そうして質問を交えながら第1ゲームは終わった。
死者は7名だった。
ボタンを押し罪悪感に苛まれ、自ら命を絶った者は3名。
現在は全22名、だが動けるものは半数もいない。
フユキに質問をしていた関西からの転校生はあの地獄のような現場を見たあと、目の色が変わった。
まるで、誰かがこれを終わらせなければならない、とでも言っているような真剣な眼差しだった。
だがまだまだゲームは続く、漫画のように主人公が真相に迫って万事解決、なんてことはないのだ。
生き残れば勝ち、負ければ終わり。
大逆転なんかない。
どんなに足掻いても沼にはまれば沈んでいくしかないのだから。
第2ゲーム、第3ゲームと続いた。
現在は休憩時間、日が傾いてきた。
もうそんな時間か。
生き残っているのは9名。
《次は第5ゲーム、最終ゲームだよ》
それを聞いて歓喜する者が大多数であった。
《始める前に、ぼくが一体誰なのかを教えてあげよう》
そう言うとクマの被り物をとるフユキ。
美しく黒光りする髪、少し幼さのある顔。
名前すら知らない、クラスにいたかさえ分からない。
名無し君であった。
クラスメイトは驚きはしなかった、むしろ納得の表情であった。
「もうそんな時間か」
仕方がない、といった様子で前に出るフユキ。
「そうさぼくが裏切り者、ゲームマスターだ、どうだい?驚いた?まあそんな風には見えないけど、どちらかといえばでしょうねって顔してる、つまんな」
髪をクルクルと指に絡める。
「これから第5ゲームを開始する、と言いたいんだけど君たちには今から体育館へ行ってもらう」
そういうと扉の鍵が開く音がした。
2-Dは体育館に1番近いクラスで、出てすぐ左には体育館へと続く道がある。
フユキが先導し、クラスメイトはフユキに続く。
フユキはステージに立つと
「少しここで待っててね、今から連れてくる」
そういうとどこかに行ってしまった。
いつの間にか体育館の扉の鍵は締まり、窓も開かなかった。
数分したあと、複数の足音をたてながらフユキは帰ってきた。
「やあお待たせ、連れてくるのにちょっと苦労した」
帰ってきたフユキの手には手綱が5つあった。
手綱の先には訓練された犬がいた。
ピットブル、ドーベルマン、土佐犬。
「君たちにはこの訓練されたあぶなーいあぶなーい犬から逃げてもらうよ、ギャラリーに逃げても何を使ってもいい、ただ死ななければいいんだ」
相手の様子を伺いながら怯えさせるようにフユキは話す。
「説明はこれだけだ、さてもう始めていいよね?よし、始めよう」
そういうと1つづつ首輪からリードを外す。
合図があるまでは動かないのか、静止画のように犬は動かない。
「Los」
そうフユキが一言いうと、獲物を狙うように犬は素早く動き出す。
1人、2人と首や足を噛まれ、叫ぶ。
ギャラリーへ逃げた者は比較的安全だったと思う。
だが、すぐに犬は上へあがってきた。
逃げるために階段も使わず降りた者は足が折れ、犬に首を噛みちぎられ脱落した。
フユキは体育館の中心でつまらないといった顔で鎮座している。
フユキを殺れば終わるのではないかと考えた者がいるのだろう、俺も考えた。
だが1匹の犬によってフユキは守られている、フユキを殺ろうと近づいた時点で噛みちぎられ出血多量で死ぬだろう。
生き残るには逃げるしかない。
古くから人間は生き残るために獲物を狩り暮らしてきた。
今はそれが逆転した。
自身が獲物となり生き残るために逃げ惑い、捕まれば食われる。
一体誰が生き残るのだろうか。
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