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再オーディション当日
香織先輩が勝ちますように、香織先輩が勝ちますように…
香織先輩が勝ちますように香織先輩が勝ちますように香織先輩が勝ちますように
「香織先輩が勝ちますように香織先輩が…」
「ちょっと、声漏れてるって。」
「えっ…夏紀。」
「バカ、一年生引いてんでしょ。」
「ご、ごめん。」
「少しは落ち着きなよ。大丈夫だって、きっとさ。」
そう言い残して夏紀はどこかへ行ってしまった。
根拠もないのに大丈夫なんて言葉、聞きたくもない。私も内心そうは思ってるけど…
それでも高坂が勝つ可能性だって、捨て切れないもの。
お願い神様…今日だけは香織先輩の見方をしてください…
あ、香織先輩だ…
「香織先輩!」
「頑張ってください。」
わたしは、いつもの倍以上薄っぺらい言葉しか吐けなかった。
色んな感情が、ブレーキをかけているから。
頑張るのはわたしじゃない…香織先輩なんだ。
わたしは影から見守るだけ…!
「麗奈ーーーーー!!!!」
「わっ!ちょっとなに。」
「はぁ…ご、ごめん…これだけは言おうと思って…」
黄前久美子が全速力でかけてきた。
「もう…私もう行かなきゃなん…」
「頑張って!!」
「私、一番麗奈のこと応援してるから!! 」
「久美子…」
「先輩なんてぇ…麗奈の実力で…ぶ、ぶっとばせぇ〜…!!」
「…なにそれ。言い過ぎ。」
久美子の言葉で思わず笑いが漏れた。
なんとなく緊張も…少なくなった気がする。
でもまあ私だし、言うほど緊張はしてなかったんだけど。
「中世古さん、高坂さん、二人はそろそろ準備を始めてください。」
「はい!」
よし…先輩だからって遠慮はしない。
わたしの実力でこのオーディション全体を圧倒させてやる。
そして絶対…全国金を獲る。
🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺
香織先輩…すごくいい音…
でもでも、うちの麗奈だって負けてないし…
やだ、わたしが緊張してきちゃうじゃん!
頑張って麗奈…頑張れ!!
🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺
あぁ…香織先輩やっぱりいい音…♡
こんなの、香織先輩がソロで間違いないじゃない!
ほんと、こんなオーディションやってなんの意味があるってのか…香織先輩で決まりなのに。
けど高坂…ううん、気にしない。
私は香織先輩を信じるのよ。
🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺🎺 🎺
よし、麗奈、出だしはいい感じ…
やっぱり綺麗な音…
…あれ、なんか…
どうしよう…麗奈、いつもと全然違った。
緊張?でもそんな、麗奈が緊張で吹けないとか…先輩に遠慮なんてするわけないし…
こんなの、全然麗奈の音じゃないよ。
絶対おかしい、何かがおかしい…
「それでは、中世古さんがいいと思う人。」
パチパチパチパチパチパチパチ…
…わたしは麗奈に投票するんだ。約束したんだから…
でも今日の演奏でいえば香織先輩の方がーーー
いやいや、麗奈に殺されちゃう。
本番に上手く吹けたら万事OKだし…
本当に大丈夫かな…麗奈。
「次に、高坂さんがいいと思う人。」
パチパチパチパチパチパチパチ…
「!!…久美子。」
麗奈に投票したのはわたしだけだ。
それもそのはずだろう。
今日の演奏は、麗奈の本来の実力からかけ離れていたのだから。
「では、中世古さん、貴方にソロをお願いします。いいですね?」
「…はい。」
やった…やったやったやったやったやったやったやった!!!!!!!
香織先輩がソロだ…香織先輩がソロを吹くんだ…やっと、やっと。
香織先輩の夢が叶った。
「よかったじゃん。優子。」
「…ったりまえじゃない!香織先輩すごいんだからね!」
「でも今日の高坂…いつもより調子悪かったよね。」
「緊張なんじゃな〜い?本番でボロボロになられちゃ困るしね。」
「…そ。」
「…あっ!香織先輩ーーーーー!!!!!」
おめでとうって伝えなくちゃ!
嬉しいって言わなくちゃ!
香織先輩がソロになってくれてよかったって、大好きって!!
