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#オリキャラ
須古星 れい
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第1話 桜色の始まり
春の風が、白石家の家の中を静かに吹き抜けていく。
淡い桃色の桜の木が咲き誇り
風に揺れる度花びらがヒラヒラと舞い落ちる
「楓ー!そろそろ準備できたかー?」
ドアの向こうから聞こえてきたのは兄の声
「できてるよー!」
私は鏡の前で襟元を再度確認し、整えた。
今日から高校生。
新しい制服に袖を通すのは、何度経験しても緊張するような気がする。
紺色のブレザーに、白いTシャツ、チェックのワンピースに、赤いリボン。
長い黒髪を軽く梳かし、前髪を整える。
「……よし」
鏡の前で小さく頷いた。
高校生活、どんな毎日になるんだろう。
新しい友達はできるのか。
勉強にはついていけるのか。
楽しい思い出は作れるのか。
考え始めると、期待と不安が一緒になって膨らんでいく。
「楓ー!楓斗くん来てるぞー!」
「えっ!」
その声に、思わず鞄を持つ手が止まった。
楓斗。(かいと)
その名前を聞いただけで、少しだけ心臓が跳ねる。
慌てて部屋を出て、階段を降りる。
玄関には見慣れない制服姿の楓斗が立っていた
「おはよう、楓」
「おはよう…楓斗」
桐生 楓斗。 (きりゅう かいと)
私の家の隣に住んでいて、生まれた時からずっと一緒の幼なじみ。
黒い髪に、少し紫がかった瞳。
背が高くて、整った顔立ち。
そしていつも、穏やかに笑ってる。
昔から変わらない笑顔。
なのに何故だろう。
その笑顔を見るだけで、胸がぎゅっとなるようになったのは。
「どうした?顔赤いけど」
「なッ…なんでもないよ?」
「ふーん?」
楓斗は少し首を傾げると、私の頭に手を伸ばした。
「制服似合ってんじゃん、リボン曲がってるけどね」
「えっ!ほんと?」
「うん、じっとしてて」
指先が胸に触れ、リボンの形を整えていく。
近い。
いつも通りの距離感なのに、何故か今日は近く感じる。
「はい、できた 」
「ありがとう…」
「どういたしまして」
何でもないことのように笑う楓斗。
きっと、楓斗にとっては本当に何でもないことなんだろう。
私だけがこんなことで意識している。
それが少し悔しくて、少しだけ悲しい。
「おーい、お二人さんそろそろ家でないと遅刻だよー?」
玄関の奥から兄が顔をだした
「楓、入学おめでとう。帰りにケーキ買ってきてやるからな。」
「ほんとに?!ありがとうお兄ちゃん! 」
「おう。楓斗もまた食べに来いよ?」
「ありがとうございます。楽しみにしときますね」
「遠慮すんなって、昔から来てるんだから」
兄は満足気に笑った。
楓斗も慣れた表情で頷く
…本当に白石家の一員みたいに。
そんなことを考えながら、私は玄関を出た。
桜並木の続く通学路。
隣を歩く楓斗は、いつもと変わらない様子だった
「楓、クラス表見た?」
「まだ!学校着いてから見ようかなって」
「そっか、俺もまだ」
「同じクラスだといいね」
言って後悔した。
同じクラスがいい。それは私の本音。
楓斗と同じクラスになれたら、毎日楓斗を見れる。休み時間に話せるし、一緒に帰れるかもしれない
でも、そんなこと言ったら私がずっと一緒にいたいって言ってるようなものじゃないか。
「そうだな、同じクラスだと助かる」
「…え?」
「そのほうが楓を見てられる」
「なっ…!」
思わず足が止まる。
楓斗は何事も無かったかのように振り返る
「どうした?」
「い、今のどういう意味?!」
「そのままだけど?」
「もう!」
楓斗は楽しそうに笑った。
楓斗はずるい。本当にずるい。
私がどれだけ楓斗を好きかなんて、知らないくせに。
学校に到着すると、昇降口の前には新入生達が集まっていた。
「あ、楓ー!」
聞きなれた明るい声がした。
振り返ると、ポニーテールの女の子がこちらに手を振っている。
「あ、遥香!」
一ノ瀬 遥香。
小学校からずっと一緒の私の大切な親友。
明るくて、話しやすくて、誰よりも理解してくれる。
中学も同じで、まさか同じ高校に入学できると思ってもいなかった。
「おーはよ!制服似合ってんね」
「ありがとう、遥香もかわいいよ」
「えへへ、そうでしょ?」
私と違い遥香は自分の可愛さを活かして喋っている。本当に可愛い子だ。
「はー!本当に!楓と同じ高校でよかった!
