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お話しすぎたね。
朝はずっとテンションが高かった莉犬。いっぱいしゃべって、はしゃいで、笑って、
元気いっぱいで「きょうはげんき〜♪」なんて歌ってたのに。
午後になって突然、静かになった。
俺がふとリビングをのぞくと、
莉犬は毛布を頭までかぶって、ソファのすみにうずくまっていた。
「莉犬〜?」
声をかけると、かすかに毛布の中が動く。
「……うるさいの、や……」
「何うるさかった?」
「……あめの音、パソコンのカチカチ……うるさいの、ぜんぶ、や……」
耳を両手でぎゅっとふさいで、顔をしかめている。
肩をすぼめて、ぴくぴく震えて――泣き出す寸前だった。
俺は少し離れたところに座って、様子を見ることにした。
「……さとちゃ、おてて、」
莉犬がそっと手を伸ばしてきた。
俺の手をぎゅっとにぎって、すりすりと指をなぞるように触ってくる。
「……これ、しずか。おと、しない。……あったかい」
「よかった。莉犬、今日はお話沢山して疲れちゃったかな」
莉犬は小さくうなずいて、俺の指をつまんでみたり、
「ぐー、ちょき、ぱー……」って、ゆっくり小さい声で言いながら指を開いたり閉じたりして遊びはじめた。
そのまま少しずつ呼吸が落ち着いてきたようだった。
「おひざ、いい、?」
「いいよ〜おいで?」
俺がひざをポン、とたたくと、莉犬はすこしずつ、のそっと上がってきて、俺の足の上にちょこんと座った。
目はうるうるしてるけど、もう震えてはいない。
「なでなで、してもいい?」
莉犬は小さくうなずいた。
俺は背中をそっとなでた。手のひらで、やさしく、ゆっくり。
「……それ、すき……」
莉犬の声が少しとろけたようにやわらかくなる。
「ずっとなでなで、……」
「うん、ずっとなでなでしてるよ」
莉犬のまぶたが少しずつ落ちていって、手の中の力がふわっと抜ける。
「……なでなで……きもちいい……」
そのまま、莉犬は俺の胸にもたれて、小さく寝息をたてはじめた。
俺はその小さな背中を、なでる手を止めずに、そっと見守り続けた。