大森side
「ん……」
目が覚めたら知ら……なくはない天井が視界に入った。
藤澤「元貴??!」
声のする方へ顔を傾けるとそこには、少し目を赤くした涼ちゃんが居た
大森「りょ、ちゃ」
藤澤「よ、よかっ、目、覚め、」
とぎれとぎれながらの言葉とともに涼ちゃんの目から溢れる涙
大森「なか、ない、で」
藤澤「ごめ、元貴が、全然目っ覚めないからつい嬉しくて……あ!僕お医者さん呼んでくるっ…………、いったぁ!!」
慌ただしく病室を出ようとして引き戸を押しておでこをぶつける涼ちゃん。
いつもみたいに大笑いは出来ないけど、いつもの涼ちゃんだと思うと自然と笑みがこぼれた。
医師「……問題は……特になさそうですね。ただ、大森さん、サブドロップは一歩間違えれば死ぬ事もあります。なかなかご自身で防ぐのは難しい事かもしれませんが、その場でやれる事はやりましょう。その場での感情で死ぬなんて悔やんでも悔やみきれないですよ」
涼ちゃんがどうしてこうなったかは先生に話してくれたのだろう。
大森「……はい……」
医師「もしあなたが亡くなれば沢山の人が悲しむ事になります。今のあなたにこんな事を言うのは酷かもしれませんが、あなたの歌で何千何万という人があなたに救われてる人がいます。死なれては困るんですよね」
藤澤「ちょ、先生っ」
大森「涼ちゃん大丈夫、先生続けてください」
医師「私も……あなたに救われたひとりですからね」
大森「え、先生、も?」
医師「はい。直接大森さんに何かされた訳ではなく、あなたが歌う曲の歌詞に私も救われたんです。正直、医師だからといっても所詮は人間。ロボットではないので辛い時だってあります。そんな時にふと流れてきた曲が貴方たちの曲で、ああ、僕も休んでいいんだって客観的に思えたんです。あの時はありがとうございました」
大森「あ、いえ、こちらこそありがとうございま、す?」
医師「だからって訳ではありませんが、今度は僕が大森さんを救ってあげたいとずっと思っていました。あ、救われてなかったら救わないって意味ではありませんよ、僕は医師なんで」
大森「んふ、わかってます」
医師「少しでもあなたが楽になれば、生きやすくなればと思いで診てきました。なので多少の我儘も聞き入れていたと思います。」
大森「……はい」
多分、言葉には出さないでいるけど抑制剤の事だろう。涼ちゃんが居るから先生は濁す言い方をしてくれた
医師「でも今回の事で大森さんを甘やかすのはダメなんだとわかりました。厳しい指導がいるのだと」
大森「え」
医師「なので当分は週に一回は受診しに来てくださいね。嫌だ無理だと言っても無駄ですよ。既にマネージャーさん達にはお話して時間調整等はしていただいてますから。」
大森「ゔ……」
医師「それに、そちらの藤澤さん、もう一人の若井さんの方にも通院のお話させていただいてますので逃げるのはほぼ不可能と思ってください」
涼ちゃんの方を見るとグッと親指を立てて笑っている……
どうやら先生の言っている事は本当の事で、なにより先生の用意周到さにびっくりする……
てか、若井にも話がされてる……って事は若井もここに居るって事……?
少し入口の方へ目線をやると先生が俺の行動を読み取って
医師「若井さんには僕がキツく説教をしたので今頃おひとりで泣きながら反省してるかも知れませんね」
大森「なっ」
医師「ちなみに藤澤さんはきちんと泣かせておきました」
藤澤「そうだよぉ〜、僕めちゃくちゃ先生に怒られて泣いちゃった」
ああ、だから目が覚めた時に
既に目が赤かったのはそう言う事かと納得をする。
なんだ俺を心配してずっと泣いてたと思って罪悪感あったのに……
大森「ふふ、あはははっ、涼ちゃん怒られて泣くとかどんだけっ、んふ、」
藤澤「だってっ!先生めちゃくちゃ怖かったんだから!」
大森「年上が年下に泣かされるとか」
藤澤「え、先生僕より年下?!」
医師「あ、はい。僕、大森さんの一個上なので」
藤澤「えぇー!こんなに落ち着いてて年下なの!!」
大森「俺も最初に一歳しか違わないって知った時びっくりしたもん」
藤澤「……先生、人生何周目ですか?」
医師「僕の知る限りでは一周目ですが、よく言われますね、年齢詐称してるんじゃないかとか」
藤澤「ほんとそれだ〜!」
大森「涼ちゃんに関しては年齢より幼すぎなんだよ」
藤澤「何それひどーい!」
医師「さて、お話がズレましたが大森さん元気そうですし、何より笑ってるので良かったです。念の為、今日は一泊して明日には退院していただいて大丈夫です」
大森「ご迷惑おかけしてすみませんでした」
藤澤「すみませんでした」
大森「……なんで涼ちゃんまで謝ってんの?」
藤澤「え、流れ的な?」
医師「ふふ」
大森「あ、先生が笑った」
医師「僕も人間ですから笑いますよ。大森さんの周りには良い人が沢山居ますね。それではまた、明日帰られる前に来ますね」
大森「ありがとうございました」
俺もめちゃくちゃ怒られると思っていたのに先生の以外な話を聞けて少し気持ちがラクになった。
「私もあなたに救われたひとりです」
いつも俺の我儘を淡々と聞いてくれていた先生にあんな風に言われるとは思っていなくて、自然と笑みがこぼれた。
コメント
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目覚めてよかったぁぁぁ……そ、し、て藤澤さんとお医者様のコンビ?カプが非常に好みなのですが……… 若井さん×大森さん、お医者様×藤澤さん、見守り役としてくーちゃん×私 これでデート行きましょう