「先輩!ソロおめでとうございまーーーー」
「…ごめんね。優子ちゃん。」
「え?」
「少し話したい人がいて。嬉しいけど、後にしてくれるかな?」
思った反応と違った。
香織先輩は今頃満面の笑みで喜んでいると思ったのに。
話したい人って誰?まさか高坂?
いや、先輩達?あすか先輩?一体誰?
「えっと…誰に」
「ごめんね。すぐ戻るから。」
「えちょ…先輩!」
「ありがとう。」
そう言い残して、香織先輩はそそくさと外に出て行ってしまった。
もうちょっとくらい、先輩と話したかったんだけどな〜…
まあ、また今度盛大にお祝いしよう。
よかった…ほんとによかった!!
「はぁはぁはぁ… 」
麗奈…麗奈どこにいるの…
「!!…麗奈!」
「あっ…久美子。」
「れっ…麗奈…もぉ〜やっと見つけたぁ〜…」
「何よそんなに走って。」
「何よってそんなの…」
オーディションのことに決まってる。
あんなの麗奈の演奏じゃなかった。麗奈はもっと上手いはずだった。正直さっきのは、香織先輩のがよかった。
…どう伝えればいいんだろう。
変なこと言って余計に落ち込ませたくない…いやだがしかし…
「その…麗奈さ、あのー…あの」
「なに?はやく言ってくれないとこっちもムカつくんだけど。」
「あぁ〜…あの、さっきの演奏さ!」
「よかったよ!!いやぁ、惜しかったね。 来年は絶対麗奈がーーーー」
「うそつき。」
「…へ?」
「本当は上手いなんて思ってないでしょ。」
「え!?思ってるよ!」
「私、そういうの一番嫌いなんだけど。」
「…ごめん。いや、なんだか今日の演奏は…」
「…だよね。私もそう思ってたの。
いつもより上手く音が出せなくて、ピッチが合わなくて、それが最後までずっと続いた。」
「ねえ久美子、正直言って香織先輩の方が上手かったでしょ?なんで私に投票したの。」
「それはだって、麗奈と約束したもん!」
「…上手いと思った方に投票するのよ。そういうの。」
「でも麗奈が殺すって…」
「…は?なにそれ。私に殺されると思って投票したわけ?ばかばかしい。」
「いやっそれは半分嘘だけど!」
「…麗奈、絶対なんかおかしいよ。
麗奈は本番で緊張して吹けなくなったり、先輩相手に遠慮したりしない。私がよくわかってる。だからーーーーー」
「わかってる! …私が一番わかってる、そんなこと。」
「ごめん。」
「いいの。久美子は悪くない。
私はトランペット奏者として、まだまだ未熟だったってこと。それがわかっただけ。」
「そんなことないよ!麗奈の演奏、いつもすっごく綺麗で完璧で!」
「久美子。」
「そういうのはいい。
私、自力で今の倍は上手くなるから。
今日のことはもうしょうがない。見ててよね。」
「麗奈は…強いんだね。でもちょっと強がってるかも。 」
「はぁ?強がってる?」
「えっうそ声に出てた!?」
「全く…しっかりしてよね。私、もう行くから。」
「…うん。」
「次の部活、頑張ろうねーーーー…!!!」
なんとなく寂しい気がして、声をかけてみた。
麗奈は振り向くこともしなかったけど…
麗奈はほんとに、強くてすごい子だ。
…励ましなんていらない。
久美子は心配しすぎ。私は今まで一人で駆け上がってきたんだから。
「麗奈ちゃん!」
「…中世古先輩?」
「ソロ、おめでとうございます。」
「…うん。ありがとう。」
「ところで、どうかしましたか?」
「私のマッピ突然消えちゃって…間違ってはいってないかなって。」
「…確認します?」
「ごめん、させてもらっていい?」
マッピ失くすって…先輩って案外適当?
私のところに入ってるわけないと思うけど…
「…」
「先輩?ありました?」
「…」
「先輩!どうかしましたか? 」
「あっごめんね。開けさせてもらっちゃって。 」
「全然いいですけど…」
「私のポケットに入ってたみたい。ごめんね、引き止めちゃって。」
「いえ。」
「それじゃあ、また部活で。」
なんだったんだろう…
ポケットに入ってたら、気づくでしょ普通。
まあ、なんでもいいか。 先輩も疲れてるんだよね。
私も早く家に帰ろう…