高校でもよろしくね?」
「もちろん!」
そんな私たちの会話を楓斗が聞いている。
「遥香、おはよう、俺もいるぞ」
「あぁ、楓斗、おはよ」
遥香と楓斗も学校が同じだったので、知り合いではあるが…
何故か遥香は、楓斗を敵対視している。
何度も二人を混ぜて遊んだことはあるし、白石家に来るのも珍しくはない。
「楓と同じクラスがいいよぉ〜」
「そうだね」
私は掲示板に近づき、自分の名前を探す。
「あった!」
私は自分の名前の書かれたクラスを確認する。
ー 一年三組 ー
「三組だって!遥香は?」
「えっと…あ、私も三組ー!!」
「ほんと?」
「やったー!!高校生活最初は楓と同じクラスー!」
「ほんとだねー!」
遥香と顔を合わせて喜んだ。
「楓斗は?」
「俺も三組」
「…ほんと!?」
楓斗も同じクラスだった。
嬉しくなって思わず顔に出てしまいそう。
するとー
「お、楓斗」
少し離れたところから声がした。
振り返ると、黒髪の男の子が片手を上げて近づいてくる。
「お前何組?三組か?」
「おう、三組」
「よっしゃ、よろしくな」
柳 颯汰くんー
楓斗と幼稚園の頃から友達。
私と関わりはないけど、仲のいいことは知っていた。
「俺は柳颯汰、よろしくな」
「私は白石楓、よろしくね」
「颯汰は楓と話したことなかったの?」
「うーん、まぁ一対一はなかったな」
「何度か楓斗といる時に顔合わせたりはしてたけど。まぁ、よろしくな!」
颯汰君は気さくに笑った。
これで、3人は確実に話せる人がクラスにいる
「なんかすごい偶然だね」
遥香が嬉しそうに言う
「そうだな」
颯汰くんが頷く。
楓斗は私の隣で、静かに笑っていた。
こうして私の高校生活は始まった。
教室に入ると、すでに何人か生徒の人が席に座っていた。
窓際の席からは、校庭の桜がよく見える。
「楓、席どこ?」
「えっとー……あ、ここらしい!」
私の席は窓際の前から二列目ー
普通は番号順なのだろうが、どうしてかそう言うわけではないらしい。
その隣にはー
「あ、俺ここだ」
そういって、楓斗は鞄を机の上に置く。
「………え、ほんとに?」
「隣だな、何があっても守れってことなのか」
嘘。
そんなことある?
もう既にクラスが同じってだけで嬉しいのに。
まさか、隣の席のだなんて。
「よろしくな」
「よろしく、」
楓斗が椅子に座る。
そしてこちらをみて微笑んだ。
「高校でもよろしくな」
「…うん!」
これから始まる三年間。
きっと楽しいことばかりじゃない。
悩むことも、泣きたくなることもあると思う。
それでも、すぐそばには楓斗がいる。
それに、少し離れた席には遥香も颯汰君もいる
それだけで心強かった。
私はまだ知らない。
この春から始まる毎日が、私の想像をはるかに超えるほど大切な思い出になるなんて。
コメント
1件
第1話、読み終わりました。スタートから甘酸っぱい空気がたっぷりで、楓ちゃんの「意識しすぎてしまう自分」にすごく共感しました。リボンを直すときに近づく距離感、あそこは胸がきゅっとなりましたね。同じクラス、しかも隣の席という運の良さに思わずにっこり。幼なじみの距離感と「楓斗はずるい」という心の声がとても可愛くて、この先どう転んでいくのか楽しみです。高校三年間という長い物語、じっくり読ませていただきますね。