テラーノベル
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いえいいえい✌
なんでもいいからコメント欲しいw
寂しがりやなもんでw
それではどぞ
最終話
文化祭が終わった。
最後の片付けまで指揮を執った会長は、あの体育館裏のあとも結局仮面をつけずにいた。
俺はそれを黙って見ていた。
まろは誰にも写真を撮らせなかった。
俺が全部止めた。
他の役員も気を利かせて、「会長が顔を出してるのは公認」みたいな空気を作ってくれた。
だから、大事にはならなかった。
でも、まろは人一倍神経を使っただろう。
打ち上げも途中で抜けた。
生徒会室で最後の集計をして、そのまま帰った。
月曜日。
文化祭後の代休明け。
まろはまた仮面をつけてきた。
黒い、無表情なやつ。
見慣れたはずの仮面が、なんだか少しだけ寂しく見えた。
生徒会室は静かだった。
祭りの後みたいな空気。
他の役員は全員まだ来ていない。
俺と、まろ。
「おはよう。」
「……おう。」
まろの声はいつも通りだった。
でも、なんとなく硬い。
俺は机に腰を下ろして、まろを見つめた。
資料を整理する手は落ち着いているけど、時々微かに止まる。
何かを迷ってるみたいだった。
沈黙が長引いた。
それが嫌で、俺はわざと軽い声を出した。
「会長、文化祭のアンケートまとめるの、今日でいい?」
「ええよ。」
「みんなの感想も一緒に載せる?」
「……それも頼む。」
短いやりとり。
でも、まろはいつもより俺を見なかった。
仮面の奥の目線が、資料に縫い付けられてるみたいだった。
俺はゆっくりと息を吐いた。
「……会長。」
「なんや。」
「また仮面、つけたんだな。」
まろの手が止まった。
沈黙。
雨でも降りそうなくらい、空気が冷たくなった。
「……お前には関係ない。」
「あるよ。」
「……」
「俺、副会長だし。」
「仕事やろ、それは。」
「友達だし。」
まろは顔を上げた。
仮面越しの目が、鋭く光った。
「……何が言いたい。」
「昨日まで、外してたのにな。」
まろは何も言わなかった。
その沈黙が痛かった。
「……疲れたんか。」
「……」
「もう、注目されるの嫌なんか。」
「……せや。」
絞り出すような声だった。
「目立つん、嫌や。もう、誰かに見られるん、しんどい。」
「でも、お前、会長だろ。」
「会長やけど、人間や。」
まろの声が震えた。
机に置いた手が強く握られていた。
「……怖いんや。」
その言葉に、俺の胸が詰まった。
あの体育館裏で泣きそうになってた顔を思い出した。
完璧すぎる顔が歪んで、泣くのを堪えていた姿を。
俺は机を回り込んだ。
まろの隣に立つ。
仮面を被った横顔を見下ろす。
「会長。」
「なんや。」
「もう、隠さんでいいじゃん。」
「……」
「お前の顔、知ってるやつはもう知ってる。みんな、分かってる。」
「……」
「すげーイケメンだけど、頑張り屋で、完璧主義で、でも優しい奴だって。」
まろは俯いた。
仮面が下を向く。
俺は手を伸ばした。
その黒い仮面を、そっと撫でた。
まろの肩が震えた。
「外していいよ。」
「……嫌や。」
「なんで。」
「お前に見られるんが、恥ずかしい。」
その言葉に、思わず笑った。
声を殺して、でも止められなかった。
「何がおかしいねん。」
「恥ずかしがる顔も、イケメンだろ。」
「……アホか。」
「うん、アホだよ。」
俺はもう一度、仮面に触れた。
まろは拒まなかった。
震えたまま、でも抵抗はしなかった。
「俺だけに見せろ。」
「……」
「他の奴らに見せんでいい。俺だけに見せろ。」
まろは小さく息を呑んだ。
沈黙。
そして、ゆっくりと手を伸ばした。
自分で、仮面を外した。
黒い仮面が机の上に置かれた。
そこにいたのは、完璧すぎる顔だった。
でも、目が赤くて、泣きそうで、恥ずかしそうで。
誰よりも「人間」だった。
「……見んなや。」
「見る。」
「……なんで。」
「好きだからだよ。」
まろは俯いた。
耳まで赤くなってた。
「アホ。」
「そうだよ。」
そっと抱きしめた。
まろは少し抵抗したけど、すぐに力を抜いた。
服をぎゅっと掴んだ。
涙がポタポタ落ちた。
俺の胸に染みた。
放課後、生徒会室には誰もいなかった。
他の役員は気を利かせて帰ったのだろう。
夕日が差し込む中、二人きりだった。
まろは仮面を外したまま、隣に座っていた。
「俺、こんな顔やねん。」
「知ってる。」
「……イケメンすぎるって言うな。」
「言わない。」
「……でも、どうせ思ってるやろ。」
「思ってる。」
「……アホ。」
「大好きだ。」
まろは小さく笑った。
泣き笑いだった。
「副会長。」
「ん?」
「お前、おらんかったら俺、潰れてたわ。」
その言葉が胸に刺さった。
痛いくらい、嬉しかった。
「じゃあ、これからも潰させねえよ。」
「頼むわ。」
日が沈むまで、ずっと話をした。
文化祭のこと、生徒会のこと、将来のこと。
まろは時々泣きそうになりながら、でもずっと仮面を外していた。
誰にも見せなかった顔を、俺にだけ見せてくれた。
この顔を守ろうと思った。
何があっても。
何を失っても。
帰り道、まろが呟いた。
「これからも仮面つけるかもしれん。」
「いいよ。」
「でも、お前の前では外す。」
「……約束な。」
「約束や。」
街灯が灯る頃、二人並んで歩いた。
風が冷たくて、星が滲んだ。
でも、心は熱かった。
まろが少しだけ笑った。
その顔は誰よりも綺麗で、でも一番「人間」だった。
コメント
2件
ギャップもえええええ! 青ちゃん絶対かわいい...(((