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「来月、魔法学院では恒例の『文化祭』を行う」
担任教師のその一言で、教室が一気にざわついた。
「うおぉぉ! 文化祭だ!」
「優勝狙おうぜ!」
「カフェやりたい!」
盛り上がるクラスメイトたちを横目に、私は頬杖をついて遠い目をする。
(文化祭……。原作にはなかったイベントね)
(私が破滅フラグをへし折ったせいで、原作そのものが変わったのかしら……)
そんな私の思考を遮るように、教師が黒板をバンッと叩いた。
「静かにしろ。まずは文化祭の『実行委員』を一人決める!」
――その瞬間。
教室が、しん……と静まり返った。
全員が露骨に目を逸らす。
(あ、これ完全に“面倒事を押し付ける空気”だわ)
すると男子生徒の一人が、軽いノリで口を開いた。
「アレクとかどうだ? 魔獣狩猟大会で黒龍の幼体を素手で捕まえたんだろ?最強じゃん」
教室中の視線が、一斉にアレクへ向く。
だが当の本人は、眉一つ動かさなかった。
「断る」
即答だった。
「俺の最優先事項は、バイオレッタと過ごす時間だ」
クラス中が凍りついた。
(断り方が重すぎるのよ!!)
私は机に突っ伏したくなった。
「じゃ、じゃあレオン殿下は……?」
女子生徒が恐る恐る尋ねる。
するとレオンは、キラキラした“王子スマイル”を浮かべた。
「あはは、光栄だね。でも僕、事務作業はちょっと苦手で」
絶対嘘である。
「君たちの美しさを愛でる仕事なら、喜んで引き受けるんだけど?」
「きゃあああ♡」
女子たちが黄色い悲鳴を上げた。
(超有能王子のくせに!!)
領地の決算書を数秒で読み解いていた男が何を言っているのか。
「じゃあフローラは?」
「えっ!? わ、私ですか!?……お姉様のお手伝いなら世界一頑張れますが、一人ではとても……っ」
もじもじと頬を赤くする。
(可愛い)
(でも結局、誰もやる気ないじゃないのよ)
教室に微妙な沈黙が落ちる。
その時だった。
後方の席から、ぽつりと声が上がる。
「……バイオレッタじゃね?」
「え?」
私は顔を上げた。
「夏休み、領地でホテルとレストランを立て直したって噂だぞ」
「経営とか得意なんだろ?」
「段取りめちゃくちゃ上手そう」
「王家ともパイプがあるし、適任じゃん」
(ちょっと待って)
(それとこれとは話が別でしょう!?)
すると、王妃派の令嬢の一人が、扇子で口元を隠しながら優雅に微笑んだ。
「ええ。平民のような『労働』がお得意なバイオレッタ様には、ぴったりですわねえ?」
(完全に嫌味ね)
(失敗したら笑い者にする気満々なんでしょう?性格悪っ!!)
教師が咳払いした。
「よし、公平を期すため投票で決める!」
紙が配られ、生徒たちが次々と名前を書いていく。
そして数分後。教師は集計結果を見るなり、苦笑した。
「……圧倒的だな」
嫌な予感しかしない。
教師が私を指差す。
「文化祭実行委員は、バイオレッタ! お前に決定だ!」
「……は?」
教室中から拍手が起こるが、全然嬉しくない。
「先生、私、魔力ゼロなんですが?」
私は思わず立ち上がった。
「魔力を使う行事の運営なんて無理なのでは?」
だが教師は豪快に笑った。
「ハッハッハ! 運営に必要なのは魔力ではない!」
ビシッ、と私を指差す。
「“管理能力”だ!」
(現世でも転生先でも社畜になれっていうの!?)
私は頭を抱えた。