テラーノベル
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休暇を合わせた二人が並んで歩く姿は、街中の視線を独占しました。 しかし、漂う空気は「仲の良い姉弟」というよりは、「お互いを標本として観察し合っている冷戦状態」。
「……冴、その服。色彩設計が論理的じゃないわ」 「黙れ。機能性だ」
二人は、お互いの連絡先を不機嫌そうに交換し、その日は別れました。 しばらく連絡が途切れることになりますが⋯
U-20日本代表戦を控え、殺気立った空気の中で凛は一人、トレーニングマシンと対峙していました。 「……壊す。冴も、あいつも、全部……」 ドロドロとした執念をガソリンにして動く凛のスマホに、一通の通知が届きます。送り主は、この数年まともに言葉も交わしていない実の兄、糸師冴。
「……死ね。今さら何の用だ……」
吐き捨てながら画面を開いた凛の動きが、凍りつきました。
そこには、表参道の洗練された街並みを背景に、**「自分と同じ顔が二つ」**並んで歩く写真が。 一人は、憎き兄・冴。 そしてもう一人は、自分たち兄弟のベースとなったような、美しくも冷徹な翡翠の瞳を持つ女性——数年前にフランスへ消えたきりの姉、宮奈でした。
「……は?」
凛の脳内に、封印していた「あの頃」の記憶が濁流のように流れ込みます。 勉強の邪魔だと冷たくあしらわれながらも、どこかで見守られていた記憶。玄関で冴とベタベタしては、「……引くわ」とゴミを見るような目で見られた屈辱。そして何より、自分たちを「論理的じゃない」と切り捨てた姉の絶対的なオーラ。
「……なんで、こいつが……クソ兄貴と一緒に……」
凛の呼吸が乱れます。 冴に対しては「潰す」という明確な目標がありますが、宮奈に対しては、幼少期に植え付けられた**「この人には絶対に勝てない(論理的に論破される)」**という根源的な恐怖と、唯一の姉という執着が混ざり合っています。
しかも、写真の二人はどこか「完成された個」として共鳴しているように見え、自分だけが置いていかれたような疎外感が凛を襲いました。
【凛の思考回路】
姉貴が帰ってきてる?
なんで俺には連絡がない?
さっきから既読がつかない。
ていうか、冴の奴、なんであんなに自然に隣を歩いてるんだ。
……死ね。二人とも死ね。
「……おい、凛? 大丈夫か? 顔色が死体みたいだぞ」
心配して声をかけた潔が見たのは、スマホを握りしめたまま、全身から黒いオーラを噴出させている凛の姿でした。
「……黙れ。……ぶち殺す。あの女も、あのクソ兄貴も、まとめて俺が……」
「え、誰!? 凛ちゃん、もしかして彼女に振られた!?」 興味津々で覗き込もうとした蜂楽の手を、凛が猛烈な勢いで払いのけます。
「……触るな。……これは、俺の家庭の問題だ」
その夜、凛は一睡もできませんでした。 「……もしブルーロックに姉貴が来たら……いや、来るわけない。あの人は、サッカーなんて『玉蹴り遊び』だと思ってる……」
しかし、凛の予想は裏切られます。 宮奈はすでに、エゴイストたちの巣窟であるブルーロックを「新作の舞台(監獄)」として、構造チェックの対象に選んでいたのですから。
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