嘲りを含んだ表情を千鉱は浮かべる。大抵の沸点が低い者であるならば、青筋を立てて逆上するであろうが、妖術師組織『毘灼』を纏め上げる青年にはそれは効かない。寧ろ、普段は口の端すらひくりとも動かないほどに表情がない千鉱が嘲笑であったとしても、口角を上げたのだ。その変化すら幽にとっては貴重なもの。20年近く片恋の如き執着を持っていた相手である、千鉱の希少な表情変化。それすらも、全てが幽にとっては愛おしいのだ。
愛しの君の反応にくくっと声を漏らしながら、幽は笑う。
その様子を千鉱は訝しげに見つめるが、次の瞬間、頸筋に激痛が走る。千鉱の頸に巻かれた包帯の上を、先程まで千鉱を抑えていた幽の右手が押さえつけているのだ。自由になっていたはずの千鉱の片手も、いつの間にか両手ともに、器用なことに幽の左手で拘束されている。普段であれば、このような捕縛を千鉱は誰にも許さない。しかし、仮死常態になるほどに、自身で首を深く切りつけたダメージと幽にアドバンテージがある空間、恐らく彼の妖術であろう玄力により、千鉱は殆ど抵抗することができない。できたとしても、子猫の戯れ程度のもの。
清潔な白の内側から漏れた、薄く閉じかけていた傷口が暴かれ溢れる、紅い色を見つめながら幽は実に穏やかに語り始めた。
「……貴方は蝶だ。黒揚羽、いや翅の付け根が赤いナガサキアゲハかもしれないし、その頬の疵痕のように白い部分を特徴と捉えるなら、紋黄揚羽も合っていると思う」
幽の語り掛けの半分も千鉱の頭に入らない内に、頸を虐めていた幽の左手は、いつの間にか離れていた。今それは、髪で隠れている千鉱の古傷の端に触れている。実に丁寧に慈しむようにそこに加える愛撫。今しがた感じていた痛みを与えるための接触とは、余りにも異なる。しかし、首筋にある痛みの余韻もあって思考が乱れる千鉱は、それでもお前には屈することはないという意思で持って、口を開く。
「……随分と博識なんだな、若造のくせにーー妖刀契約者ではすでにない俺には、何も価値はないはずだ。」
あの戦場で頸を掻き切り、死の一歩手前になったことで千鉱は妖刀『淵天』との契約を断ち切ることに成功した。以前会ったときに、幽という男は自分を殺すことは計画に入っていないことを千鉱は推測していたが、淵天まで道連れにはしたくはなかった。
自身の身がただ妖刀ごとこの場に拉致されたならば、洗脳などの術が施されていたかもしれないし、まだ命滅契約が生きているならば、淵天を奪ったのちに洗脳される恐れもある。早急で最善な道を判断しなければならなかったあのときに、千鉱が選べた選択は、これ以上の死人を味方に作らずに時間を確保し淵天も渡さないというものしかなかった。
正直、客観的に見れば妖刀契約者ではない『今の六平千鉱』には価値はない……はずだ。そのはずに違いないと千鉱は囚われてから幾らか反芻していた。しかし、時間が経過するほどにどこか違うのではないかと、千鉱は感じ始める。よくわからない迷路に迷い込みそうな千鉱を、幽の声が呼び止める。
「ーー貴方の価値を妖刀契約者や六平の弟なんていう、やがて消え去る物差しで測ったことなんてない」
「……では、どうして取引の材料を俺にした? 前にも話したが、自分を救った英雄の影を俺の中に見ているのか? その影はお前の世界にあの一瞬にいた17歳の俺だーー今はもういな……っ」
