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あまえんぼ
ソファで休憩中。仕事は一段落。
「……さと、ちゃん……」
小さな声に振り返ると、パジャマ姿の莉犬がタオルをひきずって立っていた。
目はとろんとしてて、髪もぼさぼさ。完全に甘えモード。
「どした? 眠いのか?」
こくりともふらず、ただ俺の近くに来て、ぺたんと座り込む。
俺の手元をじーっと見つめたあと、小さな手でそっと俺の手をつかんでくる。
「……さとちゃんのて、おっきーね……」
そう言って、莉犬は俺の指を一本ずつつまんだり、にぎにぎしたり。
「ぐー、ちょき、ぱー……」
「これ、さとちゃんの、ぐー。これ、ぱー……ちょきは……できない、ふふ」
「じゃあ、俺がちょき。ほら、これ」
「わぁ……ちょき、ながい……へへ……」
手で遊んでるうちに、莉犬の声はどんどんやわらかくなっていく。
くすぐったそうに笑いながら、俺の指先をほっぺにあてて、にこにこ。
「……さとちゃんのて、すきなの…」
「甘えんぼだね」
莉犬をそっと自分のひざにのせて、背中をぽんぽん。
莉犬は手を握ったまま、俺の胸に顔をうずめて、気持ちよさそうに深く息を吐いた。
俺が指先で優しく髪をなでると、
「……さとちゃん……なでなで、すき……すき……」
その声はだんだんと小さく、ふわっとまどろみに変わっていく。
やがて、莉犬のまぶたが完全に閉じられ、胸がゆっくり上下する。
「おやすみ、甘えんぼ」
俺はその小さな背中を、静かにぽんぽんし続けていた。