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『甲斐くんとのデートはどうだった?』


里子に連絡しなくちゃと思っていたら向こうから電話がかかってきた。


「いや、デートじゃないし」


『異性が待ち合わせをして食事をすると言うのをデートと言うんです。』


「何それ強引すぎ。凌太とは単なる友人?というか知人。でも、正人の時に助けてもらった事は事実だから」


『てか、下心が無いと助けたりしないでしょ』


「下心って、単に昔のことを気にしてるんじゃない?」


『はいはい、今はそういう事にしておくから。じゃあねおやすみ』


プープープーという通話を切られた音がしてスマホをベッドに放った。


言いたいことだけ言ってさっさと会話を終わらせるとか。


デートじゃない。


私たちはもう



昔の



二人じゃない







本能とは凄い。

里子と話をしていたときはベッドの上に寝転がりながら話をしていたが、朝に気がついてみるとしっかりとベッドの中に入って眠っていた。


お母さんが作った朝食を食べる。

実家に戻ってすっかり自堕落な生活になっている気がする。


「あんたが居たいなら、そのうちまた結婚する時までいていいんだからね」


「そんな日が来る気がしないわ」




里中くんの言葉を思い出して家電量販店にボイスレコーダーを買いに行くと、結構種類があって悩んだ結果、薄くて小型の物を購入した。


これをどうスマートに持ち歩くかが問題だけど。


カーディガン的なものを常に着るようにしてポケットに入れておけば何とかなるだろう。


そして


月曜日、早速出番が来た。



里中くんがまとめておいてくれたRyoの資料を持って念のために昨日購入したボイスレコーダーをポケットに忍ばせた薄手のジャケットを羽織ると会議室に向かった。


会議は何事もなく進みイラストはRyoで決まった。宇座課長は会議中は借りてきた猫の様に大人しい、ハラスメントおせちの様な姿をこの会議中に流してやりたいと思うが他にも似たり寄ったりの人間がいる事も確かで何事もなく通り過ぎてくれればそれでいいという考えに私自身が陥っている。


スルーすれば何事もなく過ぎていくし、私は好きなお菓子の仕事ができて給与が貰える。


一旦、リフレッシュルームに向かいコーヒーを入れようとしていると宇座課長もついてきていた。咄嗟に、ポケットに手を入れるとスライド式のスイッチを入れる。

ノールックでスイッチが入れやすい物を探してさらに昨日は何度かポケットの中で素早くスイッチを入れる練習もしていた。


「おれにも淹れてくれ」


運が悪い事にサーバーの周りには人がいない。


「砂糖とミルクはどうしますか?」

そもそもお茶やコーヒーを淹れさせる事自体が今の時代にそぐわないと思うし、たかだかボタンを押すだけなんだから自分で淹れればいいと思うが、下手に言うと面倒なことになりかねない。

さっさと淹れてしまうほうがいい。


「砂糖はいらんがミルクは淹れてくれ、奥山のミルクでいいぞ」


午前中からシモネタぶっ込んでくるとか、本当に気持ち悪い。

返事をせずにミルク入りボタンを押した。


「ところでこの間の話だが、いつでもいいぞ」


「この間の話?」

心当たりが無くて思わず声を出してしまった。


「空気の読めない新人のせいで話の途中だったろ」

いつも大声でモラハラセクハラ発言をするくせに、さすがにいつもよりも声のトーンは低かった。

ちょうどコーヒーが淹れ終わりカップを取り出すと宇座課長に渡す時「冗談だったんじゃないですか?」と答えるとカップをもつ手をわざと握ってくる。

手を離せばカップが落ちる可能性もある。


「寂しい部下を労るのも上司の役目だからな」

触れている手が気持ち悪い。


声も


顔も


全てが気持ち悪い


何とかこの手を離したいと思っていたらようやく人が入って来ると「ありがとうな」と言ってコーヒーを持って出て行った。


ブラックのボタンを押してから宇座課長の手の感触を消すために触られた手の甲を腰に何度も擦り付けた。

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