千鉱の言葉をうっとりとした様子で聞いていた幽は、言葉を紡ぐ千鉱の口の中に、自身の人差し指と中指を挿入した。その中をかき混ぜるように蹂躙し、2本の指で手慰みに舌を挟む。悪戯のように千鉱の口腔を幽は弄び続け、その合間に、額や唇の端、頬に刻まれた古傷に口付けを落としていく。すでに首筋に加えられた痛みと、口淫擬で与えられる刺激によって、やがて身体全身が弛緩し始める。力が入らなくなった千鉱には手首の拘束は最早不要で、その指先はシーツを僅かな力で手繰り寄せることしかできない。
「俺は、あの日出会った閃光を忘れたことはない」
そう言いながら、千鉱の口内から指をぬき、幽はスラックスのポケットからピルケースを取り出す。その中から小さな錠剤を1つ取り出し、息も絶え絶えな千鉱の口に含ませた。余りにも小さな白い粒だったので、反射的に飲み込んだ千鉱は不安げな顔で幽を見つめる。その表情に反応した幽は安心させるように語りかけた。
「今のは痛み止めだ。これから貴方を気持ちよくさせるために、痛みが邪魔をするのはよくない……美しい鋼のような理性は今から必要ない。しっかり、楽しみましょう?」
千鉱には死刑宣告のように、その言葉達が突き刺さった。
肌けられた襦袢の袂に、幽の手が侵入する。片方の乳首を指先で触れながら、千鉱の形が良い耳朶を喰んだ。背筋に弱い電流が走るようなゾワゾワとした刺激に、千鉱は小さく身を震わせる。いつの間にか、外気にさらされている千鉱の胸元にある小さな頂点の片方は、指先の刺激で硬くなり始めていた。それを指の腹で感じ取った幽は、それとは逆の胸に舌を這わせ始める。
「……っあぅ」
必死に声を殺していた千鉱が、漸く声を上げる。声を上げたとは言っても、小さなちいさなもの。でも、平時では聞くことは恐らく叶わない甘さを含んだ音をもっと響かせようと、幽は刺激を与え続ける。それに反応してからか、千鉱の身体はひくひくと震え、白い肌は徐々に内側から色味を帯びていった。
「……うっ、いや……それ、もうやめろ」
「『それ』って何のことか、わかるように教えてくれないか?」
幽は千鉱の訴えに対して、舌先の愛撫を中断し、耳元で幼い子供に尋ねるように言葉を綴る。その吐息混じりの話し声すら今の千鉱には強い刺激で、身体をひくりとさせた。続けざまに再び幽が何かを囁こうとするが、それを遮って熱い息を吐く彼が口を開いた。
「ーー胸、弄るのやめて欲しい……」
「余りお好みではないと?」
千鉱の言葉を聞いた幽は、再び胸元に愛撫と口付けを与える。再開した動きに千鉱の身体は打ち上げられた魚のように、1度大きく跳ねる。
「……ああっっ、いやって言ったのが、聞こえないのか? ーーっうう」
千鉱本人は睨みつけている視線を幽に浴びせながら訴えるが、身体の官能が引き出されている最中の表情に凄みはない。寧ろ自由にならない感覚に溺れている様子に、色香すら感じる。
「嫌ならやめましょうか……本当に嫌なら」
そう言いながら主導権を握り続ける彼は、舌先で硬くなった赤い先端に歯を立てる。空いている反対側も指先で弄ることも忘れずに。
「うぅ……しつこい、それ、もう無理……やぁ」
無理という言葉の割には、身体自体は鬱血痕が咲く胸を張って、幽から離れようとしない。殆ど無意識のうちであるその様子が、年の割に色事には手慣れていないことを想像させて幽はほくそ笑む。千鉱の訴えを無視して胸への行為を続けていくと、次第に彼の口から漏れるのは意味のない嬌声と短い言葉だけになっていった。
こわい、かんじたくない、しりたくない。
そんな千鉱の言葉を聞きながら幽は、千鉱の目尻から溢れた涙を舐め取った。両の柘榴石は、薄く涙の膜を張り瑞々しい果実を思わせるが、当たり前に甘さは感じない。幽は千鉱の様子を見ながら、シーツを握ることすらできなくなった左手を取り、掌に口付けた。そして、ゆったりと低い声色で話し始めた。
