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「あはは、あの二人、いつの間に仲良くなったんだろ」
左隣に座るナギがその様子を見ながら可笑しそうに笑い、何を頼もうかとメニューを開いている。
妙に距離が近い気がするのは、気のせいか?
「仲いいね、東海と美月さん」
すると右隣に座っていた雪之丞が、二人の様子を眺めながら、くにゃりと寄りかかってきた。
「うわ……ちょ、ちょっと……雪之丞! 重い」
「重くないよ。蓮君が軽すぎるだけだし」
「いや、体重の話じゃなくて!」
「あっ、ズルい。俺もくっつくから」
雪之丞に抱きつかれ、蓮が困ったように眉を下げると、反対側にいたナギまで蓮の身体に手を回してきた。
「はぁ!? なんでそうなる!? って言うか、重いし身動き取れないって!」
「……モテモテですね、御堂さん」
端の方に移動した弓弦が、苦笑まじりに呟き、涼しい顔でジュースを啜る。
「うーん、ただ酔っぱらいに絡まれてるだけのような気もしないけど……」
雪之丞って、こんなに酒弱かったか? 確か顔色一つ変えずに飲み続けていたはずなのに……。
本当に酔っているのだろうかと、疑問すら湧いてくる。
「お待たせしました~、山芋鉄板焼きと串盛です~」
「あっ、えっと、適当に置いといてください」
店員が料理を持ってきた途端、雪之丞がパッと蓮から離れ、テーブルに並べられた皿や小鉢を見下ろしながら、嬉々として箸を手に取った。
「うわー、美味しそう。ねぇ蓮君見て、ふわっふわ」
「え? あ、あぁ……うん、そうだね」
「蓮君も食べる?」
そう言いながら、雪之丞が蓮の口元に串盛の唐揚げを差し出す。
「いや、僕は自分で……」
「早く、ソースが垂れちゃう」
「……」
急かされて仕方なく、蓮はそっと口を開けた。だがそれを、目の前でナギがパクっと横取りしていった。
「あっ!」
「うん。んまい……。ゆきりん、ありがと」
ふふんと鼻を鳴らし、ナギが意味ありげな視線を雪之丞に向ける。その表情に、雪之丞がほんの一瞬だけムッと顔をしかめたのを、蓮は見逃さなかった。
「お兄さんには俺が食べさせてあげるよ。ほら、口開けなよ」
「っ、って! それ、絶対熱いやつ!! ちょっ、待て、待ってナギ!?」
口元に湯気の立つ、餡がたっぷり絡んだ肉団子が迫る。
今食べたら絶対唇が死ぬ――火傷するって!!!
目の前にニヤニヤと意地悪な笑みを張り付けたナギの顔が迫り、思わず目を瞑ると、そのまま口の中に押し込まれた。
「あっつっ、~~~ッ!!!」
予想通り、熱くて痛く、舌がヒリヒリする。涙目になりながらも、なんとか咀嚼して喉の奥に流し込む。
「……ッ、はぁ……ッ、お前な……ッ」
「ははっ、お兄さんの慌てっぷり、超ウケる」
「ッ、いい性格してるというのに……っ」
こっちは必死だったのに、この男は……。
「……お兄さんの唇、餡が付いててなんかエロいね……」
そんなことをボソッと耳打ちされ、蓮はぎょっと目を見開いた。
「は!?」
「あはは、冗談だよ。本気にした?」
「……ッ」
ナギにからかわれたのだとわかり、一気に脱力する。
先ほどの表情が気になって、チラリと雪之丞に視線を向ければ、彼はちょうど届いた琥珀色のカクテルをクイッと一気に飲み干しているところだった。
「おいおい、大丈夫なのか?」
「平気。……このくらいじゃ酔わないよ」
口を尖らせて、不機嫌そうに雪之丞が答える。
いや、明らかにいつもよりペースが速い気がするのだが。
「……まぁ、無理するなよ」
「してない」
取り付く島もない。一体何が雪之丞の機嫌を損ねたのかわからないが、これ以上突っ込んでも逆効果だろうと、そっとしておくことにした。
それにしても……どうしてこうなった?
「ねぇ、蓮さーん、聞いてます? もー、みんな信じられない」
「ハハッ、聞いてるよ。もちろん」
目の前には、ビールジョッキ片手に赤ら顔で管を巻く美月の姿がある。
すっかり出来上がっている彼女は、呂律が回らず、何を言っているのかさっぱり理解できない。
「……うぅ、見ちゃったのよ。監督が、地味な服着た女の人の腰を引き寄せながら歩いてるの。服装は地味だったけど、胸がすごく大きくて……。男の人って、やっぱり胸が大きい人のほうがいいの? そういえばドラゴンライダーのヒロインもMISAだったし! あんな胸が大きいだけの女優のどこがいいのよ」
「あー、まぁ……監督の女癖の悪さは有名だからね。MISAさんの事はよくわからないけど……」
美月の話に適当に相槌を打ちつつ、蓮はビールを煽る。
「監督ってスケベが服着て歩いてるような人だもん。仕方ないよ」
蓮の腕に縋り付きながら、雪之丞がウンウンと頷く。
「蓮さんは? やっぱり大きいほうがいいの?」
「へ? ぼ、僕?」
顔を覗きこまれて返答に困る。正直、そんなこと考えたこともなかった。
「それ、俺も知りたいな。どうなの?」
雪之丞の反対側から、ナギがニヤニヤと笑いながら便乗してくる。
(ほんっと、いい性格してんな……僕がゲイだって知ってるくせに)
内心で毒づきながら、蓮は小さくため息を吐いた。
「別に関係ないんじゃないか? 好みなんてそれぞれだし」
「ふ~ん、じゃあ蓮さんって、どんな子がタイプなの?」
「どんなって言われてもなぁ……」
随分グイグイ来るなぁと思っていたら、いつの間にか雪之丞までもが、目を皿のようにしてこちらを見ていた。