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昼休み。私は今日こそ包囲網から脱出すべく、授業終了のチャイムと同時に教室を飛び出した。
「お姉様待ってくださいー!」
「バイオレッタ?」
背後から聞こえる声を無視し、私は廊下を全力疾走する。
(よし……! 今日こそ撒いたわ!)
私は誰もいない、屋外非常階段へ続く扉を開けた。
ギィッ、と扉が軋む。
「はぁ、はぁ……」
私は階段へ座り込む。ポケットから購買のサンドイッチを取り出し、フレッドから届いた「ホテル及びレストランの収支報告書」を膝に広げた。
(やっぱり一人ランチは最高ね……)
(静かだし、仕事も捗るし……)
青空を吹き抜ける風が心地いい。私はようやく肩の力を抜いた。
――その時。
「バイオレッタ、こんなところにいたんだね」
「なっ……!?」
顔を上げると、そこには当然のような顔をしたレオンが立っていた。
「なんでここに!? 私、本気でダッシュしたのよ!?」
「君の行動パターンくらい把握済みだよ」
レオンは爽やかに微笑み、パチン、と指を鳴らした。
次の瞬間、虚空から豪華な三段重ねの重箱が現れる。王室シェフ特製ランチボックスだ。
「僕の隣で食べない? 君の好きなハーブチキンも入ってるよ」
(なんで私の好きなメニューまで把握してるのよ……!)
すると――
バァン!!
「お姉様の隣は、永遠に私の特等席ですっ!!」
非常階段の扉が勢いよく開き、フローラが飛び込んでくる。
「お邪魔虫はあちらへ行ってください!」
「邪魔って酷いなぁ」
「事実ですっ!」
フローラはぷんすか怒りながら、ぎゅっと私の腕へ抱きついた。
「お姉様、一緒に食べましょう♡ 私、手作りクッキーを焼いてきたんです!」
ピンク色の包みを差し出してくる。
(天使……)
癒されかけた、その直後。
ドゴォォォォンッ!!!!
扉が蹴り開けられた。
重苦しい殺気と共に、アレクが姿を現す。
「バイオレッタ、無事か?」
「私は大丈夫よ!? ちょっと、扉のほうが無事じゃないでしょ!!」
扉の中央が見事にへこんでいる。
アレクは気にした様子もなく、レオンを睨んだ。
「……レオン。その不審な箱を今すぐ片付けろ」
「不審じゃないよ。僕の愛が詰まった特製ランチだよ?」
「お姉様に変なものを食べさせないでください!」
左右から迫ってくる二人。するとアレクが、当然のような顔で口を開いた。
「お前専属の料理人を手配した」
「……は?」
非常階段の扉が、そっと開く。
「し、失礼いたします……」
怯えた顔の料理人が、皿を載せたワゴンを押して現れた。
湯気の立つスープ。焼きたての肉料理。彩り鮮やかなサラダ。
どう見てもお弁当の規模じゃない。
「昼は栄養補給が重要だ」
アレクは真顔だった。
(この人、自分が何言ってるかわかってるのかしら……)
左には重箱を持ったレオン。右にはクッキーを掲げたフローラ。正面には料理人を従えたアレク。
――完全包囲である。私は遠い目で空を見上げた。
ちなみに。サンドイッチは、結局一口も食べられなかった。