「今日は、貴方のために奉仕しようーー全て忘れられるように。これから・・・・もっと素直に快楽に溺れられるように」
千鉱の上から離れた幽は、寝台の脇にあるサイドチェストから潤滑油が入った小瓶と、この部屋には鮮やか過ぎる毳毳しい桃色をした棒状の物体を取り出す。そのケミカルピンクの物は所謂大人の玩具で、それを目にした千鉱は、目を見開いて微かに残った力で起きあがろうとする。しかし、背後のヘッドボードに背中が当たる瞬間に、幽に腰を抱かれながら襦袢の帯を解かれた。ただ羽織られている白い布地の間から、隠されていた場所が晒される。胸元の下に続く鍛えられた腹部やしなやかな腰、そこだけが幼なげな下生えと、緩く反応をしている陰茎。襦袢の袂を引き寄せて、それらを隠そうとする千鉱の姿を見つめながら、着衣の乱れすらない幽は目の前の彼に、ゆっくりと口付けを落とす。唇が触れ合う軽い接吻を何度か交わしていると、千鉱は握りしめた布から手を離して、両腕をだらりと伸ばした。そして、幽は羽織るだけだった千鉱の白襦袢を剥ぎ取り、寝台の下に落とすと悪魔のように彼に囁いた。
「……うつ伏せになって、腰だけを浮かせろ」
どうして、仇敵である若造に従わなくてはならないのかと、千鉱は脳裏で毒吐くが、不思議と身体がそれに従って向きを変えていく。特に妖術の類いのせいではないその反応に、戸惑っているのは身体の持ち主本人。そうして腰だけを浮かせた背後から、幽が抱きしめてくる。そして、彼は自身の長い指に纏わせた潤滑油で滑らせながら、千鉱の後孔に侵入した。
「あぁっ……それ、ぬけ……まぜるな……おとがいやぁ……」
そう訴えながら、千鉱は枕に顔を押し付けて両の掌で耳を塞ぐ。幽の挿入した指は2本。そのうちの1つが、千鉱が感じやすい部分を掠めた瞬間、腰がもっとと揺らぐ。それを見逃さない幽は、同じ部分をさらに2本の指でもって刺激を与えた。身体全身が快感に溺れ、言葉にならない喘ぎしか千鉱は発しなくなった頃合いをみて、指を全て抜き去った。侵入者がいなくなった紅く開く口は、はくはくともの寂しいといった様相を示し、陰茎もぽたぽたと先走りを溢した。
背後から与えられる快楽がなくなった千鉱は、どうしたものかと枕から顔を離して頸だけで振り返る。うるうるとした紅い宝玉の瞳と、頬が上気して興奮に染まっている色がある彼の美しさに、幽は素直に感嘆を覚えた。そして、その感情を抱いたまま、手に持った陰茎を模ったグロテスクな物を口先に押し付けた。
「先端だけでいい、舐めろ」
ある意味屈辱的な命令であるが、興奮で判断力も理性も融けかけている千鉱は少し戸惑いの様子を見せたのち、軽く口を開き、その縁を柔らかく喰んだ。小さく舌も出して、偽物の筋に沿って舐める姿は正に淫靡としか言えなかった。
数分だけその行為を強いたのちに、玩具を千鉱の口元から離す。その様子を見つめる千鉱に見せつけるように、玩具全体に潤滑油を纏わせる。その行動で予想される展開は想像に容易く、千鉱は身体を震わせた。
「貴方に選んで欲しい。うつ伏せと仰向け、どちらがいい?」
アルカイックスマイルを浮かべながら、千鉱に碌でもない選択を迫る。どちらかを選べ。そう深淵を映す瞳で幽は攻め立てるが、千鉱はそれを睨みつけるように見つめ返しながら、小さく口を開いた。
「……どちらでも、好きにすればいい。さっさと終わらせろ、この若造が」
僅かなインターバルで、淫蕩に染まりつつあった意識を立て直すその様に、幽は恐ろしさとさらなる高揚を覚える。思わず声を漏らして笑い声を上げ、横たわる千鉱を見下ろした。
「ーーそうか、ならば俺が貴方を好きなようにする……どちらにしても、溺れてもらうから」
そう言いながら微笑む幽に、千鉱は背筋に冷や汗が流れるのを感じた。しかし、その感覚を追い切る前に、千鉱のうつ伏せ気味だった身体は反転させられ、仰向けにされる。片手で、腰を浮かせた状態にし晒された菊座の入口に、幽はもう片方の手に握った滑る玩具をぴたりと当てた。ひくつく孔は、やってくる新たな侵入を存外素直に受け入れて、ゆるゆると挿入されていく。
「ーーひっ……ああぁ……」
千鉱の身体全身が弓のようにしなり、悲鳴のような喘ぎが唇から溢れる。最初は浅くゆっくりとしたスピードで、玩具を出し入れが行われる。泡立つような水音がいやらしく部屋に響き渡り、その音がさらに千鉱の身体に熱を与える。喘ぎ声が多少小さくなった頃合いになれば、グロテクスな無機物を性器になり果てたそれ・・のより深い部分へと挿入を始める。浅瀬で出し入れが行われていたときよりも、緩やかなスピードで動かされる行為によって、千鉱の薄い腹のどこに玩具があるかがわかり易い。ふと、視界を自身の腹部に向けた際に、それ・・の蠢きを理解してしまった千鉱は、忘れるために、瞳をきつく閉じた。
ずっと自分の中の神であり、人生経験も豊富なはず漸く捕らえた愛しい人の痴態は、幽を肚の底から興奮させるのに十分すぎるもので、心が躍る。だが、ここで狂乱は終わらない。より彼を堕としていくために、挿入された玩具の電源を幽はゆっくりと入れた。
「ーーっつあぁ……ううっ……?! これ……あぁ……」
人の手では与えられない、独特の刺激が千鉱の全身を支配する。頭の頂点から足先まで、電流が高速で駆け巡る。それは、1度で終わることはない。機械仕掛けのそれが緩やかな出し入れで千鉱の肚を入口から奥まで蹂躙する。快感を感じてか彼の腰は不規則に揺れ、立ち上がった陰茎も刺激を求めて震える。繰り返されたその行為が、叫びすぎて、掠れ気味になった千鉱の声を、意味のわからないといった混乱から甘さを帯びたものへ変化させた。
「……まだ、今日で終わることはない。貴方はもう何処にも出すことはない……貴方以外の妖刀契約者と六平国重が英雄になった理由、やがて起きる厄災に貴方は触れなくていい」
ずっと、俺の閃光でいてほしい。
そう告げながら、ずるりと、蠢く玩具を抜き出して端に追いやった幽は、千鉱の身体を壊れ物のように寝台に横たえ、無視されていた彼の生殖器を丁寧に擦り上げて、溜まっていたものを吐き出させる。
全てが終わると、まだ余韻が残る快感で震える全身を、幽は覆い被さるように抱きしめた。対して抱きしめられた本人は、与え続けられた行為の非日常さで、再び夢境へと旅立とうとしている。深紅の双眼が段々と伏せられていくが、口元が何かを呟くのに気がついた幽は、その動きを注意深く見つめた。
『あ わ れ だ な』
その言葉が幽に向けられたものか、手折られた千鉱自身の自虐かはわからない。それを今すぐに知る必要なんてない。
完全に寝落ちてしまった千鉱を見つめながら、幽は思う。焦がれていた存在は、もう逃げていくことを幽は許さない。ただ、何処までも縛るなんてことは重すぎるから、せめてこれからは夢遊の世界だけでは自由にさせよう、と。
眠る最愛の存在の頬を一撫すると、愛しき今は夢の住人のために、汚れたものを清める準備をしようと幽はそっと寝台から離れるのであった。